挿画「北岳」は、石田良介画伯のご厚意で掲載させていただいております。禁無断転載。
石田画伯が会長を務める日本剪画協会の協会展は24〜28日まで、東京・大崎駅前のO(オー)美術館で。入場無料。絶対のお勧め。
<大
>
第235回 東京財団・虎ノ門DOJO:
2005年度「日本にとっての難民・避難民対策研究」報告<提言1> 難民審査参与員制度発足など、難民認定・受け入れ制度の改善が行われたが、これはあくまで改善の百里の道の第一歩。今後、政官、メディア、社会が関心を低下させることなく、さらに難民を適正、公正に受け入れる体制を確立すべきである。
(説明)上の概要で述べてきた、基本的理念と方針を表した基礎提言である。まだまだ足りない、できていない、手つかずだ・・・といった問題がいっぱいなのに、関心が低下することへの懸念を表明している。
<提言2> 外国人についてあらゆるレベルでの教育に努めよ。在日韓国・朝鮮人問題60年、インドシナ難民問題30年を経て未だ外国人差別と偏見がある。家庭、学校、地域、職場で植民地時代を含む近・現代史、難民問題、異文化交流、多文化共生、民族・宗教問題などを、本格的に啓発し、教育しよう。 (説明)前年度には、「これまでに経験した定住外国人などの問題について、社会への定着・統合の観点から分析・評価する」という提言を行った。日本社会のこれまでの外国人受け入れ経験をもっと学び、もっと活かし、差別や偏見をなくす努力を強めたい。学校での難民問題や異文化交流についての教育なども、まだ非常に不足している。<提言3> イメージを変える。「難民」という語のとっつき難い、また差別的ムードを減らすため、「難民」に代わる適正な表現を考案しよう。とりあえず、難民との交流の機会や、難民に向けた役所の文書や学校生活の用語などでは、できるだけ「なんみん」とひらがな書きをしてみよう。
(説
明)イメージやムードは重要だ。研究会では、いろいろ議論したが、なかなか適切な言葉は見つからない。しかし、それを探す努力を社会に広げたい。当面、分野、場面によっては、ひらがな書きを用いてはどうだろうか、ということになった。<提言4> アジアの向こうにも目を向け、遠い国、文化的につながりのない地域からの難民ももっと受け入れよう。 (説明)東南アジアの一握りの難民申請にOKを出しているだけと批判される日本。実際、トルコ国籍のクルド人や、アジアでも中国の法輪功関係者の難民申請を認めたためしはない。中東、アフリカ、どこから来た人でも、申請があって難民条約に該当する者は、難民認定すべきである。<提言5> 難民認定による受動的受け入れに加えて、能動的なクオータ(割り当て)難民受け入れに取り組むべきだ。例えば、タイ領内の一時滞在施設(難民キャンプ)に長期間滞在しているミャンマー(ビルマ)難民などを一定数受け入れることを真剣に検討しよう。 (説明)前年度の提言でも一部言及しているが、日本に来て難民申請を出す者への認定のほかにも、国外にいる難民をクオータ制で引き受けることも考えるべきである。その対象がアジアにいるのであれば、なおさらだ。これまで、日本が受け入れ枠を設けて国外から難民を入れたのは、インドシナ難民だけである。そのインドシナ難民の受け入れは2006年3月で終わるので、欧米諸国と歩調を合わせ、アジアでの大きな人道問題になっているミャンマー難民の受け入れを早急に開始すべきである。<提言6> 難民審査参与員制度の一層の充実を図り、事案の迅速かつ適正な処理が行われるようにする。<提言7> 難民認定行政の客観性・適正性を一層強化する。そのために、その運用の改善、難民調査官に対する研修(UNHCRなどからの)など、難民認定行政の水準向上に尽力すること。(提言6と7の説明)難民審査参与員制度の導入が、難民認定手続の一大改善となっているのは間違いない。将来的には、難民認定のプロセス全体が法務省から独立した第三者機関の手で行われるべきだが、当面は、スタートしたばかりのこの制度、そして難民認定行政がさらに充実することが望まれる。<提言8> 仮滞在許可制度や仮放免許可の下での生存保障。難民申請者が現在置かれている生活環境全般を把握し、その生存が保障されるための具体的施策を構築すること。(説明)前年度の提言で、難民申請に対して最終判断が下されるまでの申請者の法的と生活保障の問題を掲げたが、法改正でその部分も少し対象となり、仮滞在許可制度が導入された。しかし、仮滞在許可を受けていない者はもちろん、仮滞在でなく仮放免だけの者、仮滞在許可を受けた者も、就労が禁止されている。これでは彼らは暮らして行けない。<提言9> 難民申請者の収容問題について。制度上・運用上の改善が進められているが、裁判中の申請者も含め、人身の自由の尊重の観点から、「難民申請者の収容は原則として避けるべき」とのUNHCR執行委員会の結論を尊重しつつ、その収容が長期に及ぶことのないよう今後も十分に留意すること。 (説明)日本での難民申請者を襲っていた収容の問題は、法改正で一部軽減されたが、認定を求める裁判の継続中にも収容される可能性は残る。だが、収容が長期にわたり、1年以上にも及んだりするのは極めて好ましくない。 (つづく)