痛快に参勤交代泣き笑い [2014年08月11日(Mon)]
映画『超高速!参勤交代』は痛快な喜劇です。しかし当の湯長谷藩の面々にとっては、藩がつぶれるかどうか、生か死かというせっぱ詰まった状態。それを私たち観客は楽しみました。弱い立場の者が上位の者に対し正論でやり込め、強い目力で強者の罪をあげつらうとき、観客には胸のすく思いがあるのです。そして、もつべきものは誠実な情愛で、信じ抜くことも含めた徳の力であることを知るのです。また、知恵と武力という真の実力(運も含めてか)をつけなくてはならないものだと改めて思うのです。
福島・磐城の湯長谷藩から8日かかる参勤交代を5日で江戸に着くよう悪徳老中から強要され、しかも国許に帰った翌日には再出発しなければならないという無理難題に、客は登場人物とともに怒ります。しかも蓄えはない、従者もわずかしかいない状況に怒るのです。一行を亡きものにしようと暗躍する隠密の悪事に怒り、金だけもらって案内を放棄した忍び段蔵に怒り、宿場の女郎宿で強いたげられていたお咲(深田恭子)をいじめる女将と旦那に怒り、お咲の境遇に涙するのです。 また観客は、弱小貧乏藩であったとしても藩と領民を守るという一点で奮闘する藩主(佐々木蔵之介)に喝采を送り、徳川吉宗将軍が正義を貫いてくれたことに手をたたき、敵が束になってかかってきても屈強の武者は目にも止まらぬ剣劇でバッタバッタとなぎ倒すところも痛快です。すべての観客が溜飲を下げたことでしょう。 「超高速」の名にふさわしく、疾走感あふれたストーリー展開。ギャグの笑いもありますが、権力者の恥部をえぐるような皮肉の笑いもありました。のんびりとした湯長谷藩の風情にも思わず微笑みがこぼれます。この厳しさと温かさの両者がバランスよく映像を貫いていること。そこが人気の理由なのだと思います。観終わって得したと思えた映画でした。 |