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鹿撃ちの若さ従軍空しかり [2013年01月14日(Mon)]

__tn_20130114164727.jpg映画『ディア・ハンター』は冒頭から有名なギターのテーマ曲。英国のクラシックギター名手のジョン・ウィリアムズによる美しい曲だ。甘く繊細な曲に、甘い恋愛映画が始まりそうな気配すらした。だが劇中では緊張感がただよった。3時間の上映中ずっと怖くてドキドキしっぱなしだった。

反戦映画『ディア』になぜ緊張が続くのか。銃声や爆発音が多いから、北ベトナム軍の陰惨な捕虜生活が描かれるから、ロシアン・ルーレットのシーンが3回も出てくるから、バカ騒ぎの宴会シーンから急にベトナム戦争の地獄絵に転換するから・・・いろいろあろうが、ロバート・デ・ニーロ(マイケル役)が怖いのである。

「タクシードライバー」でも「ゴッドファ ーザー」でも若いデ・ニーロは、静かな表情から何をしでかすか分からない狂気を演じている。ここでもそうだから、静かににらんだだけでゾクッとする怖さや緊張を醸し出すのである。それが効を奏して鳥の羽音、車のクラクション、病院内で医療器具が床に落ちる音にさえ、ドキリと硬くなり、画面が明るい戸外から暗い室内に換わるだけで私は身構えてしまう始末である。

ディアとはdeer。鹿のことだ。原題もそのまま『The Deer Hunter』ではあるが、日本語題には親愛なる「dear」の意味も含ませているのではないかと私には感じられた。1970年代、凋落するアメリカの物作りが象徴する製鉄工場。そこに勤める気のおけない仲間たち。なかでも鹿撃ちを通して無二の親友であった6人。うち3人が戦争に従軍し、ニックは記憶喪失の上どさくさの中でベトナム戦争終結直前に死んだ。スティーブンは下肢を切断し傷心の姿で帰国した。マイケルは無事には戻ったが、残された仲間たちとともに(特にニックにたいして)贈る鎮魂の言葉が、「親愛なる鹿撃ち」の意に込められているのではないかという勘ぐりである。

たかだか国家の威信のために、将来ある青年たちを戦争で死なす馬鹿馬鹿しさ、仲間同士が離散せざるを得な い空しさが映画全体に漂っている。その虚無感が、私には緊張となって伝わってきたのではないかと感じる。スティーブンの結婚式と3人の従軍壮行会を兼ねた街の大宴会。ダンスを踊る老若男女。社交ダンスではなく、もっぱらフォークダンスとして集団で踊っていた。その掉尾を飾ったのがカチューシャであった。ロシア民謡である。米ソ冷戦の代理として戦われたベトナム戦争を象徴的に皮肉ったような気がしたが、うがち過ぎだろうか。