情念を軍艦の形に似せている [2018年07月28日(Sat)]
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耳をふさぎたくなるほどの静けさがある。 端島(はじま)は長崎市にあります。別名軍艦島。明治から昭和にかけて海底炭鉱で栄えた人工島です(周囲数百mの岩礁や瀬を埋めて拡大)。数千の人口を養った高層アパートが密集しており、海に浮かぶ軍艦に見えます。石炭時代の終わりとともに無人となり廃墟でしたが、2015年に明治日本の産業革命遺産の一群として世界文化遺産に登録されました。 冒頭の一文は廃墟の一画に落書きされた作者不明の詩の一部です。「静けさ」は、この島で生きて産まれて、病気で苦しみ、劣悪な労働環境を嘆き、朝鮮半島から連れてこられて故郷を懐かしみ儚んだり、落盤事故で死んでいった何千いや何万もの人々の苦しみを湛えているのだと思います。引き揚げ最後の頃の文人が書いたものでしょうか。 この詩はこう言っています(『THE ISLAND 軍艦島』佐藤健)。 かつて我々のものだったこの町も 今や君たちのものだ。 「君たち」とは誰でしょう? 世界遺産登録後、入島する観光客のことを想像しているとは思えません。鳥や植物、あるいは吹き込む風雨でしょうか。この島で死んでいった人たちを追悼しているのかもしれません。 (天然の植物は皆無だったという軍艦島にも、持ち込んだ向日葵が咲いていたことでしょう) |



