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NGOの特質と手法 [2007年04月27日(Fri)]








 1997年、対人地雷全面禁止運動ノリーダーとしてノーベル平和賞を授与されたジョディリアムズさんと。2006年4月、早稲田大学での講演を前に椿山荘の庭園を散策したとき。
ジョディはパソコン1つで世界を動かしたといっても過言ではない。




 
 拙著『NGO海外ボランティア入門』を引っ張り出し、加筆修正して、NGOの特質ないしそれゆえの心がけるべき手法について前回の続きを書きたい。

 第3は、マスメディアの協力であるが、これにはもちろんNGOが直接マスメディアを持っているわけではなく、取材や記事化について強制力がないという限界がある。しかし、人的なつながりとともにインターネットによる発信の拡充は、この限界に大きな風穴をあけることになるのではないか。

 NGOの手段の第4は、国単位の外交では接触しにくい相手との関係を持てる、つまり、NGOは、国益中心のGO(政府機関)と違い、“人類益(人類共通の利益)”に立つことのできるので、政府の枠を超えて、国際的な協力ができるということである。確かに、NGOは国益より“人類益”“地球益”を考える道義外交を展開できる。

 特に、近年、武力紛争が主権国家単位に行われないことが多くなり、国の威信やそれまでの政府への信頼が低下する傾向が多く、NGOの役割やNGOへの期待が大きく浮上している。国連やASEANといった地域機関、政府機関などは、反政府団体、反政府勢力とは接触しにくいからだ。

 私自身、ベトナム戦争の終盤にICRC(赤十字国際委員会。スイスのNGO。25名の委員は全員スイス国籍)の駐在代表として北ベトナム軍やベトコン(南ベトナム解放民族戦線)勢力と接触を持ち、NGOならではとの実感を強くした。

 しかし、一般的には、ビザの取得、事務所開設の許可、無税による機材の搬入、通路の安全など、現実の主権の壁をどう克服するかが、少なからぬ課題だ。

 それでも、わが国にもチェチェンとの関係で一定の成果をあげ、予防外交の研究で成果を挙げ、99年6月、「日本予防外交センター」を立ち上げ、早速、人材育成に取り組む日本国際フォーラム(現在はまったく別組織)、旧ユーゴから北朝鮮問題にも取り組む日本財団、日ロ関係の改善に多年、役割を担っている安全保障問題研究会などさまざまなNGOがあるが、赤十字にあきたらず分離してできたMSF(国境なき医師団)、国際援助NGOとして世界最大の予算規模を有しているOXFAM、緊急時の予防外交のみを主眼とするインターナショナル・アラート(英)、アフリカのほとんど全部の国に支部を構え、知恵と工夫で平和と和解を目指しているサーチ・フォー・コモン・グラウンド(米)、NGOの特性を生かして積極的な予防外交にあたり、紛争発生後には、その解決に努めるアコード(南ア)、元米国大統領の信頼と力を背景にしたカーター・センター(米)、国連の平和外交を実践し、人材の育成にもあたっているピアソンPKO訓練センター(カナダ、ノーベル平和賞受賞NGO)は、この意味で世界に範たる活躍をしているNGOといっていいだろう。

 なお、海外NGOと紛争処理やPBOの実態については、クマール・ルペシンゲ(吉田康彦訳)の『地域紛争解決のシナリオ』(スリーエーネットワーク)、首藤信彦東海大学教授の「ピアソンPKO訓練センター研修体験レポート」(「外交フォーラム」98年8、9月合併号)を参照されたい。

 第5は、同様の理由で、同じ理想、志を持つ人々との人脈がNGOの力の源泉であるということだ。NGOにとって大きなカードは長期間にわたる活動で築いた内外の政、財、官、学、言論、女性、青少年、宗教、労働、法曹等各界の有力者との濃密な人的関係、人脈である。人脈は信用となり、NGOの宝である。

 6番目は、NGOならではの融通無碍(柔軟性の高い組織)な点である。臨機応変、キメ細かさ、柔軟な発想と考え方が、人道的救援・支援活動や国際協力活動の推進には特に必要である。これが時に「国」や「官」と衝突する場合、ないしは齟齬を来たす場合もなしとしないが、NGOにとって融通無碍は運営の基本であるといっていい。


■資料リンク
NGO・海外ボランティア入門―難民を助ける会20年の軌跡から
NGO・海外ボランティア入門―難民を助ける会20年の軌跡から
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