触法障がい者[2013年12月11日(Wed)]
触法障がい者ということばを聞いたことがありますか?。
この問題については、すでにご存じの方が多いと思いますが、一般的に知られるようになったのは2006年に出版された「累犯障害者」という書籍によるところが大きいと言われています。
著者である山本譲司氏は、衆議院議員でしたが2001年に秘書給与流用の罪で刑務所で収監されることとなりました。
そこで氏は、多くの障がいのある人(著書によると、収監されている人のうち、約25%が何らかの知的・発達障がいが疑われ、その他にも身体障がい、精神障がいの人もいたそうです)が、地域で暮らすことができず、軽微犯罪を(意図的に)繰り返すことで、最後の「セーフティネット」である刑務所へやってきている現状を目の当たりにします。
また、2007年には厚労省の研究事業(虞犯・触法等の障害者の地域生活支援に関する研究)により、山本氏が体感した状況が決して偶然ではなく、全国的な課題であることも明らかとなっています。
この報告書によると、調査対象となった知的障害のある服役者(約400人)のうち、いわゆる「累犯」の人が約70%おられたそうです。さらに、出所時の「身元引受人」は両親や家族が20%程度にとどまり、「未定」「不詳」が約50%という結果が出ています。
つまり、知的・発達障がいのある人が犯罪を犯して刑務所へ収監されると、出所後に家族が迎えに来てくれる割合は2割程度で、約半数は身元引受人すら決まらない状態・・というわけです。
そうなると、出所する人の約半数は「帰るべき家」すら存在せず、所持金も(服役中に作業した工賃が多少あるとは思いますが)非常に少ない状態で地域へ戻ることとなります。多少でも手持ち金があれば、ビジネスホテルやネットカフェで寝泊まり可能ですが、そんなに長くは続きません。
いずれは、身寄りもない、所持金もない、食べるものすら手に入らない状態となり・・結果として、少なくとも「3食」と「寝場所」が保障されている刑務所へ戻りたいと思う可能性は十分に考えられます。
あるいは、いよいよお金に困った結果、甘い言葉で誘いをかけてくる反社会的組織の構成員となってしまうリスクも考えられます。(この場合は、反社会的組織で活動しているがゆえに、逮捕されてしまう可能性が高まります)
こうしたことを防ぐために、刑務所などを出所する際に、やっと最近になって、相談支援事業所が住まいの確保や出所後に利用する福祉サービスなどを予め調整し、できるだけ安定した暮らしを用意する仕組みが導入されました。
著者は「彼らが加害者となったら当然罰せられるべきだが、その前に彼らは人生の大半を不遇なまま過ごして来た被害者でもある事を忘れるべきではない」「彼らに十分な福祉さえ行き届いていれば、防げた事例は幾らでもあった」と主張しています。
花巻市社会福祉協議会では生活困窮者支援事業のモデル事業をいち早く導入して取り組み始めました。今後は多方面での福祉的支援が必要な社会になっていくのではないかと思いますし、充実してほしいです。