2025年03月31日(Mon)
開催報告<防災と自治 能登半島地震から1年ー現状を知り、「次」への備えを考える>〜せんだい・みやぎソーシャルハブ〜
こんにちは。スタッフの水原です。 サポセンは「せんだい・みやぎソーシャルハブ」とともに、社会課題解決のプラットフォームをつくってきました。せんだい・みやぎソーシャルハブとは、市民目線で気づいた社会課題に対し、NPO、行政、企業、志のある個人など多様な主体が力を合わせ、課題解決のために力を発揮する環境をつくることを目的とした場です。 取り組みの一つである「情報交換会(セッション)」では、まちづくりの多様な主体が月1回集まり、これまで、サポセンと共催で開催してきました。 【note】レポート公開中!せんだい・みやぎソーシャルハブ情報交換会 今年度のテーマは「防災と自治」。誰もが当事者になり得るテーマで、参加者の皆さんと新たなつながりを育むことを一緒に考えてきました。 ![]() 令和6年1月1日、能登半島地震が起こりました。 これを受け、セッションでは翌2月と3月にわたり、能登半島地震に学び自分たちの備えについてを考えました。 あれから一年、今一度、能登半島の今を知り、仙台、宮城で何を備えていけばいいのか考える機会をつくりました。 ゲストにお招きしたのは、 合同会社CとH 共同創業者・CEO 伊藤 紗恵さん NPO法人ESUNE 副代表理事/株式会社御祓川 能登の人事部コーディネーター 斉藤雄大さんのお二方です。 当日は、会場に13人、オンラインに10人の防災に関心をお持ちの、NPO、学生、企業など様々な方々が集まってくださいました。 残念ながら、ゲストでお招きしていた斉藤さんは体調不良により欠席でしたが、なんと!斉藤さんを能登復興のためにコーディネートした、NPO法人ETIC.コーディネーターの瀬沼希望さんが会場にお越しくださり、斉藤さんから事前共有いただいた資料「能登半島地震から1年現状共有と次の挑戦」を元に、自身が現地訪問した視点も交えてお話してくださいました。 ![]() 社会課題が自律的に解決されていく社会・地域を実現するため、様々な支援事業を展開。2023年から休眠預金の分配団体として、防災の観点から地域の共助力・機動力を高めるプロジェクトを実施する中間支援組織を資金面・非資金面で支援しています。 https://etic.or.jp/news/2023/11/4111/ 斉藤さんが能登の復興支援のために活用したのが、瀬沼さんが所属するNPO法人ETIC.の能登半島地震復興支援「能登版 右腕派遣プロジェクト」。そして、輪島市三井町の民間ボランティア組織「のと復耕ラボ」のリーダーの元に、”右腕” として斉藤さんをコーディネートしたのが瀬沼さんです。 ※「右腕プロジェクト」は、東日本大震災をきっかけに始まった復興支援に取り組むリーダーの右腕として派遣される取り組みです。 ▲NPO法人ETIC.の瀬沼さん(写真中央) 静岡の地域コーディネーターを能登に派遣 斉藤さんは静岡県のNPO法人ESUNEの事務局長として、学生と社会人をつないだり、国際交流をしたり、あらゆる主体による連携、協働によるプロジェクトに取り組んできました。また、防災を学ぶ研修で能登を訪れており、能登半島地震発生後「何か自分にできることはないか」と考えていました。そこに瀬沼さんから斉藤さんへ「右腕隊」として、能登・三井町を中心に復耕活動を行う有志の民間団体「のと復耕ラボ」への派遣依頼があったのです。 復興に尽力する能登のキーマンを支える 右腕隊が達成するべきミッションは大きく2つ。1つは、ボランティアセンター機能を構築すること。具体的には、ボランティアの安定共有、宿泊拠点の整備、予約受け入れシステムの構築です。2つ目は、復興の旗印となる事業を立ち上げること、またそのコーディネートです。 現在、復旧作業は落ち着き、復興に向けた事業をつくっていく段階とのこと。茅葺屋根の解体から出た古い建材、梁などの木材をアップサイクルする取り組みをはじました。 のと復耕ラボは、能登地震後に立ち上がった組織で、代表者は地域おこし協力隊の仕事を通じて能登に惚れ込み移住した人です。レストランと宿泊施設を経営する茅葺屋根の家屋を、ボランティア拠点として開放。ボランティアの人たちが一日の作業を終えると、美しい里山に囲まれた家屋の囲炉裏端でお酒を酌み交わしました。災害ボランティアだから”楽しんではいけない”ではなく”楽しむ”を味わいました。結果、他の民設民営ボラセンと比較して、のと復興ラボでのボランティア参加者のリピート率が上がり「能登を応援したい」という人が増えたといいます。 2024年9月には奥能登豪雨が発生し、二重被害を受けました。各地で既にボランティアセンター機能が構築されていた為、ボランティア受け入れはスムーズでしたが、精神的なダメージが大きかったといいます。 能登のキーマン大集結会議はじまる 長期的な支援が必要と考えた斉藤さんは、拠点として七尾市の株式会社御祓川に就職。静岡のNPOに所属しながら、能登との二拠点を行き来しています。斉藤さんがコーディネーターを務める御祓川では、2025年2月、復興に向けた機運を高めようと 「のと発酵的復興会議」を開催。参加者100人うち8割は地元の人たちでした。被災地において、外部支援者が多数を占めるとの予想に反し、嬉しい驚きだったそう。能登の復興のために地元の人たちが集結する場をつくり、様々なプロジェクトがここから立ち上がろうとしています。 今後の課題として挙がったのは、 そもそも能登は地震前から住める家が少なく、暮らしたいと思っても住む家がないこと。学校の統廃合により子どもたちの居場所を確保できなくなっていることから、保護者も安心できる暮らしが機能していないこと等があるということでした。 ・・・ 奥能登に仕事をつくる 次に、奥能登に位置する珠洲市で、合同会社CとHを経営する伊藤 紗恵さんからお話をお聞きしました。合同会社CとHは「地域 丸ごとパラレルキャリア」をビジョンに掲げ、次世代に10年先のワクワクを生み出す地域づくりに取り組んでいます。事業内容は、会員制24時間コワーキングスペース兼交流拠点OKNO to Bridge(奥能登ブリッジ)、HARIO Lampwork Factoryのアクセサリー工房の運営を軸に、奥能登の「働く」の可能性を拡げる事業を展開しています。 ▲オンラインで参加してくださった伊藤さん 能登の課題は日本の課題 合同会社CとHの設立は、能登半島地震の半年前です。伊藤さんは「CとHのやることは、震災があっても無くても最初から復興事業だった」と言います。なぜなら、能登の課題は震災前から過疎化による人口減少であり、仕事が無く、若い人たちが地域外に出てしまうことだったから。「能登の現状は、地震があっても無くても、いずれ日本中で起こること」と警鐘を鳴らします。 さらに、度重なる災害は、能登の人口減少を一気に加速させたといいます。「若者は益々能登を離れ、帰ってくるつもりもない半壊以上の家屋を公費で解体したいというのは仕方ないこと」と伊藤さん。一方で、能登に住みたい人がいたとしても、能登の魅力である古民家が消え、家屋自体も減少し住む家が無いのが現状です。 打開策は、二地域居住の推進 CとHは、二地域居住(国土交通省サイト)を推進しています。能登の外の人も、外に出た人も、これから外に出たい人も、能登に関わりつづけられる関係人口を増やす提案をしています。例えば、CとHが受け入れてきた学生インターン20人〜30人に「自由をあげるから事業になることを見つけてきて」とお題を出すと、学生たちは珠洲市で5件の事業を立ち上げました。また、地域に残りたいという若い女性のための仕事をつくり出すため、南相馬市の小高ワーカーズからノウハウ提供を受け、HARIO金沢・珠洲ガラス工房を創業。24時間いつでも働けて、出来高制です。金沢にも工房があり能登と行き来しての生活も可能で、どちらかに移住することも可能にする取り組みです。 また、伊藤さんは、のと発酵復興会議で話された内容に触れて「人口減少で能登の企業が困っている。能登に人を呼び込むために企業連携で社宅をつくろうという話も出ている」との報告もいただきました。 ・・・ ゲストへの質問タイム 会場の参加者からは、現地の状況を知りたいと質問があがりました。 「漁業や道路状況はどうなっているの?」「高齢者は仮設住宅でどうしているの?」 伊藤さんと瀬沼さんは、 「漁業は再開できないところもある」「農業も従業員が離れてしまい再開できない」「道路は一応は大体通れます」「仮設住宅は高齢者がほとんどだが、交流スペースが足りない。自分たちで集まって交流しているようだ」の他、「畑仕事をしなくなり体を動かさなくなった」などがあると回答しました。 「今後の未来像を聞きたい」という質問には、伊藤さんが回答。 「正直、分からないです。大学生インターンのなかには珠洲に根付く人もいるだろうと思うし、その流れを止めないように、人を呼び続けることが必要だと考えている」と、今の思いを明かしてくださいました。 ・・・ 後半は、参加者の皆さんで話し合うワークショップを行いました。 能登半島の取り組みから、自分たちが「次」に備えるために必要なことをグループごとに話し合い、災害時の備えや考えをシェアし合いました。 ■ワークショップで参加者同士がシェアしたこと ・長期休暇中は、仕事場の人たちがどこにいるか分かるようにしておく ・正しい情報をどこから取るか悩ましい。→ラジオ、SNSなどそれぞれの情報源を共有 ・日頃から、非常用バックを備える ・町内会の運営 ■斉藤さんから事前に共有いただいた、平時から考えておきたいこと ・遠方に住みながら能登にできることは寄付・支援購入・長く関心を持ち続けること ・日頃から空き家などの情報を把握しておく ・井戸など地域の水源の確認 ・地域の関係人口を増やしておく ・災害時に外部受入れ拠点(ボランティア拠点)になれそうな場所はあるか考えておく ・回覧板が機能しなくなった場合に備えて、地域のLINEグループなどに慣れておく ・・・ \\ ゲストの皆さま、ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました // ![]() 【前編】2/20開催レポート「【防災と自治】能登半島地震から1年 ー現状を知り、「次」への備えを考えるー」 【後編】2/20開催レポート「【防災と自治】能登半島地震から1年 ー現状を知り、「次」への備えを考えるー」 |