本プログラムに参加しました、猪又弘毅です。
福島視察を通して感じたことを少し書かせていただきます。
視察内容については前の記事にありますので、ここでは参加した一人の若者として感じたこと、考えたことを思うままに記します。
私は23歳で、震災以降脱原発を実現するため再生可能エネルギー(以下、再エネ)に携わってきました。
まず本プログラムを通して強く感じたことは、福島について、そして放射能被害について自分が何も理解していないということでした。
そしてもう一つは、日本では再エネの普及と脱原発運動、脱被ばく運動は同じゴールを目指しているにも関わらず、実際には一つの ”文脈” では語られていないように見えることがあるということです。
つまり、ドイツの再エネの歴史や現在行われている様々なイベントを見ても、「なぜ原子力は不必要か」という証拠を用いた理論的かつ倫理的な議論が徹底的に行われ、その流れで脱原発への代替ソリューションとして自然エネルギーが提案・実行されているように感じます。
一つの根拠として、今回参加したドイツの市民団体「核の脅威のない世界のための市民団体」も、ベラルーシからの保養受け入れの活動を行ってきたと同時に、再生可能エネルギーにスポットを当てた人材育成や若手交流プロジェクトも行ってきています。
どちらも大事。どちらも理解する必要がある。
このような自然なアプローチがドイツでは見られると感じます。
しかしながら日本の場合「再エネは再エネ」「脱原発は脱原発」(脱被ばくも)とそれぞれ別々の場で議論が進み、互いに交流するような場が少ない印象を受けます。
実際、持続可能な社会を志している若者で、どちらも包括的に理解している方がどれほどいるかは疑問です。
私自身、本プログラムを通じて自分自身のその「偏り」に気付かされました。
今回、放射能の“被災地”を訪れた際に、終始なんとも説明しがたい思いが胸の中にありました。胸の中に鉛のようなざらざらとしたものがひっかかっているような。
私は宮城県の仙南地域という福島寄りの地域で育ちました。
福島の被災地は私の育ったいわゆる東北の田舎の世界にそっくりでした。
畑があり、田んぼがあり、林があり、庭のある家々と、サビの生えた商店の看板。
その見慣れたような景色の中に、ぽかんと見慣れない大きな黒い袋が
いくつもいくつも丁寧に積み重なって置いてありました。

車内では、福島県・富岡町から茨城県・水戸市に避難をしている木田節子さんが運転をしながら様々な「真実」の話をしてくださいました。
あの日から福島で何が起こってきたのか。木田さんの人生がどう変わったか。
恥ずかしながらほとんどが知らない話であり、木田さんのお話と外を流れる福島の景色に、一瞬でも気を抜いたら何かが溢れそうで、ドイツの方々への通訳に躍起になっていました。
福島は桜が満開の時期を迎えていました。
訪れた花見山の桜や菜の花もただただ見事で、線量の高さも一時忘れる程でした。
その時に一緒に歩いたドイツの女の子がつぶやいたのは、
「すごく美しく、すごく悲しい。」という言葉でした。
一生懸命咲く桜と、未だ高い線量。
動かない政治と、強く生きる福島の方々。
感動と悲しみが常に混在している、そんな滞在でした。

私の実家は福島第一から丁度100kmのところに位置しています。
これまで親と放射能について真剣に話をしたことはありませんでした。
もちろん放射線の数値も知らないと思います。
(親の生活はどうせあの地で続いていく… たとえ放射線が高いと分かっても…だったら今更伝えることにどんな意味があるのだろう…)
というのが率直な思いでした。正直を言えば今でもこの疑問はあります。
しかしながら、今回のプログラムに参加して、その考えが少し変わりました。親と話し合ってみようと思います。
生活を変えるということに繋がらなくても、今回の経験について話し合うだけでも前進なのだと思います。
私は、脱原発を実現する為にはいろんなアプローチがあっていいと考えています。
しかし、それぞれが決して対立することなく、ネットワークを築き、互いに理解を示すことが大切です。
そのためには、他の参加者がイベントで言っていましたが、
まずは「知ること」。
そして「言葉にすること」が求められていると感じます。
さらに言えば、若者と女性をもっともっと巻き込むことが脱原発へのさらなる加速につながると思います。
今回福島で闘っている人たちの声を聞けたことが、僕の「知ること」に繋がりました。
これからはさらに理解を深めつつ、発信を心がけ、福島のために自分のフィールドとの結びつきを模索していきます。
福島から遠い美しい土地で、自然エネルギーなどの環境教育を交えて、福島の子どもたちが楽しめる保養プログラムができるんじゃないかなぁと、
福島からの帰りの新幹線の中で漠然と考えていました。
(猪又 弘毅)
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チェルノブイリから28年〜日独ベラルーシ経験共有(1)ベラルーシの経験
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https://blog.canpan.info/foejapan/archive/185●参加者のプロフィール、発表資料、映像はこちら
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