人がみな不埒に動く恋の味 [2016年04月14日(Thu)]
フランクとモリーの悲恋物語を、名優ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープが切なくロマンチックに演じた。
映画『恋におちて』は、クリスマスイブに出会った恋人どうしの一年間の物語。要するに中年男女の不埒な恋の軌跡だと言ったら、あの純愛を冒涜するのかと非難されそうだが、まあそういうことなのだ。そうしたことに憧れる人は、それはそれでよい。首に手を回してキスをして、あんなふうに抱擁されて燃えたい!と望む人はそれでよかろう。 悲恋のパターンはどこか一様である。予定調和の物語が進むものだから眠くなってしまった。もちろん美しい音楽が響いて心地よかったこともあるし、二人が「アイ・ミス・ユー」とささやき合いながら交わすキスも美しい。だから余計に眠くなってしまったのかもしれないな。 待ち合わせの出発時間に遅れ、もう駅で待っていはしまい、もうここまで!と落胆したフランクの背にモリーは声をかけた。谷底から天上へ駆け上ったフランク。抑えようとした気持ちがはじけたときのデニーロの演技は最高だ。あなたに逢いたい、あなたと同じ時を過ごしたい!という恋人どうしに共通する思い、愛の虜になって女を思う純な男を切に演じた。 無数の人間が行き交う雑踏、混んだ地下鉄車中。これらを魅力的に映すカメラワークが素晴らしい。ニューヨークという舞台も素晴らしい。二人の名優の演技も最高だ。それでも描かれた内容がそれにふさわしいかというとそうではない。将来につながる発展性はない。それでも映画そのものは燦然と輝いている。 (出会った二人は赤い糸に結ばれた必然を感じていたとしても、隣り合った芝桜の花が折り重なって咲くのと同様に、たまたまの組み合わせでしかないのかも) |