夢の夏祭り(中編) [2011年09月27日(Tue)]
つづき
リオの動きは凄まじいものになってきた。 毎週末、祭りの打ち合わせのためだけに唐桑にやってくる。夜、唐桑を出て独りで高速を走り、次の日の朝には、東京で仕事だという。 リオの仕事はポスターづくり。どうやら花火の手配も進めているらしい。本当に花火なんて上がるのか。 一方、進さんは復興イベント用の口座開設。花火はじめ、イベントに掛かる費用のカンパを募集する。 私の仕事は、気仙沼高校ダンス部、松圃虎舞に出演依頼を出すこと。(参照記事「松圃虎舞」) 唐桑ボランティア団を通じ、各団体にブースの出店を依頼すること。 中国キャンプの十八番、ソーラン節の指南役。 やがて完成したポスターとチラシが届く。 ![]() シンゴ、トミーが高登さんと当日進行の打ち合わせを重ねる。 各ボランティア団体を集めた全体会議を総合支所にて行う。 高登さんが当日の無料シャトルバスの手配を組む。唐桑の北から南まで、車で来れない人はバスで来場できるようにした。 半島の先から北の端まで、商店などをリストアップし、みっぽたちが唐桑中にポスターを貼ってまわる。 FIWCのメンバーひとりひとりに役割があり、その仕事量は日に日に増すので、ついでにストレスも増し、なんだがバラバラになっていた。かじサンやかおりサンが「なんか最近雰囲気悪いね」と心配する。 気づけば8月になっていた。 --- 花堂監督率いるT-ACTは着々とキャンドルアートの準備を進めていた。 8月10日、鮪立の児童館でワークショップを開催。子どもたちが風船を鍋いっぱいのロウにつけて、ちゃぷちゃぷする。それを延々と繰り返し丸いキャンドルをつくる。 それを横から眺めるだけの私。 11日、いよいよ港・けせんぬま復活祭が幕を開ける。 14時46分、鮪立の現場で震災5ヶ月を迎え、放送で黙祷とともに市長が祭りの開会を告知する。 夜はいよいよライトアップニッポン。被災地で一斉に花火が上がる。リョータ、みっぽ、シンゴと車をとばし、焼失した鹿折(ししおり)地区へ。 鹿折のガレキの向こう、大川河口に華が咲く。華が夜の海に映る。それを蚊にさされながら見ていた。気仙沼がまた一歩、歩みを進めた気がした。 12日。 みっぽがうぐいす嬢デビュー。選挙カーで役所の人と一緒に唐桑を行ったり来たりする。 「8月13日13時より…唐桑小学校にて…がんばっつぉー唐桑・夏祭りを…」 一方会場では、唐桑ボランティア団が集合し、当日の設営準備をする。 夜。 FIWCの面々がいよいよ集結。役割分担表が配られ、リオが当日の段取りを説明。スーパーサポーターのみどりサンがリオを支える。 私は別件で電話が入っており、プレハブの外にいた。 結局最後まで、細かい作業は皆に任せっきりだった。 「何もしてなくてゴメンね」リオに言う。なんだか恥ずかしい。 「なーに、たくまがいたからさ」リオは疲れ切った顔で言う。 「唐桑の歴史に残そうぜ」 グーをこつんっと交わす。 (祭り企画するんはいいけど、オレに全部調整役をフるのはやめてな) かつてリオに吐いたセリフを思い出していた。 高登さんに、当日の閉会のスピーチを依頼される。唐桑ボランティア団を代表して。 自分にできることがあった。それを精いっぱいやろう。 --- 8月13日。港・けせんぬま復活祭最終日、各地区でお祭りが同時開催。 (気仙沼の方では、キマグレンが来るらしいよ。)他地区の祭りの情報が入ってくる。 ここは、唐桑小学校グランド。 進さんがステージに立ち、祭りの開幕を盛り上げる。「がんばっつぉ〜〜」と叫ぶ。 グランドを囲むようにズラリとボランティア団体、地元コミュニティの屋台が並ぶ。ステージには、大漁旗がなびく。ステージ前には、丸テーブルとイスが並んだ。 なんと市長が来て、挨拶をする。こうして「がんばっつぉー唐桑・夏祭り」が始まった。 リオ、みどりサンがインカムを片手に忙しそうに走り回る。総合司会は高登さん。本部席には、進さん、高登さん、シンゴ、私、あとビール。馬場さんも気になってか本部であれこれアドバイスをくれる。リオと運営を進めてきたかおりサンも本部周辺でサポートしてくれる。 Gakuvoメンバーが駐車場案内をしてくれる。 リオが開会セレモニーで熱唱。 続いて松圃虎舞。さよと私が出演。大太鼓の2列目ど真ん中で叩く。 虎が梯子の上で舞い、不意に風がごーっと吹き抜ける。叩きながら音に酔いしれる。 ステージ上でライブパフォーマンスが続き、気仙沼高校ダンス部2年生も登場。引退した3年生も見に来てくれた。 郭ちゃん率いる大学時代の先輩たちも祭りに駆けつけてくれた。ステージ下、ステージ上でどんちゃん騒ぎしてパフォーマンスを盛り上げる。楽しい雰囲気づくりならピカイチの集団だ。 気仙沼のマスコット、ホヤぼーやも踊る踊る。 ![]() 宿地区の太鼓。馬場家の孫娘たちも出演。一番後ろの列で叩くえいかが気になるのだろう、馬場さんがステージ後ろの大漁旗の間から顔を出し、えいかのおしりをじっと見守っている。こちらは思わず噴き出す。 グランドを回っていると、いままで知り合った地元の人に声をかけられる。本当にいろんな人が来てくれた… ![]() 13時に始まった祭りだったが、あっという間に陽が暮れる。 辺りが暗くなるにつれ、閉会のスピーチも近づく。私の緊張も増す。 ライブパフォーマンスは続く。ジャズ。シャカリキのダンス。高登さんのビール片手の司会も熱が入る。「ではアンコーーールをお願いしますっ!」 本当に自由な祭りだこと。 --- 献花台に暖かい灯が燈る。花堂監督のキャンドルたちだった。 花堂監督は、立派なキャンドル台まで用意。ピラミッド型にキャンドルが並ぶ。 地上にもキャンドルが並ぶ。 その灯りが最後の演目を幻想的に映し出す。リオと仲間たちのライブだった。 ![]() 最後の曲は「愛はひとつになる」。 歌詞カードが配られる。 みんなキャンドルの傍にしゃがみこみ、歌に聞き入る。歌を口ずさむ。 (「愛はひとつになる」を唐桑のみんなと歌いたい) 祭りにかけるリオの夢だった。 〜人は悲しみの度に強くなれる どんな時もひとりじゃない ありったけの声に想いをのせて歌おう 歩いてく 歩いてゆこう〜 (YouTube http://www.youtube.com/watch?v=8QjpCKu5dP4) 「ごめん、私もうダメだー」と、ぶわーっと泣き出すかおりサン。リオのこの夢を一番応援してきた人だ。 みんなの眼にも涙が溜まる。それをキャンドルがチラチラと照らし、みんな眼をキラキラさせているようだった。 きっとリオは、今最高に気持ちいい瞬間を迎えているだろう。 ありがとう。 後編へ |