「おはようシアター」代表の川熊美貴さん(33)は、県内の大学在学中に演劇を始めた。卒業後、仙台市を拠点に演劇を続けながら中・高校で美術教師と児童館職員を経験した。頭の中にはいつも「子どもたちのための演劇」があった。
2011年3月の東日本大震災後、年齢や性別、職業の違う8人が集まった。その年の6月に「おはようシアター」を設立した。
震災で避難所など窮屈な空間での生活を余儀なくされた子どもたちのために「おはようシアター☆おもちゃ箱」は、活動1年目に完成させた演劇プログラムだ。恐怖心を与えないように、キャラクターに扮した俳優たちは、こどもの目線に合わせて挨拶をする。劇場は、いつも通う幼稚園や児童館の室内だ。大きなホールで、場内は暗くなり、椅子に長時間じっと座って居なくてはならないものとは真逆の空間と演出だ。
オープニングにアコーディオンやウクレレの音が響くと、子どもたちは自然と歌いリズムをとり始める。年齢に合わせた手遊びや体操は、子どもたちの笑顔を誘う。様子を探りながら、即興的にやり取りしていくのが、おはようシアター流だ。いつもの場所が、何が飛び出すのか分からない「おもちゃ箱」に変わる。施設の担当者は、口々に「45分もの長い時間を楽しそうに集中している子どもたちに驚いた」という。
活動当初に言われた「一度だけの支援なら必要ない」が、耳から離れない。岩手・宮城・福島の同じ施設に何度も足を運び演じた。活動から4年が過ぎた今、馴染みの施設から依頼が多い。劇場の「敷居を下げ」「扉を広げた」参劇が大人たちにも認められた。
今後の課題は「気軽に幼児親子が文化芸術体験のできる拠点をつくり、一緒に活動する仲間を増やすこと」と川熊さんは語る。
お問合せはTEL080-3145-6538(代表 川熊美貴さん) E-mail:ohayotheater@gmail.com
▲ かえるのおじいさんやひめ、あやねこのキャラクターと一緒におどる子どもたち
(大崎市 泉久恵)