<ビジネス・スキル>僕は君たちに武器を配りたい[2011年11月02日(Wed)]
新書コーナーでふと目が留まった本書。
表紙のやや過激な文章と「京大No.1」という帯を見て買ってみました。
40年前の就職人気企業ランキングで、上位にあった企業の多くは倒産または業績がものすごく悪化しています。例えば、日本航空、ダイエー、朝日新聞、近畿日本ツーリストなど。
生き残ってる伊藤忠、松下(当時)、丸紅飯田(当時)などは、ビジネスモデルを変え、グローバルブランド化したところです。
そんな激動の資本主義社会の移り変わり、今後の展望などを
・いわゆる士業(医師、弁護士、会計士)の職業のコモディティ化
・日経新聞を読んでも経済の真の姿はわからない
・既存メディアの没落
・終身企業制度はハイリスクローリターン
・リベラルアーツの重要性
などをもとに、分かりやすく書いています。
そして、今後生き残ることができるタイプを、著者は、マッキンゼー出身らしく、6つのタイプに分類しています。
1. トレーダー(商品を遠くに運んで売ることができる人)
2. エキスパート(自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人)
3. マーケター (商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人)
4. イノベーター(まったく新しい仕組みをイノベーションできる人)
5. リーダー (自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人)
6. インベスター(投資家として市場に参加している人)
技術や情報などあらゆる局面においてコモディティ化が進む現代資本主義社会では、トレーダーとエキスパートでは生き残れないと著者は言っています。なるほど、その通りです。
でも、これらは筆者(東大法卒、マッキンゼー出身)ようなエリートと呼ばれる人が京都大学の医学部の学生たち等にすすめるような処世術とも見えます。強者の論理とも言えなくないです。
スマートな学生は、この講義内容をスマートに理解し、社会に出てもスマートに生きていくのでしょうか。「俺はマーケター。」「私はインベスター。」
でも、マーケターとして生きること、インベスターとして生きることが目的にならないでほしいです。
いろんなことに挑戦し、失敗と挫折をしながら、他人との様々な関わり合いを通して、自分の働き方、生き方を見つけていってほしいものです。
総評。前半の導入部分、資本主義社会の移り変わりや、時代背景の分析までは良かったのですが、「20代が生き残るための思考法」と書いてある割には、処世術とハウツーがごちゃまぜになっている印象を受けました。
構成がやや散漫、文章も平易であり、個人的には今一つの感がありました。ギラギラした若者には魅力的な本なのかもしれません。