「日本人は働くことを神聖視する傾向がありますが、度を超えた労働は死につながります。」と話すのは、過労死「東北希望の会」(仙台市青葉区)代表の前川珠子さん(51)だ。
「希望の会」は、過労死遺族と過労自死遺族の自助活動を目的として2013年4月に設立した。遺族にとって、法的な手続きの完了がすべての解決ではない。想像以上のストレスに晒されるほか、自死の場合は遺族が偏見から差別をうけることもある。
会では毎年、海水浴やクリスマス会など、子どもの支援に力を入れる。子どもは世界が狭いので自分に必要なつながりを見つけていくのが難しい。笑顔を失くしていた子どもが変化していく。子ども達のはしゃぐ姿を見るのはことのほか嬉しいと前川さんは語る。
毎月の定例会は、遺族、労働問題の当事者とその家族、労働問題に詳しい専門家が自由に参加している。希望の会は、誰かがケアするのではなく、立場を超えて互いに受け入れあうことで機能している。笑いたければ笑い、泣きたければ泣く。ありのままでいられる貴重な場だ。
仕事中毒の当事者を家族が連れてきた時には、当事者が理解できるようにみんなで話し合う。誰にも相談できずに苦しむ人が必死でやってくる事もある。苦しみのあまり命を絶ってしまいそうになる人の気持ちに耳を傾ける時、こんなふうに亡き夫の話が聞けていたらと思うこともある。
前川さんは2012年1月、大学の准教授だった夫(当時48)を過労自死で亡くした。夫の尊厳を回復したい、過労死をなくしたいとの思いが原動力となり、法の整備を訴えた署名活動は、過労死等防止対策推進法の施行(2014年11月)につながった。
過労死は一部の人の遠い出来事ではない。どの職場にも起こりうる共通のテーマだ。働き方・生き方を考えるきっかけとして耳を傾けてほしい。
「過労死防止フォーラム」11月26日・エルパーク仙台/主催:厚労省 協力;東北希望の会、過労死を考える家族の会ほか。
(仙台市泉区 小野円)