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チャレンジドの「地域で生きる」を考える

このブログは、スウェーデンのニイリエが障害者の地域生活の在り方について分かりやすく示した「ノーマライゼーション八つの原則」の考え方を基本的な理念として、チャレンジド(※)の地域での普通の生活がごく当たり前になり、共生社会が実現することを目指した具体的な行動や行事・事業・研修・提案・要望等の活動について、福市繁幸が(社会福祉士・精神保健福祉士・NPO佐賀県地域生活支援ネットワーク代表理事、佐賀県肢体不自由児者父母の会連合会会長の立場で)記録しています。
年間行事の「チャレンジドフォーラム」「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修(基礎・実践・更新)」についても案内しています。
※チャレンジド=障害者を表す米語。障害者・難病の方々・自閉症/発達障害など地域生活をするにあたり様々な挑戦をする機会が与えられた選ばれた人たちの意。


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公営住宅の福祉利用 [2009年03月07日(Sat)]
公営住宅の福祉利用については、入居募集に対する応募の倍率が高くなる中で、どのように推進すべきか、各自治体で知恵を絞っている。

長野県では、早くから公営住宅の福祉利用が進み、定着しているし、全国でもっとも実績をあげているのは大阪府。

公営住宅に限らず、今、集合住宅における最大の問題は、「孤独」だ。
快適なはずの共同生活が「孤独」を生んで、うつ病や、孤独死といった社会問題へとつながっている。

人と人とをつなぐふしぎな力をもつ人たちがいる。知的障害者である。売り上げ好調のユニクロはそこに着目して、会社の方針として全店舗に障害者を雇用し、障害者雇用率8%を達成している。スターバックスコーヒーもそうだ。
知恵をしぼって公営住宅の福祉利用、とりわけ知的障害者のグループホーム利用をすすめ、公営住宅も含めた「地域」の力を上げること。
そこに早く気づいて、早く取り組んだ地域が「地域力」をあげ、高齢化で低迷する自治会活動も活発化していくだろう。
障害者理解にもいい方向感が生まれそうだ。

佐賀県ホームページに、県営住宅の福祉利用の手順が掲載されている。
少しずつ、着実に実績が伸びていくことを期待している。
http://www.pref.saga.lg.jp/web/_24593.html
長野県の地域移行 vol.4 [2009年02月11日(Wed)]
西駒郷の地域移行にぶれがなかったのは、同じ方向感を持つキーマンの変わらぬ存在と県内の要所に適材適所ができたからだと思う。

「昨日まで土木事務所にいて、福祉のことはまったくわかりません。」という人たちが行政の特に県や市町村の要所についてしまう人事を相変わらず続けなければならない中で、「障害者の話を聞く。」意味や必要性、根源性を理解している専門家がずっといてアドバイスしてくれて、ぶれがないようにすることは、障害者の地域移行をすすめるためには不可欠だと思う。

「聞く」ことを中心にせず、行政の立場のみを前面に出しすぎたら失敗する。「聞いて」理解して、自立をベースにした理想的な生活をイメージして、合点して、ためして、修正して、またためして、理想的な生活を目指していく。この繰り返しだ。相手を傷つけるような発言をする人は、基本、障害者と接しない方がお互いのためだろう。

西駒郷でいただいた資料の中に、国のプロジェクト事業で作成した本(「聴く」ためのガイドブック 障害をもつ人の思いに寄り添うために 発行/長野県地域生活研究会/会長小林彰)がある。

この中にまとめとして次のように書いてあった。

「聞く」とは?
1 その人の生き方や考え方を尊重すること
2 その人が自分の問題を自分で解決する力を持っていることを信頼すること
3 生き方や考え方の違いを認めること
4 聞き手の生き方、他者とのつきあい方も問われるもの
5 人と人との理解の場を聞くこと
6 人間関係を作り出すもの
7 支配・管理・保護の関係ではなく、対等で安心できる、自由な関係へつなぐもの
8 プロの援助者は、聞くことに始まり、聞くことに終わることを知っている

特に相談支援を担当する、すべての行政職員、相談支援専門員、事業所職員が念頭におくべき事柄だ。

西駒郷は「聞く」を大事に地域移行を進め今の姿に、なった。
長野県の地域移行 vol.3 [2009年02月07日(Sat)]
障害者自立支援法が本格施行される2年以上前の平成16年3月「西駒郷基本構想」が作られていて、西駒郷の将来像が描かれている。

5年後の西駒郷
○西駒郷の入所定員は・・・5年間で250人程度の地域生活移行が実現できるよう努め、5年後の入所定員は190人程度とします。
○当面60人規模の居住棟を1棟建設するとともに、並行して、既存の居住棟については、計画的な地域移行を進めて4人部屋を解消し、必要な改修を行い、居住環境を改善します。
○・・・西駒郷の既存の作業棟を活用し、地域移行した西駒郷利用者と地域の在宅の方を対象とした日中活動の場としての機能を持つ施設とします。

ちょうど5年後に私たちは訪問した。

○1月現在207名であり21年3月には190名程度となる予定
○新居住棟 さくら寮(個室完備。60名定員。地域移行の訓練ができる。)が完成
○日中活動の場である知的障害者更生施設として250名、知的障害者授産施設として100名が利用しており、入所者以外から150名の者が通所利用している。(将来は、生活介護、就労継続支援、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援に取り組む予定。)

と、基本構想どおりに達成されている。

大池ひろこさん作成のパワーポイント資料に
「地域生活移行は、障害の重さ・軽さではなく、その人の意向に沿った支援を組み立てたところから動き出せばいい」
とあるのが目に留まった。

その人の意向を「聴く」ことが、できているのか。考えたい。




長野県の地域移行 vol,2 [2009年02月05日(Thu)]
長野県西駒郷地域生活支援センター所長の大池ひろ子さんが、私たちの訪問した日のお話の最後に力説された言葉がある。また、ご自身が執筆投稿された文章にも書いておられる。

「障害者が安心して生活するには、相談支援体制の整備が不可欠です。」

施設福祉中心の時代には、障害者の地域生活を支えるための相談支援体制はそれほど重要ではなかっただろう。しかし、舟は既に漕ぎ出している。施設福祉に重点を置こうとする人たちが相談支援を担当しては決してよくない。予算という金縛りで身動きがとれない公務員が相談支援を担当したらいいコーディネートはできない。

このいずれからも中立で、真の総合相談支援体制を自然に作り上げていったのが長野県であり、県の強いリーダーシップとコーディネートで、拠点作りを各地に着実に作り上げていったことが、ひいては西駒郷のスムーズで理想的な地域移行を可能にしたといえる。
上小圏域障害者総合支援センターが総合相談支援体制のはしりだといわれている。身体と知的の相談支援員がたまたま事務所が隣りあわせで仕事をしていたところ「一緒に机を並べて仕事したほうが情報交換できるし重なる仕事も多いし効率的だね」となったらしい。

今では、
県内10箇所に県事業として設置したのが
身体障害者生活支援コーディネーターが8人(当時は市町村事業)
知的障害者生活支援コーディネーターが8人
精神障害者生活支援コーディネーターが13人
障害児療育コーディネーターが14人
障害者生活支援ワーカーが14人
障害者就業支援ワーカーが11人である。
しかも、障害者自立支援法が施行される前の平成17年度の数字であるからおどろく。

地域移行を可能にした次の柱が、障害者グループホーム等整備事業。
グループホームの新設に2000万円、改修に1000万円
補助率は 知的は県1/2 設置者1/2  精神は県1/2 市町村1/4 設置者1/4であり、市町村が役割を果たしている。平成20年度に創設された国庫補助のモデルとなっているらしいが、国庫補助ができても、枠が厳しいことから県の制度は残したままであるところが、またいい。

そして、三つ目の重要な柱が、重症心身障害者等グループホーム運営事業。
地域生活をしたいのは、グループホームの対象となる障害程度区分1の方だけではない。
障害者自立支援法は障害程度の軽い人の地域移行を目指したのではなく、「本人の望む生活の実現」を目指して作られている。相談支援が重要なのはそのためだ。

医療的ケアやてんかん発作などがあり、日常的に看護師の適切な配置が必要な人たちもまた、地域で生活したいと思っている。「地域移行は障害の軽い人が先だ」と考えている人がいるとすれば、考え直してほしい。長野県のバランスの取れた政策によれば、運営費補助というかたちで県も市町村もきちんと対応している。すばらしいの一言である。

内容は、重症心身障害者等、重度の知的障害者がグループホームで生活するために必要な職員が配置できるよう、法律に基づく個別給付に加算して運営費を助成し、看護師の配置を可能としている。
補助率は 県が1/2 市町村が1/2

重症心身障害者にはてんかん発作を抱え、投薬をしている人が多い。看護師配置はいわゆる限定的な医療的ケアを行うためだけではなく、重症心身障害者の日常生活全般に必要なのです。政策を立案する公務員の方々にいいたい。「現場をみて感じて心を動かしてほしい。」

先に書いた和音のオープンから一ヶ月が経過した。看護師の配置により支出が増えた。6名定員としたことで小規模加算がなくなった。基金の加算を加えても数十万の赤字が確定した。

制度の充実がないと、看護師を配置したケアホームの運営は、できない。ひろがりも、ない。











長野県の地域移行 vol,1 [2009年01月31日(Sat)]
安曇野市視察の二日目は、長野県立コロニーを中心とした地域移行の現場をみるために西駒郷に行った。

昭和52年当時最大約500名利用していたバリバリの入所施設が、今では個室完備の約200名利用の施設へと劇的に生まれ変わり、さらなる変貌を目指している全国屈指の地域移行モデル施設である。

西駒郷の吉江所長(県庁からの出向。現在県庁から8名出向し、事業団職員約60名嘱託職員約70名の計約150名で運営。10年前は出向約104人、事業団職員約90人。)に西駒郷の概要や地域移行の実績をご説明いただき、その後、昨年3月まで長野県自立支援課長(職員8名の課)だった大池ひろこさんには、長野県西駒郷地域生活支援センター所長(県職員としての出向。職員5人)の立場も交えながら、県のリードで推進した地域移行策について教えていただいた。地域移行のカリスマ的存在の山田優さんの後任にあたる方である。山田さんは既に退職され、週3回の嘱託職員として関わりを続けながら、全国に地域移行のあり方を遊説しておられるようだ。

大池所長に地域移行をすすめていくにあたり、最も必要なことについて聞いたところ、「まずは県庁内に障害者の地域移行を専門に実施する組織(長野県でいう自立支援課、西駒郷でいう地域生活支援センターが必要であり、そこに地域移行に明るい人材を配置すること。」とのことだった。

障害福祉課は県庁の中でも最も残業の多い職場であり、監査、事業所指導、予算、議会はほぼ全職員が時間をさき、各自の担当業務が山ほどあり10時過ぎまでの残業が毎日続いている状態であり、このような中で政策的な地域移行を専門で取り組むことは、かなり厳しい状況である。

長野県に学ぶべき端緒は、障害者の地域移行が本格化(障害者自立支援法全施設適用)する平成23年に向けて、障害福祉課に(あるいは障害福祉課とは別に)相談支援、グループホーム設立支援など、障害者の地域移行を総合調整する組織と専門スタッフが必要ということではないかと、現場をみて感じた。






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