択捉島紗那の、日本時代からの郵便局。今は一層破壊が進んでいる。
柔道の山下泰裕というべきか、
東海大学体育学部長の
山下教授と呼ぶべきかはともかく、
この人が、朝日新聞(5月23日付)
「私の視点 北方領土問題
敬う心で引き分けめざせ」と寄稿している。
武人として、あるいは
優れた五輪金メダリストとして
尊敬する人なので、
しかと拝読させていただいた。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
北方領土問題を巡るプーチン大統領の
「引き分け」発言に、
私は同じ柔道家として
大変納得している。
日本はソ連、ロシアと60年以上
交渉を続けているが、
いまだ解決していない。
もはや大統領が言うように、
引き分けしか
落としどころはないのではないか。
日ロいずれの国民も同程度の
不満を残しながら、
決着を図るのである。
私は外交の専門家ではない。
ただ、両国が自国の主張ばかりして
譲らなければ、
この問題は永久に未解決ということは
分かる。
柔道の大事な精神に
「対戦相手を敬う」がある。
交渉においても自己の主張から離れ、
相手の立場を考えることが必要だ。
私はこれまで20回ほどプーチン氏と会い、
人柄や日本への好意を肌で感じている。
忘れられないのは、
2005年の来日の際の言葉だ。
プーチン氏が尊敬する講道館の
創設者、嘉納治五郎直筆の書を贈ったお礼の
食事の席で、氏は
「日本とロシアの間には昔からの
難しい問題が一つある。
逆にこれ以外は何もない。
別の問題を作ろうとも思わない。
両国が知恵を絞って解決したら、
障害はなくなる」と語った。
難しい問題、つまり領土問題の解決と
日ロ関係の強化への思いは、
今も変わらないと思う。
旧ソ連国家保安委員会(KGB)という
出自から、信用できないとか、
強権的とか言われることもあるが、
私の印象は違う。
2年前、首相府で会ったプーチン氏は、
私の「日ロの信頼関係が深まることを
期待している」という言葉に、
身を乗り出して「お互いにプラスになる形で
経済交流をやりましょう」と言い切った。
真摯(しんし)な態度に、
信用できる人だと確信した。
柔道も交渉も最後は人対人の関係だ。
プーチン氏は交渉の場では表情を変えず、
本心が読みにくいと聞く。
柔道やKGBで養った観察眼は鋭く、
当たり障りなく立ち回ろうとしても
うまくいかないだろう。
ロシア人は本音の言い合いを好み、
ぶれない人を評価する。
本気でかかることだ。
日本の姿勢が問われる。
日本へのロシア人の感情は
とても良いのに、
ロシアに対する日本人のそれは
最悪だ。シベリア抑留もあって
無理がない面もあるが、
そこにとどまるのは無意味だ。
プーチン氏はシベリアや極東の
経済発展のため、
日本の進出を期待している。
日本にも利益がある話だ。両国が
互いを尊重し引き分けを
受け入れることが、
国益にかなうと考える。
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基本的にこの意見は理解できる。しかし、
山下さん、あなたに期待するのは、
その日本人唯一のといっていい、
プーチン大統領との太いパイプの中で、
以下のメッセージを伝えることではないかと
愚考する。
@ 日本人は一致団結して、
ロシアが実効支配している北方4島の
返還を求めている。
A 4島は日本固有の領土である
にも関わらず、スターリンが間違えて
占拠してしまった。
B 4島の日本への引渡しによって、
日本のみならず世界はロシアを
法と正義を大切にする真の民主国家と
評価するであろう。
C この問題が解決すれば、
日露関係は抜本的に改善され、
それは両国の将来にとって戦略的に
もの凄く重要なものとなろう。
まさか、柔道では一方の選手が
不正を行っても
「引き分け」という結果には
ならないであろう。
そこが解らなくては、わが尊敬する山下さんは
「どこの国の人」ということになりかねない。