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国旗は時代遅れ? [2009年09月02日(Wed)]












「国際社会の行動主体が主権国家ばかりではない時代に、
国旗だ、国境だというのは時代遅れではないか?」

 時にそういう質問を受ける。

 最近の国際法は、
国際社会の主体を国家のみならず交戦団体(反乱団体)、
国際組織、NGO、多国籍企業などにまで拡大して論じている。

 その意味では確かに国際社会で活躍する主体は多様になり、
大幅に増えた。

 また、加盟27か国に増えたEUがその典型である。

 常設の議会を設置し、構成国間においては
相互に査証(ビザ)どころか旅券の携行も不要とし、
大部分がユーロという通貨を共有して「ユーロ経済圏」を構築し、
そのほとんどがNATO(北大西洋条約機構)という軍事組織に加入して、
統合演習を行っている。いまや欧州はボーダレス、
すなわち「国境なき時代」になったかのような印象を持つ人が
結構いるようだ。

 現代史において、もっとも国境が低かったのは、
戦後の東欧圏ではなかろうか。

 冷戦時代、「国際共産主義運動」の共通の利益を守ると称して、
1956年のハンガリー事件、68年の「プラハの春」、
80年代のポーランドの民主化の動きに対して、
ソ連はほとんど国境を無視した対応に出た。

 国境が低いということはこのように
覇権国家の侵攻に抵抗できないということを
歴史は教えているということだ。

 そして、89年には東西ドイツが統合し、
91年末にはソ連邦が崩壊してかつての構成国は15の独立国に分解し、
旧ソ連国家はあらたに自国の国境を高くし、
ロシアと厳しい関係の国々が多くなった。

 いまやどの国も国境を尊重し、領土問題を曖昧にしはせず、
積年の課題に、主権国家として国際法上のケジメをつけているからこそ、
EUは深化し拡大しているというのが実態だ。

 国境は、それが画定していればこそ低くすることが出来るのである。

 そうした基盤に立って、EU加盟国は、1つひとつの案件に、
国として真剣な取り組みをし、しのぎを削っているのである。

「欧州のための憲法を制定する条約(憲法条約)」の批准が
その好例であろう。

 2004年にEUの全加盟国の代表によりローマで署名されたが、
発効には加盟国全ての批准を要すると規定されている。
多くの加盟国では、議会における採決または国民投票により
批准されたが、フランスとオランダにおける国民投票では
批准が拒否された。

 これを受けて7が批准手続きを延期し、
今日に至っている。

 また、国境が低くなったからといって、
ドイツ国民がギリシャでの選挙で投票したり、
フィンランド人がスペインで立候補したりするということは出来ない。

 さらにまた、ドイツの義務兵役制度が嫌いだからと言って、
ドイツ国籍の若者が、数年前に志願制に移行したフランスの制度を
支持するから兵役を拒否するというわけにはいかない。

 その実、EU各国は、世界各地の大使館においても、
自国の国旗とEU旗を掲げている。そして、域外境界は
一層ガードを固め厳格化を図っている。

 個々の国の尊重と連帯、現代は、
日本でも世界でも多様な価値観による「個性」尊重が
重要とされる時代である。そして、普遍的な価値を創造し、
発見したりして連帯を強化し、
ともに人類共通の課題に挑戦することを必要としているのは事実だ。

 国旗や国歌に敬意を表し尊重するというのは
その間の巧みなバランスをとるための1つの手段として、
歴史という「円熟した大人」が考え出した社会的な知恵ではないか。
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