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雪の精なまめかしいのは雪女 [2017年08月14日(Mon)]

fumihouse-2017-08-14T18_44_10-1-thumbnail2.jpg吹雪が板戸を叩く。誰か来たのだろうか。待ち望む人にちがいない。去った恋人か、それとも死んだ愛しの人なのか。一緒に暮らすなど望むべくもない。けれど降る雪がひと時だけでも叶えてくれるならば私は幸せ。雪の精よ、叶えておくれ・・。

映画『雪女』はエロティシズムむんむんの映画である。主演は杉野希妃、監督も同氏。きれいなだけでなく、官能的で妖気あふれるたたずまいにゾクっとなる。ユキは小泉八雲の原作のように十人もの子は生まない。ウメを一人だけ生んで14年後も変わらず美しい。雪女とユキの眼差しがこの映画の肝だと思う。

一度は助けた巳之吉(青木崇高)に雪女は再び会いたいがため、長じた彼の仕事帰りを待っていた。上目遣いの妖艶な秋波を送られて、巳之吉は抗しがたかった。ユキ(杉野希妃)の横顔は神秘の光を放ち、大きな目の下の目袋は涙を溜めたかのように情深く見える。黒目がちの瞳はもちろん、雪のような白目も印象的だ。巳之吉は出自不明のユキに対し不安も覚えたことだろう。嫁にとり体を重ねる。血を交わして子供をつくることをどう思っていたのだろうか。

時代設定は大正から昭和の初期。舞台は山が迫る小さな町。自然に抱かれた人間の営みが静かに描かれている。であるから一層、巳之吉とユキが結ばれる初夜や露天風呂の交わりがエロチックだ。小ぶりな形良い唇と豊かな黒髪をもつユキが薄暗い湯船で悶える様子は、美の妖怪とでも言えそうだ。

見えないものがたくさんあるというセリフがあった。異質なもの同士が出会うとき、新しいものが交わり合い、生み出される。そこから世界は新しい展開を迎える。思いがけなく変化は生まれるのだ。ひとは誰もが、見えなくて知らないものに挑むとき、雪女と交わるのかもしれない。

小泉八雲・雪女には、なぜ人間を殺すのかは記してなかった。ともかく男に白い息を吹きかけて殺す。杉野・雪女は、殺したいから殺すのではない。生命の灯が絶える直前の人間を苦しませずに送ってあげて、あの世との架け橋となるように描かれていた。死とは、奪われるのではない、安らぎを与えられるのだといいたいのだろうか。雪の精か、死の妖怪か。正体を巳之吉に知られた雪女は消えた。理解不能なところもありはしたが、妖しくなまめいて心に残る映画であった。

(雪女ほどてはなくても、それなりにエロティシズムを感じさせてくれる白い薔薇)
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