ハワイでの国際会議F [2007年10月19日(Fri)]
第5は、「北の隣国」ロシアとの関係です。 2008年7月には日本の北端である北海道でG8の洞爺湖サミットが開催されます。 冒頭にも述べましたように、わが国とロシアとの間には平和条約がなく、国交が正常な形にはなっておりません。 ドイツとロシアにも平和条約という名前のものはありませんが、両国間はそれに変わるあらゆる手段によって、正常な外交関係と協力関係が進められております。 われわれは政府のみならずシンクタンクレベルでも1973年から25回もの専門家会議を開催し、北方領土問題をプラスサム・ゲームによって解決しうるとロシア側に働きかけてきましたし、今も、ロシア語でのHPによって、ロシアの各界各層の理解を促進し、領土問題の解決を呼びかけていますし、さまざまな国際会議を開催して、ロシアの指導者たちに影響力を発揮しようとしています。 昨今の原油価格の高騰でロシア経済が表面的には活気を見せております。 しかし、現実にはシベリア、極東方面では著しく人口が減少し、また、産業の停滞が目立ちます。国民が投機に走り、ものづくりを怠るという傾向は、ロシア経済にとって決して好ましいことではないはずです。ロシア社会が再びソ連時代のような治安機関優先という社会傾向を増しつつあることも懸念せざるを得ません。 当面注目すべきは、来年3月に行われるロシアの大統領選挙と5月からの新大統領の就任でありましょう。あの広大な国は、しばしば最高権力者個人の性格や好みで国政が大きく揺らぐからであります。 かなり以前から、イワノフ、メドヴェージェフ両第1副首相ややそのほかの名前が挙がっておりましたが、最近は新たに首相に任命されたズーブコフ氏が有力だとか、ズーブコフ氏が就任してほどなく降板し、再びプーチン氏が大統領になるとか、また4年後のプーチン再登板や憲法を改正してのプーチンが実質的な権力を維持する案等がまことしやかにささやかれています。 いずれロシア人は、エネルギー資源に偏在する自国経済の底力のなさ、工業生産技術力の低迷、人口移動、労働力不足に基づく中国からの人口圧の厳しさをしかと自覚し、国際社会においてバランスの取れた国になるべきであると新たな努力を始めるのではないでしょうか。 日本としては、北方領土問題であせることなく、矜持を保ちつつチャンスを見計らうというのが最善の策であると確信します。 |