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アリラン、魂を揺さぶる名曲 [2008年01月30日(Wed)]




 シューベルトの『菩提樹』、ブラームスの『子守歌』、ヴェルディの『乾杯の歌』、など、ヨーロッパの歌曲には3拍子の名曲がたくさんある日本の抒情歌には、明治になってから作られた西洋音階の歌の中に、時に3拍子の名曲がある。

 しかし、ここではまず、韓国の3拍子の歌について書くことからはじめたい。

『アリラン』は魂を揺さぶる歌である。

朝鮮半島の人たちがこの歌をどんな思いで聴くか、歌うか、演奏するかについてはいろんな友人・専門家から話を聞いたが、最終的に、「日本人(イルボンサラム)にはわからんと思うよ」といわれてしまう。

東洋でも、朝鮮半島の曲には、日本でもよく知られている『アリラン』や『トラジ』のように3拍子の曲が多い。

同じ3拍子の英国国歌『God, Save Our Gracias King(女王在位の場合はQueen)』も早くからさまざまな替え歌になって、同半島全体で愛唱された。独立回復後の韓国の歌にも「サランヘタンシヌン(愛するあなた)」の歌詞で始まる『愛するマリア』をはじめ、大流行した歌謡曲調のものにも結構、3拍子の曲がある。

『アリラン』はどこの峠を歌ったかは必ずしも明確ではないまま南北分け隔てなく愛唱され、日本にも多くの愛好家がいるし、今ではこの民族の象徴ともいうべき歌となっている。

さらに、全羅道の『珍島(チンド)アリラン』をはじめ各地に、いずれも3拍子ではあるが独自のアリランの歌があって、愛唱され、演奏されている。実際には、朝鮮半島に「アリラン」という名の峠がないというのも、想像力が働いていい。

私が最近読んで感動した本の1つに、赤羽礼子・石井宏共著の『ホタル帰る』(草思社)がある。

2001年には高倉健の主演で映画にもなった。知覧(鹿児島県)の特攻基地の近くで軍の指定食堂を経営する鳥浜トメと出撃を控えた特攻隊員との実の母と息子のようなやりとりを描いたものだ。

トメは「特攻隊員の若者たちを無私の愛と責任感で包み込んだ女性」と山内昌之東大教授は日本経済新聞(2002年8月26日)に書いている。

その第7章は当時の朝鮮人・光山文博(卓庚鉉)少尉のこと。

出撃前夜にこの歌を歌い出した。「光山の調子は、聞いたこともないほど悲痛なものであった。ゆっくりと、しぼりだすように歌っている。

一緒になって歌っているうちに、トメも娘たちも悲しくなって、歌はそっちのけで、わあわあ泣き出してしまった」。

映画ではこの後、『故郷の空』(スコットランド民謡)が、光山の締め付けられた心に昂然と愛郷心を呼び起こすように流れる。

戦後、トメは日本や韓国で光山の遺族を捜し求めたが、1992年に89歳で亡くなった。95年になって韓国のテレビ局が遺族を探し出し、娘である赤羽礼子に知らせ、対面が果たせた。

これが映画のラストシーンとしてさらなる感動の涙を誘う。駐日韓国大使館でも上映され、大使以下の館員も目を潤ませて鑑賞したとのこと。

この映画は日韓両国の新しい関係構築に一役かっているのかもしれない。

『アリラン』の歌は韓国で幾度も聞いたが、いつも感動させられる。

また、歌う人によってかくも違う情感が出せるものかと思うほどの名歌名曲であり、日本人である私も魂を揺さぶられる思いがする。

これからも朝鮮半島全体で歌い継がれることであろう。
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