大捜査踊り終われば再びの [2012年10月07日(Sun)]
『踊る大捜査線THE FINAL新たなる希望』を楽しんだ。すみれ(深津絵里)の思い切った大犯罪ぶりに驚いた。現役なら懲戒免職はまぬがれない。刑事罰でも執行猶予がついて懲役2,3年にはなりそうだ。ネタバレになるのでここまで。ともあれ今作は特に綺麗!
これだけ毀誉褒貶の激しい映画も珍しい。ネット上には前回に増して駄作だ、言うことないほど感動したなどと両極端の評価が並ぶ。なぜここまでヒットするのか、テレビ編も含めて15年もの間続いているのか。わたしは思う。室井(柳葉敏郎)と青島(織田裕二)の立ち姿や動く姿にあるのだ。 室井は端正にりりしく立つ。唇を真一文字に結んで、室井は不条理に耐える。警察内部の行き過ぎた官僚主義やセクショナリズムに怒る。が、耐える。キレたりはしない。自己保身ではなく、市民を守るためのより良き警察組織をつくるには職階を上げて権限を持たねばねらない。そのときまではじっと我慢の子。だが、敏腕をふるえる時には、部下を信頼して全力で闘う。まさに大人の理想像がある。緊張感ただようあの歩く姿にしびれる観客は多いだろう。 青島は少々猫背に斜に構えて立つ。上下動は大きくたらたらして歩く。が、犯人や敵対する相手に対するときは、不動明王のような力感を見せる。現場に向かうときの青島は全身が豹のように躍動感に満ちている。表情も魅力的だ。口をへの字にして不満顔かと思えば、破顔一笑して場の空気を変える。ひとを幸せにするあの笑顔はたまらない。 「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」という青島の不世出の名言。今回もいいセリフがあった。 「正義なんてえのは、胸の奥に隠しているくらいがちょうどいい」(だったかな?) 正義は、ときに独善に陥る。自衛の元に行われる戦争も正義であり、テロとの闘争も正義が旗印だ。旧日本軍の各種爆破事件などでっち上げた正義だって数知れない。正義を色濃く声高に主張する者の言い分には注意したほうがいい。 室井(柳葉敏郎)にも名言があった。台詞は忘れてしまったが、格好よく決めたあとに、死んだ和久(いかりや長介)が決めゼリフをいうたびに「なんてなっ」と照れかくしをしたように、そのまま真似て笑いを誘った。亡くなったいかりやへの追悼であろう。細かい指示を求める湾岸署(所轄)の捜査員に、「自分の判断で動いてください。責任は私がとります」 と。テーマ曲とともに実に痛快で胸踊るシーンだった。 今回の肝は、警察上層部の汚れや情報の隠蔽・捏造、強烈な官僚主義を糾弾する意図がある。漫画的な強引過ぎる設定に鼻白らむこともあったが、その中心軸にいた鳥飼(小栗旬)。上意下達の権化を演じたこと、組織改善策を何度も建白したこと、正義をうたう殺人の片棒を担いだこと。それらの矛盾が大き過ぎた。マスコミ各社にメール送信した告発文があまりに貧相で小栗がかわいそうに思えた。 ストーリーとしては決してファイナルという展開ではなく、今回が本当におしまいとは思えなかった。でも惜しまれてここで止めるのがいい。ゴジラのようにダラダラと晩節を汚してしまうことになる。 |