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北斎の世界をまたぐ絵と文と [2025年10月19日(Sun)]

fumihouse-2025-10-19T21_37_54-1-thumbnail2.jpg葛飾北斎ワールドを堪能してきた。北斎が「葛飾北斎」と名乗った時期(40歳代後半)と「戴斗期」と言われる50歳代の油の乗り切った時期に限定した展覧会。島根県立美術館で開催中の『永田コレクションの全貌公開展』である。

東海道物(とうかいどうもの)を眺めていると人間の視線を思う。東海道の名所を描く絵。高い建物が少ない時代にあって遠くまで見通せる視点を持てる頃だった。より遠くを見通す、空の高所から目で鳥瞰図を描くことにもつながる。現代にあって都市は高いビルディングが密集している。ビルの谷間に入るとちっぽけな自分に嫌悪をもよおし、落ち込む。だから人は高いビルに上り高所から景観を楽しみ、高い山に登って心の憂さを晴らす。東海道物を見た当時の人は、日常の悲喜こもごもに新たな視点を得たことであろう。

読本(よみほん)は面白い。むろん崩した草書体を読めるわけではないが、血湧き肉躍る物語世界を楽しませ、庶民の想像の翼を広げた挿絵には力がある。蔦屋重三郎の大河ドラマ『べらぼう』で主流の黄表紙(きびょうし)の次にくる流れは読本の時代。英雄譚や仇討ち、お家騒動、愛憎劇といった物語に勧善懲悪や因果応報といった価値観を織り交ぜた読本。

読本の挿絵の初摺(しょずり)と後摺(あとずり)が異なることに驚く。初摺はスクリーントーンのような薄墨の淡い影が画面を効果的に際立たせる。版木が古くなるほどに影は消えて画面に色つやがなくなる(白黒だけど)。読本の物語世界を決定づけるのは浮世絵の巧拙であり、新しい版ほど光彩を放った。

島根県に寄付された永田コレクションは二千四百点。島根県民の特典として(松江の島根県立美術館と益田の石見美術館で展覧するのが寄付条件)、これから何回でも北斎を楽しめるはずだ。

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