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安井算哲とJ.S.バッハ [2012年10月16日(Tue)]





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"映画『天地明察』パンフより
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ジャン・セバスチャン・バッハ(1685〜1750)の「インヴェンション − 演奏例実記版」をピアニストの山季布枝(やまき・のぶえ)さんが出版しました。そして、それがドイツ・ライプツィッヒ・バッハ協会図書館に収蔵されたことを記念して、山季さんによる「バッハからの伝言」トーク・コンサートが日比谷の松尾ホールで行われました。

この人姉妹とはとても仲良しで、家族ぐるみのおつきあいをし、何度も演奏会に行きましたが、今回が私には一番印象深いコンサートでした。今までは、得意とされ、好評なトークに私はどうにもついてゆけなかったというのが実感でした。それが今回は音楽の授業を受けるようなコンサートだと始めから納得して出かけたこともあり、得るところ極めて大でした。

バッハとヘンデルが同年生まれというのは知っていました。しかし、ジュスティーニもスカルラッティも、つまり著名な作曲家4人が同じ年に生まれたというのは、初めて知りました。これは専門家には常識なんでしょうが、記憶に残る印象的なお話でした。

山季さんは第二部でその4人を弾き分けてくれ、時代と各作曲家の音楽的個性を教えてくれました。

実はそのあと、ふと思いつき、映画「天地明察」を上映している丸の内ピカデリーにjust in timeで飛び込みました。思いついたのは、あれっ、もしかしてバッハと「天地明察」の主人公である囲碁師であり、大和暦を考案した安井算哲(=渋川春海。岡田准一)は同じ時代の人かも、と思ったからなのです。バッハの生まれたのは1685年で、1750年に没しているのですから、タイトルを見ながら、その間の将軍はとなると(元受験生は名前が出てくるのです)五代将軍綱吉から始まって、家宣、家継、吉宗、家重なのを思い出しました。八代将軍吉宗はバッハの1年前に紀州で生まれています。

ところが違っていました。安井算哲、浅学菲才の私はこの人が1639年生まれで1715年に亡くなられたことを知りませんでした。つまり、バッハより46年早くこの世に生を受けた人なのです。算哲の時代は映画にも登場する、保科正之(松本幸四郎)、水戸光圀(中井貴一)のころであり、「鎖国」になってからの人なのです。算哲はまた関孝和(1642~1708)とも同時代の人です。

そして、そんな時に、日食や月食を予言する和算が(噂にも聞き、授業でも習いましたが)実際にこんなにも発達していたことに驚かされました。400年以上を経た21世紀の冒頭、それなりの高等教育を受けた「はず」の私には、そんな軌道計算なんて、文字通り、夢にも見ることのない超高等数学、魔術に近いものなのですから。

バッハもすごいですが、われらが先祖、日本の数学というのはずいぶん前から途方もなく発達していたのだなと、ただただ、驚嘆して、昨夜はしばし、眠れませんでした。