南京事件への取り組みI [2008年01月05日(Sat)]
![]() 2006年3月、私は東京財団の片山調査役とともに上海と南京を訪れた。 私は中国の専門家たちを前に、 「戦闘員が戦闘員を殺害したら英雄、戦闘員が非戦闘員を殺したら殺人犯なのである。仮に南京で非戦闘員が戦禍で亡くなったらこれは大変遺憾なことであり、詫びるほかない」 といった立場と趣旨を明確にして、 お互いに胸襟を開いて話し合おうと呼びかけた。 同様に、 「日米戦争においては、米軍の空爆で東京、広島、長崎、その他で数十万人もの民間人が殺害された。これは当時の国際人道法に照らして明らかに戦争犯罪であると確信するのはいうまでもない」 とも伝えた。 中国側もそれに素直に対応してくれたと自負している。 上海では程兆奇研究員と、南京では張連紅教授とお会いした。お二人とも、学者としては少壮ないし中堅という世代に入るのかもしれないが、現代史研究の専門家であり、責任ある地位を持っている人である。 程研究員は、 「ここにあるように」と膨大な量の文献を示しながら、 「日本人の手になる南京事件に関する既存の文献はほぼすべて目を通した。中国側資料としては、自分も編纂に加わった『南京大屠殺資料集』(張憲文編集、鳳凰出版社・江蘇人民出版社、全28巻)がある。この問題を理解するには、資料に基いた議論が重要だ。中国では民族的感情に基いた議論をする研究者が多いが、自分はあくまでも中立の立場で学術的見地から議論する。最近若者の間に反日感情が高まる傾向があるが、彼らに最も重要な点は歴史問題をよく勉強することだ。まず結論ありきの研究ではなく、資料の検証から結論に達するのでなければならない」 と述べ、 「政治的観点ではなく学術的観点に立つことが重要と思う。南京事件で何人の中国人が殺されたか、それが合法的であったか非合法的であったかというような議論では、侵略した者の立場と侵略された者の立場の違いがあるので、判断が難しい」としつつも、「研究者としては<何人殺されたか>ではなく、<史料から確認できる限り何人か>という議論しかできない。資料から見る限り、30万人は多すぎる」 と述べた。 面談のため私が案内された場所は、程研究員の「自宅」ということだったが、やや高級な集合住宅。全体が書庫という感じで日本の各種総合雑誌と学術書がずらりと並び生活臭が全くしない。 家族もいない。案内したのは、かつて東京財団に研究員として滞在した明らかに情報筋の人。こうした人を前にしての発言であることに、中国共産党ないし中国政府の対日姿勢のある種の変化を感じないわけには行かなかった。 |






