シャレードは車でなくて言葉あや [2012年09月22日(Sat)]
冒頭のクレジットから迷路をデザインした枠に登場人物と俳優の名前があらわれる。幾度も聞いたことがある映画音楽。これが『シャレード』なのか、なるほど。いかにもスリリングな感じ、スパイが出てきそうな雰囲気がある。フランスのスキーリゾート地。黒いサングラスをかけたオードリー・ヘップバーン。片隅から狙う短銃。気がつかずにもりもり食べ続けるオードリー。引き金が引かれた。危ない! と、銃口から・・・なんだ水鉄砲か、と観客をギャフンといわせる。
シャレード(charade)とは、偽装とか見え透いた見せかけという意味がある。殺された夫チャールズにはいくつもの顔があった。パスポートだけでも四つ。夫の友好関係はもちろん、どんな仕事をしているかも知らなかったレジーナ(オードリー)はノー天気だ。ただ富豪としての夫だけを利用価値とし、夫は妻の美貌だけを好んでいたようだ。レジーナは真実を探ろうとするやいなや、周りのほうから事件が降りかかってくる。彼女は軽妙でロマンチストなオチャメぶりを存分に発揮する。 シャレードには、言葉当て遊びという意味もある。ジェスチャーで相手を当惑させ、ウィットに富んだ掛け合いで、身に危険が迫ったたときですら、ゲーム感覚で観客をニヤリとさせてくれる。特にレジーナと謎の男ピーター(ケーリー・グラント)とのやり取りが楽しい、かつロマンスに心躍らせてくれる。 途中で誰が犯人かはわかりそうになるが、どんでん返しがある。最後にもう一つの意外な展開がくる。軽快で幸せなラブコメディであり、ロマンチックサスペンスであった。そして苦しいときであっても、口角を上げてにっこりジョークを忘れるなと教えられたような気がした。 |