対人地雷問題 A [2006年10月04日(Wed)]
これは春先のひたち海浜公園。ベトナム戦争時、国際赤十字の代表としてかの国を走りまわっていた者としては、こういう広場に行くと今も、なんとなく地雷がありそうな気がして、まっすぐ進めないのです。 ところで、対人地雷についての今後の課題は、 @ 対人地雷全面禁止条約の普及と遵守の徹底、 A 既に埋設した地雷を国際的に協力して撤去・爆破すること、 B 2億個以上とも見られる貯蔵している地雷の破砕や廃棄、 C 埋設されている地域での地雷安全教育の実施、そして D 被害の被害にあった人々への支援活動などでありましょう。 これまでに同条約には151ヶ国が加盟していますが、アメリカ、ロシア、中国といった軍事大国や、インド、パキスタン、韓国、北朝鮮などが未だ条約に参加していません。しかし、これらの国々でも、生産を中止したり、輸出を停止したり、代替防衛兵器でカバーするなどして、条約の精神を尊重しつつあるのです。アメリカも2006年までに対人地雷を全面的に廃棄することを公約していますが、実際の進捗状況を発表してはいません。 日本はこうした条約未加盟国に参加を促すと共に、今後、開発途上国や旧ソ連圏などにおいて、貯蔵地雷の廃棄に物心両面で協力すべきではないでしょうか。ロシアは、自国の安全保障を考慮しながらも、地雷廃棄の費用負担に耐えかねて、当時のエリツィン大統領が一度条約参加を発表したにもかかわらず、原子炉の防衛に必要などと言って条約への加入には至っておりません。 もちろん、既に埋設された対人地雷の撤去は緊急課題です。地雷を撤去しないままでは戦火が止んでも、地雷の被害が相次ぎ、「平和の価値」が低いままといわざるをえないからです。 アフガニスタンではソ連軍、タリバン、北部同盟側が地雷を敷設し、アメリカ空軍による不発弾もかなりの数に上っています。アンゴラでも政府軍も反政府軍も大量の対人地雷を使用し、日本の3倍の国土でありながら、地雷の危険性のない地域は全土の3分の1に過ぎない状況です。このため私ども難民を助ける会では、隣国や各地に逃れた難民の帰還を前に、埋設されていそうな場所での危険表示の徹底、地雷安全教育の実施、そして被害者への支援が喫緊の課題であると考え、ボランティアを派遣して、活動しています。 また、ベラルーシは保有地雷が腐食するなどして危険な状態にありますが、廃棄を行う資金がなく、条約加入後4年以内の廃棄義務を履行できないでいます。「保有地雷ゼロ」の日本は、こうした国々やアジア諸国に、より強力に、貯蔵地雷の廃棄を働きかけ、必要な協力を行っていいのではないでしょうか。 『地雷ではなく花をください』と私たちが呼びかけた日本の地雷がゼロになったことは大いに誇っていいことです。しかし、今の日本はこれだけで「わがこと成れり」ではないより大きな国際貢献が期待されているのではないでしょうか。 国連機でイスラマバードからカブールに向うと、座席前の袋には、「対人地雷に細心の注意を!」という、難民を助ける会が各国語で作成した、絵入りのパンフレットが入っています。 同会は、1997年にノーベル平和賞を授与された、地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)の日本におけるリーディングNGOであり、絵本は、わが国の対人地雷政策を180度変更する上で、決定的な役割を担ったことで知られる。代表は、同賞の授賞式にも招かれた。 対人地雷全面禁止条約は1999年3月に発効、わが国も同条約を批准し、試験用以外のすべての対人地雷を廃棄した。同条約締結で中心的役割を果たしたとしてICBLとそのときのコーディネータである、ジョディ・ウィリアムズさんにノーベル平和賞が贈られたのでした。 そのICBLが今月発表した年次報告書によれば、対人地雷に関する基本データは以下の通りです。数日前にも以下のデータを紹介しましたことをお断りします。 対人地雷禁止条約加盟国数:151カ国・地域(前年比4増) 対人地雷保有国数:約50カ国 合計保有数:178,000,000個 この1年間の死傷者数:約7,300人 主な保有国:中 国=推定110,000,000個 ロシア=推定 26,500,000個 米 国=推定 14,000,000個 いずれも、地雷禁止条約に未加盟であり、製造する権利をはっきりと表明している国として、中国、インド、北朝鮮、韓国、パキスタン、米国、ロシアなど13カ国が挙げられています。 また、国内の反政府武装勢力が実際に対人地雷を使用している例として、ミャンマー(ビルマ)、ネパール(毛派)、ロシア(チェチェン)のナが出ています。 前年に比べ、死傷者数は11%増加しました。これは、かつての紛争時に埋設されたものが、和平後ないし戦闘地域が移動した後に爆発したケースに拠るものが多いのです。特に、チャド、コロンビア、スリランカで増えているそうです。 死傷した人が約7,300人とされているが、この報告書では実数はその倍以上ではないかと推測しています。 なお、以前に対人地雷で大怪我をした人が世界で350,000〜400,000人もいることには胸が締め付けられれます。しかも、その大部分が、非戦闘員なのです。 |