先日、私の知り合いの経営者が、
「奥富さん、最近私の会社はコンサルタントのアドバイスをもとに、
経営理念(クレド)をつくり、社内で会社の価値観を共有しています。
経営計画もつくり、手帳を社員に渡しています。
目標と評価基準も見える化しました。
これで、社員のやる気が上がると思いますよ。」
と得意気に私に話をしてくれました。
私も以前、外資系のコンサルタント企業に勤めていましたので、
理念、ビジョン、価値観、戦略、戦術の作成にも携わったことがあります。
会社の規模が大きくなり、
社員が増えれば増えるほど、
業務の種類が増え、
社員間の意思統一が難しくなります。
「部分」の数が多くなれば、
「全体」がまとまりにくくなるのは自然なことです。
ですので、
経営者は会社の存在意義といった抽象的なことを経営理念として掲げ、
それをもとに、戦略や戦術、日々の業務といった具体的なことへ
落とし込もうとします。
経営理念をつくること自体に善し悪しはないですが、
経営理念というのは冒頭の経営者のように、
誰かにアドバイスされてつくるようなものではないのです。
経営理念とは、社会への約束。
経営理念をつくっても、お客さまはほとんど気にしません。
良い会社だなと思って、その会社を調べてみてはじめて
経営理念を知る程度でしょう。
社員の意識を束ねるために経営理念をつくっても、
社長と同じレベルの意識を持っている社員はほぼいません。
そうなると、経営理念とは、一体誰のためのものなのでしょうか?
経営理念が社長のエゴのためにあってはならないですが、
まずはトップが新しい文化をつくるための覚悟を持つ。
そして、世の中の声なき声を拾い、
人生を賭してやるべきことを大義として、
社会への約束として、言語化する必要があると考えます。
もし、今あなたの会社の経営理念が形骸化しているのであれば、
業界の常識や世間の常識をいったん脇に置いておいて、
社会に対してどんな約束をしたいのかを
じっくり考えてみてはいかがでしょうか?