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2018年11月29日

第17回『ベンチャー・カップCHIBA』ビジネスプラン発表会

参加日時:2018年11月28日

文:佐野仁啓(副理事長)

第17回『ベンチャー・カップCHIBA』ビジネスプラン発表会のショートプレゼンで、胎児検診ホットライン(仮)の事業説明を行いました。

今回のビジネスプランには最終審査には進めませんでしたが、最終前の3次審査まで進んだ4社のうちの1社として、3分間のショートプレゼンを行う機会をいただき、発表させていただきました。

前回Blogにある内容を3分にまとめて発表するのは至難の業でしたが、日本にも同様の仕組み必要性を話せたんじゃないかと思います。

サンプルもできつつあるので、有識者を集めてパブリッシュに向けて進めていきたいと思います。

来年もチャンスがあればこの場に立ちたいと思います。

ファイナルに進んだ発表はどれも素晴らしく、すでに実現できて事業として回っているものも多かったです。

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2018年11月26日

ARCで医療者向けのトレーニングに参加

参加日時:2018年10月28日

文:對馬朱香(助産師)

ARC(Antenatal Results and Choices)で行われた、出生前診断に関わる医療者向けのトレーニングに参加しました。

参考:国営NHS病院訪問のレポートはこちら

参考:Fetal Medicine Centre訪問のレポートはこちら

30年近くグリーフケアや出生前診断カウンセリングに関わっているカウンセラーがファシリテーターとなりトレーニングが開催されました。当団体からは理事長の林と、私(助産師)と小児科医が参加しました。

小児科医のレポートはこちら

参加者は助産師や看護師で、出生前検査に関わる病院やクリニックに勤務しており、具体的なサポート経験と豊富な知識を持っていて、その方たちの経験共有などからもたくさんの学びがありました。彼女たちの経験値や知識量にはとても驚かされ、真剣にプロフェッショナルとして学び続け向き合っているのだと、感銘を受けました。


トレーニングでは、胎児異常を伝えられた妊婦さんたちが意思決定するために必要な情報や、意思決定に影響する要因、さらには妊婦さんの気持ちに焦点を当て、どのような態度でカウンセリングにあたるとよいかなど、診断後のカップルの助けになる関わり方について学びました。ロールプレイングをしたり、意思決定後の気持ちの移り変わりについて時期ごとに考えたり、このような経験をしたカップルがその時感じたことを読んだり、妊婦さんとその家族の立場から支援できるようになるトレーニングでした。

特にカップルから語られる言葉は、強く心が揺さぶられ、痛み、涙が出るものでした。日本ではあまり語られることの少ない彼女たちの感情や経験は、妊娠に関わる人たちが、彼女たちに寄り添い続け、気持ちを尊重し続けるために、知っておくべきものであると思いました。このような経験談は、ARCではChoicesという本で、アメリカではEnding a wanted pregnancyというHPサイトで知ることができます。胎児異常を指摘されたカップルたちにとって、この時の思いや感情を表現することはとてもつらく、苦しいものではありますが、同じような経験をした人にとっては、少なからず助けになるのだと信じ、既存の団体と協力して日本版も作成したいと思いました。

また、今回のトレーニングには、イギリス国内からだけでなく、私たちのように国外から参加している方もいました。妊婦さんたちが意思決定する上での重要な要因に、中絶に関する法律があることも、もちろん議論になりました。中絶がサポートされていない国において、カップルたちの意思決定のプロセスにどのように関わることができるか、大切なことを学ぶことができたと思います。

イギリスと日本、または他の国々で、考え方や文化、教育、宗教感などの違いは、もちろんたくさんありますが「妊婦さんやその家族の考えや気持ちを尊重したい」という思いは、ここに来ていた参加者たちは同じなのではないかと感じました。

「いのち」の考え方は、その人自身や、取り巻く状況によって、異なるものだと思います。明確な考えを持っている人も、言語化できなくても思いがある人もいます。これは第3者が決めて押し付けるものではなく、それぞれが持つ価値観が尊重されるべきものだと思います。

妊婦健診で異常を指摘され、困難な選択を強いられている家族が、孤独を感じず、サポートを受けながら意思決定できるように、ARCを参考に活動していきたいと、強く感じた貴重な1日でした。

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2018年11月25日

The Fetal Medicine Centre (FMC) 訪問

訪問日時:2018年10月24日

文:對馬朱香(助産師)

現在、当法人代表理事の林が勤務しているThe Fetal Medicine Centre(FMC)のクリニック見学に行きました。こちらは国営のものではなく、自費診療を行なっているクリニックです。

参考:国営NHS病院訪問のレポートはこちら

ロンドンの綺麗な街並みの中にある、1軒のビルの中にそのクリニックはありました。中はとても綺麗で、エステサロンのような、博物館のような雰囲気がありました。子どもたちのためにおもちゃや絵本が置いている場所もあり、子どもと一緒にでも受診しやすい環境が整えられていました。

FMCでは胎児診療を行なっており、当法人代表理事の林が診察をしている様子を見学しました。日本で通常の妊婦健診の時に行う超音波検査は、胎児の成長を診ることがメインで、胎児の全身をくまなく診るということは行なっていません。

一方、FMCで行う健診では、胎児の頭から足の指先まで全身を診ます。とても時間がかかるのでは、と予想していましたが、赤ちゃんの向きが健診するのに問題なく、特に何も異常が見つからない場合は20分程度で終了することを知りました。素早く正確なエコー技術は信頼感があり、丁寧でユーモアのある説明で始終和やかな雰囲気の診察でした。

何か異常が見つかった場合は、絨毛検査や羊水検査などの確定診断をするための方法や、中絶についてなどの説明が、院長であるニコライデス教授からされていました。教授は、穏やかで優しく信頼できる態度とスキルで、カップルの気持ちや意思を尊重できるような説明をしていました。

胎児の異常が指摘された人は、すぐに決断して検査を受ける人、戸惑って時間を必要とする人、一度家に帰ってパートナーと話をしたい人などさまざまでした。エコー検査を受ける前に、この検査の目的について十分な説明を聞いていたり、エコー検査の受診が義務付けられていたりすることが影響しているかもしれませんが、「まさか自分が……」と思うであろう状況にもかかわらず、短時間で決断した人がいたことは少し驚きでした。

絨毛検査や羊水検査はエコー検査をしていた部屋と同じ場所で、大掛かりな設備も必要なく、ほんの5分程度で行われていました。検査を受けた人は終わった後もすぐに自宅へ帰ることができるので、検査を受けることへのハードルが気持ち的に少し軽減されるように感じました。

また、検査を受けるクライエントは、自分の状況についてよく勉強している様子で、医療者でないとなかなか馴染みのないような言葉も知っており、これもまた驚くものでした。赤ちゃんのことについてや検査結果などのレポートは、全て妊婦自身に渡され、彼女たち自身が保管しているようです。

日本では他の病院を受診するとき、医師が書いた紹介状を病院に持って行きますが、イギリスでは自分で保管しているレポートを持って直接行く、という仕組みでした。自分自身の状態や胎児のことを、妊婦自身がより理解しやすい環境であると思いました。

また、1回あたりの診察時間は30分で、医師としっかり話せる時間が確保されていることや、他に質問がないかを何度か確認され、聞きたいことが聞ける環境というのも、自分と赤ちゃんの状態を把握する上で大事なことだと感じました。

日本に帰ってから助産師として働く上で、大切なことを学んだ1日でした。

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King’s college Hospital訪問

参加日時:2018年10月25-26日

文:對馬朱香(助産師)

ロンドンにある国営の大学病院、King’s college Hospitalを訪問しました。

国営の病院では、妊娠初期と中期の胎児健診(King’s collegeでは後期も)と胎児治療が無料で行われています。世界中の医療者が見学や胎児診療の研修を受けにきており私たちの見学も快諾していただきました。見学に際し、はじめに守秘義務や情報開示ルールについての誓約書にサインし、診察と手術を見学しました。

現在、当法人代表の林がKing’s college Hospitalに勤務しているので、午前中は林が日本から来ていた助産師へ向けて、イギリスでの胎児健診の仕組みや、そこに関わる助産師の重要性などについてプレゼンしました。英国の助産システムは日本と異なるものですが、切れ目ない支援をするためには助産師が必要不可欠であることを感じ、助産師一同奮起しました。助産師の専門性の高さや、自分たちで判断することの多さ、責任感の強さなど、身の引き締まる思いでした。

その後、胎児健診の様子を見学しました。健診は2人体制で行っており、なにかあれば胎児科コンサルタントに診てもらえること、必要であれば検査や手術もできる体制があることなど、胎児を診るシステムがしっかりしていると感じました。

妊娠初期と中期のエコーでは、1人45分程度かけてしっかり診ていました。赤ちゃんの健康に問題があるのかどうか、それは治療できるものか、緩和ケアが考慮されうる状態なのかなど「赤ちゃんを診ること」と、母親の妊娠高血圧腎症や早産のリスク評価など「母親を診ること」の両方がなされていました。家族と受診している妊婦さんが多く、エコーを見たり説明を聞いたりしながら、顔を見合わせて微笑みあっている様子は、見ていて幸せな気持ちになりました。ローリスクの妊婦さんは、妊娠期間を通して2回(もしくは3回)のエコー検査で良いため、付き添いの人も一緒に来やすいと思います。また、赤ちゃんになにか気になる点があってカウンセリングを必要とするときでも、夫婦で共通認識を得て一緒に考え話し合えるのでよいと思いました。


初期と中期でしっかり時間をかけてリスク評価をし、リスクが低い妊婦さんはかかりつけの助産師または医師に診てもらい、リスクが高い妊婦さんはそれぞれの状態に合わせてスケジュールが組まれるという仕組みは、日本とはまるで違うものですが、ローリスクの妊婦さんたちは、コミュニティでかかりつけ助産師と十分に関わることができるし、ハイリスクの妊婦さんは、より重点的に診てもらえる仕組みだと思いました。


胎児治療もマジックミラー越しに隣の部屋から見学することができました。”胎児治療”という言葉だけ聞くと、どのようなものか具体的な想像がつかず、手術室で厳重な装備や大掛かりな機器を使うような手術を想像してしまっていました。しかし実際は、それまでエコー検査をしていた部屋で行っていて、治療自体はほんの10〜15分程度で終了し、妊婦さんはそのまま帰っていきました。日本では羊水検査の後、数時間は安静にしてから帰宅するので、治療後にそのまま帰っているのには驚きました。

胎児をしっかり診る仕組みが普及すること、胎児も適切な時期に受けられること、家族が赤ちゃんの状態を知ることで、自分たちと赤ちゃんにとっての最善の選択(治療や出産時期、出産場所、看取る、ということなど)ができるようになること、そしてどのような選択でも社会に受け入れられ支援されること、これらのことを実現していきたいと強く思った日でした。


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2018年11月19日

ARCトレーニングセッション参加報告

参加日時:2018年10月28日

文責:林伸彦(代表)

(*2018年7月のARCセンター訪問記はこちら

今回、ロンドンに本部がある、Antenatal Results and Choices (ARC)というチャリティ組織を訪れました。ARCは出生前診断前後の妊婦さんとその家族を支えるためのパンフレットの配布や、電話相談を行っています。30年前に設立され、寄付によって運営されています。イギリス国内の病院とも連携しており、国内中の相談が寄せられます。私たちは、日本にも同じような組織があったらいいなと思い、どのような勉強会が行われているか、視察に行きました。

詳しくはFetal Medicine Foundation の視察報告に譲りますが、イギリスにおける出生前検査は、特定の疾患のマススクリーニングを指すのではなく、妊娠11〜13週のお腹の赤ちゃん(胎児)の超音波検査から始まり、NIPTや絨毛検査、MRIなど順次必要な検査を組み合わせていく、一連の診断システムを指します。

大まかにいうと、染色体数異常(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーなど)、22q11.2欠失症候群などの染色体微小欠失・重複、先天性心疾患(大きな心室中隔欠損、左心低形成、大動脈縮窄、三尖弁閉鎖など)、その他の形態異常(手がない、足がない、二分脊椎、滑脳症、無脳症など)、胎児貧血や胎児心不全などについて発見する医療システムが整備されています。また病気の説明やケアに関しては、胎児科の医師や助産師、精神科医などが関わります。やはり順調な妊娠生活を想像していた家族にとって、胎児の異常を指摘されることは想定外で、何をどのように考えたらいいのか分からず、ときには医療者の声さえも聞けなくなる可能性があります。このようなときにおこる葛藤や、胎児の異常を理由とした中絶(注※)前後の心のケアを、ARCが行なっています。


日本では、出生前検査による「命の選択」という側面が注目され、出生前に赤ちゃんの病気を見つけることがタブーと考えられています。しかし通常の妊婦健診でも胎児の病気が見つかることもあり、その場合に、福祉制度にスムーズにつながることが困難な状況と言えます。胎児の異常を理由とした中絶が認められていない日本では、突然異常を指摘されたとしても、相談の受け皿を整備しにくいということなのかもしれません。

新型出生前検査(NIPT)の登場により出生前検査に関心が集まっている今だからこそ、妊婦さんやそのご家族が、赤ちゃんの置かれた状況に正しく向き合い、心のサポートを受けつつ将来をしっかり考えられるように、ARCのような相談窓口が必要だと感じています。


前置きが長くなりましたが、今回は、出生前検査で胎児の病気などを診断された家族をどうサポートするかについて、医療者が集まって話し合う勉強会に参加してきました。参加者はロンドンの胎児科で働いている助産師が多く、他にも遺伝カウンセラーや、先天性心疾患を専門とする看護師など、実際に出生前検査前後のサポートに従事しているプロばかりでした。ファシリテーター(進行役)はミランダさんという、長年ARCで出生前検査前後のサポートや、中絶前後の心のサポートをしている相談員が務めてくださいました。現場の事例を交えて行ったディスカッションは具体的で、実際の支援の様々なシミュレーションができました。

セッションごとに、@意思決定の難しさについて、A意思決定をどうサポートするかの方法論、B具体的なロールプレイ、C異常を指摘されて妊娠を終わらせる決断をした場合のサポート、D妊娠を継続する場合のサポートについて学びました。

特に、パターナリズム(医療者が患者の利益のためとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援する)とは対極にある「非指示的なサポート」が強調されていました。つまり胎児の異常という想定外の出来事に直面した家族が、産むか産まないか、産まない場合の中絶方法、周囲のサポートはどう受けるのか、産むならどうやって生活していくかなどの意思決定をするためには、自分たちがどんなことを知れば(病気のこと、自身の経済状況、得られる医療サポートなど)意思決定の助けになるかを、相談員との対話の中で明らかにし、自分たちで情報収拾できるように、サポートすることが大切ということです。「情報を与えるからあなたたちが決めて」ではなく、「あなたたちが考えるのを、そばで常に見守っているよ。そして必要があれば患者団体などもっと他の人と話せるようにもするよ」と、伝え続けることの大切さを学びました。

初めてARCの勉強会に参加してみて、今後も継続して参加してARCと意見交換をしながら、日本へ取り入れられるものはどんどん吸収していきたいと思いました。もちろん文化的背景の違いはあるので、全てをそのまま導入するのではなく、あくまでもARCの方法論を参考に、日本における出生前検査前後のサポートの充実を独自に考えていく必要があると考えています。

注※ イギリスでの人工妊娠中絶は、基本的には妊娠23週6日までに行われます。しかしそれ以降でも母体が生命の危険に冒されているときや、生まれてくる赤ちゃんが重い障がいをもつ場合には、いかなる週数でも中絶をすることが法で認められています。

参考:我々が日本で配布する用に作成中のブックレット(案)

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