8時半に帰宅すると風呂からあがったばかりの息子が駆け寄ってくる。
「さん!…に!…いち!…ぴーーーー!」
と叫んでいる。風呂あがりの牛乳をチンする電子レンジのマネ。
「じゃーーー!ねー。ねー」
今日もじゃーーしたの?それはそれはご苦労様です。
最近は風呂でシャワーを頭のてっぺんからかける「じゃーー」という苦行に取り組んでいるらしい。
私が入れるときは、まだ膝の上にあおむけに寝かせて、頭をなでるようにシャワーの水を髪に沿わす。
父が弟の頭をこういう風に洗っているのを見て、おれもやってーと頼んだ記憶が残っている。姫路の家だった。シュワシュワとなんだかむずがゆい感覚が残っている。
妻は髪を乾かしはじめていて「先食べる?」と尋ねてくれる。
スウェットに履き替えて、息子にちょっかいを出していると、ご飯を出してくれる。
歯みがきタイムの断末魔の叫びを聞きながら、その真横で黙々と頂く。
「はい、おわりー」
と妻が立ち上がると、今日も闘いを終え灰になった息子は倒れたまましばらくしくしく泣いている。
しかし「絵本読むよー。パパにおやすみしてー」という声が聞こえると、パッと起き上がってご機嫌にベッドに向かう。
「すみーー」と私に向かって片手をぺっとあげる。そして、そのままカーテンをシャッと閉めるのだった。
住んでいるアパートは1K。でもこの「1」が十何畳あるので、真ん中をカーテンで仕切って2部屋気分にしている。寝室とリビング。
音量を小さくしてバラエティを見ながら黙々と食べる。9時になったらニュース9に替える。
トップニュース2つ3つ見るとバラエティに戻す。気になるニュースがあれば、報ステかZEROか23でまた見たいなぁと思う。
カーテンで仕切っているだけなので、妻の絵本を読む声が聞こえてくる。息子が興奮気味にそこに効果音を付け加えている。昨日は2人の合唱が聞こえてきた。「あるこうあるこうわたしはげんき♪」
唄が歌えるようになってきた。
やんややんやとはしゃぐ息子の声がだんだん聞こえなくなる。朗読の声も聞こえなくなる。
妻もそのまま寝てしまうことが多い。
最近嬉しいのは、ねんねの時間の絵本を私に読めとリクエストが来る。「パパ、ねんね!」と私の枕を2度ぽんぽんっとする。んなことされたら私も布団に飛んでゆく。
読み終えた瞬間に「もいっかい」と言われるので、何度も同じ本を繰り返し読む。
こちらも飽きるので、すべて関西弁バージョンでお届けしたり、美輪さんバージョンでお届けしたりするのだが、次はこれ、次はこれと渡され、2、3冊替わるうちに、私の方が先にギブアップして寝てしまう。
・
さて、昨日はじーじからLINEが入っていることに気づく。
「タクマ来宅8年だね

️」と。これからもよろしくね、という旨が記されていた。
あぁ!
今日は4月5日か。
初めて唐桑に来た日。
すぐに発電機のガーーという音が蘇る。しっかり着込んで頭にはタオルをまいて臨戦態勢だったじーじとの初対面。
まだ電気も復旧していなかった2011年4月5日。
当の本人すら数年前から意識しなくなった4月5日に、こうやってメッセージをもらえたことに喜びが湧き出てきた。
7年だけどね、と心中でツッコミながら。
さらに昨日は、遠く関西からいい知らせが入った。おめでたい。
・
しんどかった年度末を乗り切り、少しずつ落ち着いてきている自分がいる。
そんな今朝。
地元紙を見ると「加速する人口減少」という文字が一面を大きくどしりと陣取っていた。
降りのジェットコースターはもう止められない。
目を閉じないことが大事だ。やれることはまだある。