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直径2米の地球儀 [2006年02月10日(Fri)]
 3月にモスクワで「第2回日露専門家対話」が開かれます。この会議は、1973年以来、通産24回目なのですが、昨年から少し趣旨を変えたので、第2回というわけです。この会議の道を開いたのは、「敬先生」とわが師・末次一郎です。ですから、きょうの「北方領土返還要求福井県民会議」での私の講演は、まずもって「敬先生」について触れさせていただきました。
 会場は、福井市の真ん中にある国際交流会館。一階ロビーに、直径2メートルという巨大な地球儀があります。「マンスフィールド地球儀」と名づけられていますが、寄贈したのは「敬先生」です。
往時、鯖江市の若泉邸には内外の賓客が相次いで訪れ、宿泊していました。マイク・マンスフィールド駐日米国大使もその一人です。民主党上院院内総務を確か14年も務めた米政界の大物がカーター政権の時代に駐日大使になっていました。ソ連共産党政治局員で一時はポスト・ブレジネフの有力候補とまで言われたポリャンスキー大使もそうです。農業担当のトップだったのですが、「日本に左遷」されたのです。何度か私もお目にかかりました。まさに冷戦最中の党幹部という感じで、正直、とても恐かったです。
折から、日中平和友好条約の締結が話題になっていましたが、「この条約ができたらソ連はどうするのか」という質問に、同席したデニソフ参事官がすかさず「北海道占領だ!」と悪い冗談をいうのを聞きながら、日本側出席者の顔をジロッと嘗め回すように見ていたし、何かというとテーブルを叩いて議論する人でした。
ほかにもコータッツィ英国大使をはじめ、有力な国々の大使ご夫妻が鯖江の若泉邸を訪れています。こういう形で国際交流を積極的に実践してきたのが「敬先生」でした。
今、福井県は中国の逝江省と、福井市はその省都・杭州と姉妹都市提携を活発に行なっています。幕末、横井小楠を招聘し、橋本左内が活躍して以来、福井県は人材の宝庫です。「住み易さ指数」とやらも日本一といわれていますが、なんといってもこうした国際交流の実績のすばらしさには驚嘆します。いろいろな国との交流の端緒を開き、盛り上げてきたのも「敬先生」とその仲間たちです。直径2メートルの地球儀に久々に対面し、「敬先生」の「志」が脈々と伝わっていることに、ある種の感動を覚えました。
「敬先生」の墓に詣でて [2006年02月10日(Fri)]
 福井県には空港がありません。以前はYS11が到着できる空港があったのですが、旅客を乗せるのはジェット機のみとなって、福井県に行くには小松空港(石川県)に飛ぶほかありません。
 空港には、山岸豊さんが出迎えてくれました。カメラマンであり、福井市内で写真機材販売のお店を経営している60代後半の方です。というより、国際政治学者・若泉敬先生の顕彰と遺品その他の保護者と言ったほうが適切かと思います。冬場の60キロの道のりをやってきてくださったのです。
 若泉先生−私たちは「敬先生」と呼んできましたが―は、10年前の7月27日に、亡くなられました。いわゆる戦中派の「憂国の士」ともいうべき方です。前の本欄では『他策ナカランコトヲ信ゼント欲ス』(文藝春秋社)の著者としても紹介しましたが、トインビー研究家でもあり、トインビーとの一連の対話は、一斉を風靡したほどもてはやされました。
 お墓は鯖江市の総山墓苑という高台にありました。山岸さんの手配ででしょうか、鯖江市がブルドーザーで除雪してくれたばかりの山道を自動車で登りました。そこにはおそらく世界でたった一つのデザインではあにでしょうか、地球儀のような球形の墓石があり、「志」という文字が一字だけ彫り込まれているのです。「志」は、「武士の心」という文字です。「敬先生」はその「志」を貫いた人です。遺言で、「全遺産を国際交流に寄付すること」にもしました。山岸さんはまったくの無償どころか、最優先にそのことに取り組み、完全な持ち出しで、友人の福井県商工会議所の鰐淵専務理事とその執行にあたってこられました。まさに「志」を持った方です。
「敬先生」の弟子の一人が、谷内正太郎外務事務次官です。出会いは、「中央線の電車の中だった」と、先月、谷内さんと食事をしたときに初めて聞かされました。なんでも、初めて出会ったときに、いきなり「キミ、そんな本を読んでいてはいけない。どうから通っている? それは遠い。ウチの部屋が空いている引越しなさい」といわれ、それ以来のご縁だとか。爾来、私淑し、薫陶を受けたのだそうです。(つづく)
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