全線がようやく復旧したJR仙石線の福田町駅(仙台市宮城野区)から徒歩10分。仙台の東部を流れる梅田川の堤防添いに「菅原動物病院」(同区福住町)がある。
病院の院長であり、福住町の町内会会長を1999年から勤めている菅原康雄さん(67)は、「防災・減災」を掲げた地域活動のリーダーとして地元を引っぱってきた。
災害が起きても「一人の犠牲者も出さない」を信念に2003年、独自の防災マニュアルを作成。行政に頼らず、住民同士の支え合いやほかの地域との連携に重きを置いた災害時相互協力協定などの活動事例を書籍『仙台・福住町方式 減災の処方箋』(新評論)にまとめ、今年4月に刊行した。
東日本大震災当日、梅田川にも津波が押し寄せた。幸い津波が堤防を越えることはなく、集会所に避難した住民には物資も行き渡った。10年以上の積み重ねで、個人が己の力で助かる「自助」、身近な人とともに助け合う「共助」の考え方が根付いていたからだ。
震災以前の8年間で、福住町町内会は大規模訓練を8回も繰り返していた。菅原さんが目指したのは「お祭りの減災」だ。夏祭りのようなイベントを通して住民同士や他の町内会のメンバーとの交流を深めておけば、いざというときに町内会の内でも外でも人と人が支え合える。お祭りのような楽しい交流を通じた、顔の見える関係こそ、有事の際の確かな命綱になるのだという確信が、菅原さんにはあった。
夢想は現実になった。震災4日目、以前から協定を結んでいた山形県と新潟県の町内会が、避難所となる集会所に救援物資を届けてくれた。交通網がまひしている最中の支援に「友がいる」と励まされた。
今年の防災訓練の開催日は11月8日(日)に決定している。「部外者大歓迎ですよ。ぜひいらっしゃい」と菅原さん。炊き出し訓練を兼ねたサバイバル飯も振る舞い、絆を強める。
地震、風水害、火山の噴火…。災害大国で備えが不要な地域はない。「自助・共助」に他の人たちへの支援「他助」がプラスされた福住町方式が広がれば「助かる命」は増えるに違いない。
▲2015年4月刊行の自著「仙台・福住町方式 減災の処方箋」を手にする菅原さん。「読んで頂きたいのはもちろん、ぜひ実践につなげてほしいですね」
(仙台市宮城野区 大林紅子)