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吉崎達彦と言う学兄 [2008年04月11日(Fri)]










 双日研究所の大黒柱である吉崎達彦氏は、私が最も尊敬する「若手」専門家である。

 何の? と聞かれそうだが、経済も金融も安全保障も、そして何より?プロ野球の専門家でもある。

 ここ数年、つまり私が東京財団研究推進担当常務理事をし、ユーラシア21研究所の理事長になってからも、少なくとも毎月1回は研究会で議論を重ね、去年は吉崎氏は東京財団の「日台次世代対話」の日本側団長であり、私は顧問として台湾に同行した。

 今朝ほど、先日、トヨタ財団で吉崎さんが「研究会の効用と作法」というテーマで行なった講演(報告?)をまとめたものをおくってくださった。なんとも謙虚な方なので、

「吉崎の個人的なシンクタンク経験と勉強会経験を語った私小説みたいなものですが、意外と好評だったので当日の議事録を仲間内の皆様におすそ分けいたします。
ご笑覧いただければ幸いに存じます」
との添え文が付いていた。とんでもないことで、さっそくわがスタッフは謝金の新券にすべく、銀行に走った。

もっともその謝金、月例の「虎ノ門政治外交懇話会」の講師謝金であり、吉崎さんはそのメンバー。所用があってきょうは欠席だった。この研究会の参加者は政、官、学、外交関係、評論など各界で活躍する超豪華メンバー。老若男女。

いっさいオフレコで、内外情勢を分析するもの。きょうのテーマは「安全保障―東アジア各国の弱点と盲点」の分析のようなことをしている。近く、次世代をドンと加え、伊豆で合宿研修もする。

次世代の育成はユーラシア21研究所の大きなテーマであり、約30人が全体討議、多数の分科会(内1つは英語での討議)となりそうだ。吉崎氏からも参加するとの返事が来ている。

それはともかく、吉崎氏の講演録、拝読すると実にすばらしい内容なので、特に、東京財団と関わった部分について、諒解を得たので、以下に、公開させていただくことにした。

  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

        (前    略)

2003年に、中央大学の坂本正弘教授が、「日本版のネオコン集団を作ろう」などと妙なことを言い出した。イラク戦争などの国際情勢の変化に対応し、安全保障政策を語る若手集団を作ろうというのである。「君も人集めを手伝いなさい」といわれて、お安い御用とばかりに協力した。

幸いなことに、東京財団から資金と場所の提供を受けることができた。それにしても「日本ネオコン」はまずいだろうと言っていたら、東京財団では「若手実力者による日本の総合安全保障のあり方に関する研究会」という大袈裟な名前がつけられてしまった。恥ずかしいので、内輪では「若手安保研」と称していた。

「若手安保研」の座長を引き受けることになり、今までに得たいろんな研究会のノウハウを生かすことにした。以下、具体的なヒントをご紹介しよう。

@ まず、志を同じくする人を集めること。岡崎大使がよく言う”Like-Minded People”である(ネイティブスピーカーには、「そんな英語はない」といわれるのだが)。つまり考え方が違っても構わないから、集団としての方向性が共有されているかどうか。保守かリベラルかなどといった違いは、それほど大きな問題ではない。それよりも同じテーマに対して熱中できるかどうかが重要。根本のオタク気質のようなものが共有されていればよい。

A その中で、メンバーに多様性を持たせること。長続きする勉強会は、2つくらいのグループが融合してできたグループであることが多い。「なんでこの人が参加しているのか、よく分からない」という人がいるくらいだとちょうどいい。

B 座長は一人でない方がよい。「若手安保研」の場合、司会やロジなどの実務は自分がやったが、精神的支柱として坂本教授と吹浦常務理事が後見してくれた。研究会の場合、むしろリーダーは強力でない方がいいと思う。

C ロジは非常に重要だと思う。例えば弁当。東京財団のスタッフに無理を言って、弁当の単価を上げてもらい、弁当屋も毎回変えてもらった。たまたまスタッフの人が元政治家秘書で、その辺の飲み込みが早く、非常に助けられた。くだらないこだわりとしては、講師謝礼や会合のお車代にピン札を用意したこと。公私混同して、自社の社員に頼み込み、会が続いた3年間の間、ずっとピン札を用意してもらった。どんな効果があったのかはわからないが、重要なことだったと思っている。

D 次はカナリア。これはいい質問をしてくれる人のこと。できれば女性がいい。会合の空気を読まずに、誰もが当然だと思っているような根源的な問題点を問いただしてくれる人がいると、議論の緊張感が変わってくる。昔やっていた勉強会で、カナリアというあだ名の女性がいた。その心は、「炭鉱のガス事故を検知するカナリアのように、話が分からなくなると真っ先に音を上げてくれる」から。彼女がいるときといないときでは、議論の深さがまるで違っていた。

E それから、新しいメンバーを定期的に加えること。成功している研究会には「俺も入れて」という人が出てくる。彼らが古いメンバーを刺激してくれる。東京財団の研究会では、ワシントンに長くいた渡部恒雄氏がタイミングよく帰国したので入ってもらったり、新橋の飲み屋で意気投合した中国専門家の田代秀敏氏を招いてみたところ、2005年の反日デモを面白く読み解いてくれたり、新規参加者に大いに助けられた。研究会は、中心人物がどんどん入れ替わるような状態であるといい。

F 研究会が失敗するのは、得てして嫌な人が入ってくるとき。変な目的を持って参加する人や、独演会になるような人が増えると、研究会は駄目になる。そういう人は、排除しなければならない。おそらく小川さんも、新たなメンバーをリクルートする一方で、「お前はもう来るな」と舞台裏で言っていたのだと思う。自分も不本意ながら、それに近いことをやったこともある。それでも、もともとのメンバーの雰囲気が良ければ、嫌な人は自然に来なくなるものだと思う。

    (中    略)

Q3:研究会の効用は?

東京財団の若手安保研では、成果物として二つの報告書(総合的安全保障、パブリック・ディプロマシー)を出すことができた。特に後者は「自信作」である。しかし、報告書というのは研究会の成果のほんの一部だと思う。効用は見えにくいし、シンクタンクの活動はいわゆる成果主義では計りにくいところがある。

東京財団で口癖のように言っていたことは、「虎ノ門を日本のマサチューセッツアベニューにしよう」。ワシントンのマサチューセッツ通りはシンクタンクが集まっているところで、情報の集積地である。日本ではたまたま、虎ノ門界隈に安全保障関連のシンクタンクが集中している。

だから、海外の戦略家が日本の方向性を知りたいときは虎ノ門に来ればいい。午前中に東京財団のセミナーに出席し、国問研の誰かとランチをして、午後は岡崎研に立ち寄る。そういう経験を通して、日本がどこに向かうかが見えてくる。シンクタンクはひとつだけでは駄目で、たくさんあった方がいい。そういう集積を作ることが、究極の目標である。
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