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麗しの絹の地肌に青き春 [2012年06月24日(Sun)]

__tn_20120624210017_1.jpg島根県立美術館で『麗しき女性の美〜京都市美術館日本画名品展』を鑑賞してきた。さまざまな女性美(醜も含めて)を描いた作家44人の作品。すべてを丹念に眺めたわけではないが、私が気に入ったのが2点あった。

■菊池隆志の『爽夏』
若く端正な青春がある。若菜色に染められた振り袖の地。二枚貝、巻貝、ヒトデなど海のものが図案化されている。膝まである長い黒髪。昼顔を長い茎ごとつかんで花二輪、つぼみ一つが着物に溶けこんだよう。猫背で白すぎる柔肌は不健康に見える。深窓の令嬢は端正な横顔を見せている。鼻筋は通り、目は大きい。形のよい口で現代的な美人なのだが、華奢すぎるお嬢さまだ。表情は硬い。温室育ちの箱入り娘は人前に出つけていなくて不如意さをあらわにしている。裾からのぞく足はハの字に閉じており、歩みは遅々として進まず。他人の手を借りなければ歩けないほど、か弱い。その弱々しさが細い線、直線の美に表現されている。

アンデルセンの「人魚姫」を思い出した。深く恋した王子にあうために声と引き換えに人間の足を得た人魚姫。一歩ごとにえぐられるような痛みを感じても、恋する人を求めて人間界に入っていった人魚姫。痛みをこらえて笑顔を浮かべようとしても思うにまかせない。難破船から王子を救ったことを彼は思い出してくれないことの残念さ。北欧の世界を日本に置き換えて、この娘を描いたかのような妄想がわいてきた。

■広田多津の『裸婦』
はちきれんばかりの青春がある。体が若い、背景の青は青春。小柄の体に、茶色く染めた髪、大きな乳房、太い足首、ウエストは三角にくびれている。重ねた手と腕がつくる三角形によって画面が安定している。下を向いたまだあどけない表情。イスに座っている体の黒い輪郭からはみ出す肌色。油絵のようなこの日本画のタッチ、これも青春だ。はちきれる丸みと奔放な色が気に入った。