中国の皆さんへ [2008年08月19日(Tue)]
![]() ![]() 五輪旗が中国の「五星紅旗」より大きく掲載されていることにはなんら政治的意図はありません。筆者のPC操作技術の未熟さによるものであり、ご寛恕いただきたい。 北京五輪閉会式まであと数日に迫ってきた。内外に多くの難しい問題を抱えながら、この大会が大成功裡に終わることを、末席ながら1964年の東京オリンピック以来、この国際行事に関わってきた者として、何よりも期待し、祈念している。 私は東京五輪に際し、組織委の最年少職員であった。当時、わが国には国旗の研究家はほとんどおらず、私は早稲田大学の一学生に過ぎなかったが、外務省、日赤、ユネスコ協会連盟などから私の知らないところで、組織委に推薦があったようだ。 国旗担当専門職員という立場で、使用する各国の国旗についていかなる間違いも起こらないようにと、文字通り、日夜、努力した。そのあたりの事情は、同年正月に読売新聞で2日間にわたり、「社会部記者」だった故・本田靖春さんが書いて下さっている。 爾来、札幌、長野の両冬季五輪、さらにはサッカーW杯でも参加国の国旗づくりやその掲揚に関わった。逸話はいくらでもあるが、今の私は、北京大会が国旗に関わるトラブルで混乱しないよう、見守っているところである。 旗は布製が普通なので、いかに警備を厳しくしても、あらかじめ着込んだり腹に巻いたりしていれば、検問でも容易に探知できない。そこを狙って、チベット、台湾、新疆ウイグル(東トルキスタン)の旗を翻したりという事態もありうるというのは、あながち杞憂とはいえまい。 東京五輪以来、私たちが国旗について最も気をつけたのは次の5点だ。 @ 非友好国の国旗を引き釣り下ろす、 A 逆さまに掲揚する、 B 似た国旗を取り違えて掲揚する、 C デザインを誤ったり、国旗の変化に気付かず掲げてしまう、 D 汚れたり破損したものを使用する、 といったことのないように、調査に2年を費やし、点検を繰り返し、留め金を工夫し、掲揚の訓練を行い、表彰式には原則として私が立ち会うという2重3重のチェックを行なった。 国旗は本来、国家の象徴、権威の象徴、そして友好と国際理解の象徴であるから、ゆめ粗末に扱ってはいけない。 古くは1958年5月にあいついで起こった長崎国旗事件(「中華人民共和国」の国旗を右翼が引き釣り下ろしたが、当時は未承認国なので国旗とみなされず軽犯罪に終わったことが、貿易の停止にまで発展))と、第3回アジア競技大会で主催国日本が中華民国の青天白日旗を逆掲揚して大問題になった。 その後もエリザベス女王の来日時や各種スポーツ大会での英国旗の逆掲揚など、国旗に絡む間違いではらはらさせられるのは、昨今でも枚挙に暇がないほどだ。 今のところ、北京五輪での国旗の製造・掲揚についての許容しえない大きなミスはないようだが、関係者は大変な努力で「加油」していることなのだろう。 北京五輪についての心配はもちろん国旗ばかりではない。私は東京大会の中日に、中国が初の核実験を行なったときの、IOC(国際五輪委員会)や組織委の怒りと落胆振りを昨日のことのように覚えている。 現下の国際情勢もグルジアでの武力衝突をはじめ、楽観を許さないのは周知の通りだが、日本や周辺諸国、さらには世界のどの国でも、本来の五輪精神である平和と友好の希求という意義を忘れないでもらいたい。 あらためて北京五輪関係者の労を称え、大会が本来の目的に沿った形で開催されることを祈る。 そしてまた、中国のみなさんがこのオリンピックへの国際社会の評価は、自分たちと少し違っているようだということを、気付いてほしい。 それは単に、「口パク」、CGの「花火」、民族衣装の<偽装>ではなく、チベットや新疆ウィグル(東トルクスタン)での人権抑圧という、国家そのもの、治世そのものが<偽装>ではないかという、厳しい声が世界にはあるのだということを知ってほしいということだ。 |







