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「地域共同節電所」をつくろう!〜節電所のしくみと実践〜開催報告 [2014年12月08日(Mon)]

image.jpgFoE Japan
11月末からインターンをしている青柳です。11月29日、関西学院大学総合政策学部教授の朴勝俊先生による、セミナーに参加しました。震災以降注目度が高まり続ける「節電所」について、これからの日本とエネルギーのあり方について考えました。
 
「節電」という単語を耳にして、皆さんが最初に感じることはどんなことでしょう。
私は、明かりはこまめに消すこと、エアコンを点けたままにしない、そのようなことしか、頭に浮かびませんでした。しかし、今回のお話を通して「節電」に対する考え方が大きく変化しました。
 冒頭に朴先生は、「日本での原子力発電は、ロシアンルーレットを続けるようなものだ」と強烈な一言で始まりました。私たちは原発の危険性を身近に感じたはずです。それでも何故、原発を続けるのか。何故、原発を再稼働するのか。問題の根底にあるもっとも見えやすいものとして「埋没費用(sunk cost)の呪縛」があります。つまり、政府が原子力につぎ込んだ金額があまりにも大きく(たとえば、もんじゅに1兆円)引くに引けない状態になっている、また引き返すためにもコストが非常に大きいということです。しかし、再稼働の理由として経済的な判断があるとするならば、事故が起こった場合の社会的・経済的リスクも莫大になるということは容易に想像できるはずです。
 では、日本がこれから原発なしでどうすればいいのでしょうか。中々、思いつきません。
しかし、日本でも2011年8月に「再生可能エネルギー特別措置法」が成立し、2012年7月からすでに施行されています。私たちにとってまだまだ馴染みが深いものではありませんがモデルケースであるドイツではどうでしょうか。
実は、ドイツでは発電量の実に30%近く(2014年)を再生エネルギーが占めており、15.4%の原子力発電を大きく上回っているのです。

でも、再生エネルギーと聞いて、代表的な風力発電や太陽光パネルについて、風が吹いていないと発電できない、天気のいい日しか発電できない、と思われる方も少なくないと思います。私自身、再生エネルギーは不安定なものであるという認識は根深いものでした。しかし朴先生は、それは古い考え方であると言います。スペインや欧州では、電力市場と国際電力取引、揚水発電所などで需要と供給を調整し、再生可能エネルギーを「ベースロード電源」として使っているのです。

本題に戻ると、原発の再稼働は真に我々にとって必要なのでしょうか。朴先生はエイモリー・ロビンズのソフトエネルギー・パス(1977)についてお話しくださいました。空調や冷凍機器で使用される中温・低温熱需要を石油や原子力で満たすのは「バターを切るのに電気鋸を利用するようなものである」、つまり私たちが使用する電力を効率化し、整理することで「ソフト技術」に代替えしていくという考えです。IEA(国際エネルギー機関)が本命とする温暖化対策もまた、「省エネ」であり、「省エネ」により創り出されるエネルギー量は原子力+再生エネより規模が大きいと予測されています。

朴先生は「節電所は発電所と同じ価値を持つ」ということをくり返し強調しました。最初、私にはあまり実感のわかないものでした。しかし、節電所の語源であるネガワット(*)についての考え方は現代のエネルギー問題について実に合理的な考え方だとわかりました。

例えば、消費電力200Wの冷蔵庫を、同じ性能で100Wの冷蔵庫に買い替えると、100Wの「節電所」を建設したことになる。この100Wの節電所を1000万世帯が導入すると100万kWの巨大節電所となる。この例えは、非常にわかりやすいものです。
 では、その節電所はこれからどんな形で作ることが出来るでしょうか。
例えば米国では、電力の需要に合わせて価格を調整し、価格が上がれば需要は減るというしくみによって停電を防止しています。この需要応答(デマンドレスポンス)という方法で、必要な場所に必要な量だけの取引ができるようにしているのです。米国には現在、家庭から大規模事業所まで合わせて原発50基分(約50GW)の「節電所」が存在しているということです。

 お話の最後に、私たち市民が主体となるエネルギーサービスの社会像をお聞きしました。現在、環境ふくい推進協議会「エコプランふくい」さんが「福井市民共同節電ファンド」という取り組みを行っています。ファンドという言葉からわかるように、出資を集い省エネ設備で生まれた「利益」(節約費)によって返済するシステムです。福井市内にある商店街では、電球をLEDライトに転換することでかかる費用500万円を一口15万円で出資を募り、電気料金削減分によって5年間で回収、返還します。つまり、初期投資を必要とせずに社会的な設備節電システムを促進することが可能なのです。これからエネルギー問題と対面し続ける私たちが、理想としなければいけない形なのかもしれません。
朴 勝俊先生改めて御講義有難うございました。

「青柳 喜大」
<参考>
*ヘニッケ/ザイフリート、朴勝俊訳『ネガワット 発想の転換から生まれる次世代エネルギー』省エネルギーセンター(2001)http://urx2.nu/eZuF
*朴さんが「活弁」しているお勧めの映画
映画『エネルギーシフトを生きる』前編http://www.youtube.com/watch?v=YukMcIbNXnM
後編http://www.youtube.com/watch?v=Wdp3207YuSQ
*「脱原発のための節電所 朴 勝俊」http://urx2.nu/eZx1
*セミナー案内はこちらhttp://urx2.nu/eZxS
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