夢の夏祭り(後編) [2011年09月28日(Wed)]
つづき
こちらはテント裏。陽も落ちた頃。 「唐桑ボランティア団を代表して、最後閉会の挨拶することになった」 とちぎVネットのキミピーに話す。 「うん、じゃあたくま一人よりボラ団の皆ステージに上げた方がいいんじゃない?」 こうして、急遽秘密裏に“閉会式でボランティア全員ステージに上げるプロジェクト”が始動した。 キミピーがすぐに各団体のブースを回って、呼びかけをしてくれる。 いよいよ大事になってきた。 珍しく原稿を書く。 --- リオの歌が終わるとともに、FIWCのメンバーがぞろぞろとステージに上がる。 ソーラン節だ。 かつて、私とFIWCという団体を繋いだのは、中国キャンプのソーラン節だった。 今回、中国で一緒にソーランを踊った仲間たちも来てくれた。ゆうたと二人、ステージ上のセンターに並ぶ。 みなみはステージ下の先頭に立った。 リオの「構え!」の合図でソーラン節が始まった。 このイントロを聞くといろいろ思い出す。中国でワークキャンプをする度にソーラン節を踊った。 中国の村人は、この日本の踊りが何よりも好きだった。そんな私はこいつを踊る時間が誰よりも好きだった。高揚していくソーラン節は、人をつないでいく。 満場の拍手に包まれた。 --- 来場者の足が海の方を向く。 私たちも息がまだ上がった状態で海が見えるところまで、急ぐ。 ドーンっと、校舎の裏から音がする。足はさらに速くなる。 唐桑の砂子浜に花火が上がった。 「75発までなら無許可で上げられる」 この情報により、地元の人の協力で花火が実現した。 大勢の人が校門付近から、砂子浜の夜空を見上げる。 「…ホンマに上げよったわ」思わず顔がほころぶ。 --- 閉会式となった。花火を見終わった人たちがステージの前へ徐々に戻ってくる。 予想外だ。花火を見て、そのまま閉会式なんて見ずに帰ってしまうだろう、と思っていたのだが、100人から200人はいるだろうか。 私は高登さんの紹介を受け、ステージに上がる。 逆光で校庭がよく見えない。自分がお世話になった地元の人はまだいてくれているだろうか。 「ボランティアの方、(ステージの上に)上がってきてもらっていいですか」 キミピーが声をかけてくれた各団体のボランティアが集まる。ステージは人で溢れた。 まず簡単に唐桑ボランティア団の紹介をする。 その後、唐桑で活動する魅力を話す。 せっかくの機会だ。こんなに大勢の唐桑人の前で話す機会など、後にも先にもないだろう。どうせなら本音をぶちまけてやろう。上っ面の挨拶なんて面白くない。 「唐桑に入って4ヶ月が経ちました」 と、そこでマイクが切れる。あちゃー。誰かが気を利かせてくれて、拡声器を渡してきた。学生運動か何かのデモ集団のようになってしまった。 拡声器に大声を吹きかける。 「ボランティアといえども聖者聖人でないので、いろんなことを日々悩みながら、時に地元の方のお叱りを受けながら、活動しています。 ここからは正直な話なんですが… でも、もうこれからはボランティアだけでは、復興活動は限界があると思ってます。 欲を言えば、 これからは、「ボランティア」そして「被災者」、こういう言葉を捨てたいなと思ってます。唐桑のためにやってる訳ですから両者に違いはないはずです。私たちも地元の人に支えられて毎日活動してます。 だからこうやって私たちだけがステージに立つのは、今日で終わりにしたいと思っています。 私はそう思っています」 リオがステージ下で、両手をくるくる回している。(まいて!まいて!) だがもう既にこの状況に酔っていたおバカな私は気にもならない。 「唐桑をひとつにしたい。 こんなときだからこそ、気持ちをひとつにして歩んでいきたい。 地区は関係ないです。仮設も在宅も関係ないです。 その想いでこのお祭りが開かれました。 だから宿地区のお祭り、中、中井、鮪立、そういった(地区ごとの)お祭りを私たちがお手伝いする意味はあまりないと思っています。 だから今日、唐桑中から集まってくれた皆さんに心から感謝したいと思います。 これからもよろしくお願いします。 明日からも、がんばっつぉー唐桑」 お祭りが終わった。 いろんな人と抱き合った。本当にいろんなメンバーのパワーが集まった。 そのくせ、最後だけ出てきてスピーチしたことがどうしても恥ずかしい。 地元の人からもいろんな感想を聞く。 「本当にありがとね。本当に感動した。明日から、たくちゃんはオレの“友だち”だ」 “ボランティア”から“友だち”になった。こんな素敵な言葉はない。 「元気をもらった。ありがとう」 そして、リオと夢見たセリフを、いろんな方から聞いた。 「唐桑でこんな大きな祭り、今までなかったよ」 一瞬でも、唐桑はひとつになれたかな。 --- 翌日、三陸新報に各地域の祭りが報じられる。 その中でも唐桑がトップに載る。松圃虎舞の梶原さんが写真の中で虎と舞っている。 実際、気仙沼、本吉、唐桑など13日の祭りの中では、唐桑が一番大規模だったという。 がんばっつぉー唐桑・夏祭りの来場者数は5000人と実行委員会が発表。 ここまで駄文に付き合って下さった方、ありがとうございます。 お祭りの様子は「からくわ放送局」に出てます。どうぞ。 http://www.karakuwa-ocean.org/ YouTubeはコチラです。 http://www.youtube.com/watch?v=35dVXSTD1pY もう少しつづく |