鯛に似た蜩の字は夏の調べ [2016年07月11日(Mon)]
ヒグラシ(蜩)が朝に夕に鳴いている。朝は日明かし、夕は日暮らし。裏山にカナカナカナと鳴いている。
強く弱く濃く淡く。シンクロし揺らぐ異界の響き。怪談になくてはならぬ音。林に染み入り、恐怖の蝋燭を灯すのだ。異界の主は深山の神々と書きたいところだが、なわけはない。それでも幽玄なる谷を木の精霊が駆け回り、時間の観念もすっ飛んでいく不可思議な感覚。出だしは低いが速さと音量を増してゆっくりと収束していく。ゆたりと日本の美を感じるひととき。 今日も厳しい暑さで体も心もだるい。せめて夕暮れの入りしなには、ヒグラシの音でわびさびを思い、朝の苛烈な太陽が昇る前にヒグラシの幽寂で目覚めようではないか。 (ヒグラシの幽玄さとは対照的なひまわり。太陽に向う葵の大花がキラキラしている) |