エジプトは民主選ぶか独裁か [2013年08月17日(Sat)]
エジプトの混乱は続いている。暫定政府は1カ月間の非常事態を宣言し、都市部では夜間外出禁止令が出されているものの、前大統領モルシ支持派はこれを無視して各地で衝突する。治安部隊はデモの発信地となっている野営地の強制排除に乗り出し武力による攻撃を行い、「目には目を」でモルシ派は抵抗する。両陣営の死者が六百人以上というが、これは控え目な数字であろう。エジプトは内戦状態となった。国連安保理が暴力の停止と自制を求める宣言を出しているが、功を奏していない。
チャーチルの言葉に「民主主義は最悪の政治形態であると言える。これまで試されてきたいかなる政治制度を除けば」という逆説的なものがある。啓蒙家ルソーも「わたしは止むを得ず民主主義を選ぶ」と言っている。独裁者が優秀であればあるほど独裁体制は効率的であり、国は発展する。だが間違いもあるし、権力の魔性に取り入られて狂ってしまうこともある。ヒットラーがそうであるし、独裁が多くの人々に害を為してきた歴史的例はあまりに多い。エジプトの前ムバラク独裁もそうであろう。 ムバラク体制を嫌った民衆は民主主義を選び取り、その代表としてモルシを当選させた。ところが、暮らしは一向に楽にならない。社会的な理不尽さは解消されない、という理由で多くの民衆が不満を露わにして反モルシとなった。結果として軍部に乗じられてクーデターを引き起こしてしまった。 エジプト人民は民主主義に性急な結果を求めたが、それは幻想であった。民主主義とは「最悪な政治形態」とは言わないが、最悪の選択を避けるためには少し時間がかかるけど我慢しようよ、となだめ合わなければならなかったのだ。一気呵成に社会体制を叩きつぶして、革命的に新秩序をつくることは衝突を生み多くの犠牲を出す。それは避けたい。辛抱強い改善が必要なのだ。 |