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決然と嗚咽をこらえ父は行く [2013年01月25日(Fri)]

__tn_20130125173316.jpg山田監督の『東京物語』で「のお、ショウジ。母さん、死んだぞ」と、父役の橋爪功が静かに決然と昌次役の妻夫木聡に言い放ち病室に帰っていった。妻夫木は嗚咽をこらえる。私は胸をつかれた。

小津の東京物語では、父役の笠智衆にも同じセリフがあったと記憶する。テレビで見たときには、母さんが死んだのは皆知っているのに、じいさんショックでボケたか?と思った。笠智衆のテンポはゆるかった。だが今回は胸に込み上げるものがあった。

夜明け前に亡くなった妻。夫は亡骸の側を離れ、屋上へ。そこで見たものはおそらく、漆黒から徐々に色をつけ紫から茜色へと変わっていくグラデーション。曙光がきらめき、辺りを染めていく姿は地球の新生のもの。そこにはもはや妻はいない。が、私は生きていくぞ、という決意があのセリフには込められていた。空しさや諦め、無念さであったかもしれない。いや、すべてを心に納めてあのセリフが観る者の心を揺さぶる。

配役の妙である。妻夫木聡。すでに名優の域に入った彼の名前が絶妙にいい。「妻夫木」とは、妻と夫が支え合って木となり枝を広げて葉を繁らす。やがて花を咲かせ実をならす。それを一言で表している。聡明さでもって表す。

人類が生まれてからこのかた、延々と連綿と続けられてきた家族の営み。生まれて生き延び、病気や怪我に苦しみ死ぬ。その間家族は係累を増やし子々孫々が血を伝える。他部族や民族との争いにあって、血を流し涙に暮れて、また立ち上がって、喜怒哀楽を繰り返す。この映画で描かれたのは、平凡な一家族のエピソードであるが、底流には人類すべてを貫く普遍性がある。だから、小津映画は高く評価されるのだろうと感じた。

(追記/2013.1.26)映画の題名は『東京家族』だった。山田監督が東京家族、小津監督が『東京物語』である。