私の町 [2011年04月15日(Fri)]
「ここが、私の町です」
視界が広げると彼女はそう言った。 陸前高田市 気仙町/長部地区。お世話になっている馬場さんの妹さんの家があった。 何か家のものが残ってないか・・・ということで、妹さんと一緒に捜索に来た。 口があんぐりと開く。この地区では、100戸中残ったのはたった6戸。ほぼ全てが、津波に流された。 地区の中心部にある巨大な倉庫(冷蔵庫)にあった魚が地区中に散らばり、町全体が異臭を放つ。・・・決して魚だけではないはずだ。 「ここが、私の家のあったところです」 土台のみ。 「もう笑うしかないね」 地区の捜索に乗り出す。数百メートルも先で、ご近所の方のものが見つかる。 アルバム、ランドセル、年金手帳・・・ 泥だらけのランドセルに名札がついている。保護者(父親)の名前もあった。 「あー、このランドセル・・・このお父さん、亡くなったのよ」 3時間、歩き回ったが妹さんの家のものは何もでてこなかった。 「でも、来てよかった。何も残ってないって分かってても、実際ここに来て自分の眼で見て廻って納得できた」 妹さんは、帰宅後熱を出したらしい。精神的にこたえたようだ。 一方、私も滅入ってしまった。あの光景と臭い、そこをとぼとぼとゆっくり歩く妹さんの後姿が頭から離れない。 ガレキの町に、花が咲いていた。 それがきれいで。 こうあれたらな、と思った。 |