3月2日から4日にかけて開催された全国エコツーリズム大会に参加し、4日の分科会4[エコツーリズムの拠点としての「民宿」を見直そう〜合掌造り囲炉裏談義]のコーディネーター役を務めさせて頂きました。コメンテーターは秋神温泉旅館代表の小林繁氏。
荻町の風景
会場は世界文化遺産飛騨白川郷荻町にある神田家。この合掌造りは江戸後期に石川県の大工により十年の歳月をかけて建造されたと云われており、通常は日中だけに公開されているお屋敷です。このような貴重な建造物にて分科会が行うことができたのはとても光栄に思います。エルニーニョによる暖冬で90歳のおばあちゃんも今まで見たことがないほど雪がなく、地球温暖化をより意識する分科会となりました。
出席者は大会登録者が20名、実際に荻町で民宿を営んでおられる方が7名、その他6名(記録係、役場担当、司会等)の計33名。当協会からは役員は4名が参加しました。
8時45〜9時30分まずは出席者全員に自己紹介を兼ねて以下を答えて頂きました。
1)氏名
2)所属、出身
3)なぜこの分科会に出席したのか
4)分科会の成果としてみたいもの
日本全国津々浦々から来られており、また所属産業も多岐に渡りました。ひとつ全員が疑問に思ったのは今白川郷に年間150万人もの観光客が訪れ、そのほとんどが1時間以内の通過型観光になっていることです。この多くの人が訪問することによる環境、文化、景観等のインパクトは量りかねません。
9時30〜10時皆さんが分科会に参加された理由と所属が分かった上で、5つのグループに分かれ、民宿の役割は何であるべきか、また現状の問題は何であるかをいろんな見地から協議して頂くことにしました。満足度を上げるには接客する側と接客される側の双方の意見を良く聞くことから始まります。
グループによる協議の様子
これぞ囲炉裏談義!
意見をまとめ、発表の準備中
10時〜10時40分以下のグループによる発表をまとめました。
グループ1:エコツーリスト
・宿屋さんでどんなアクティビティーがあるのかを明確にしらせてほしい。
・忙しいのに無理に接客する必要はない。無理したら分かってしまう。
グループ2:宿屋運営者
・本当にお客さんが満足して帰られているのか不安。
・合掌造りの間取り上、プライバシーの確保ができない。
・無理したら続かない。→ここでエコツーリストと意見が一致!
・囲炉裏を維持するための薪の調達は骨が折れる仕事。
・遺産ブーム前の学生等による長期滞在者が激減。
グループ3:ツーリスト
・本当の笑顔(作り笑いでない)が見たい。
・地元の食材を楽しみたい。
・清潔感も大切。民宿だからということで片付けない。
・客との時間をもっと割いてほしい。
グループ4:行政
・民宿はエコツーリズムの最前線、拠点である。
・お客同士をつなげる場である。
・生活の臭いを感じる場である。
・万人向けでなく、地元民の意思を反映した客層を呼び込むためのガード(フィルター)の役目を担っている。
グループ5:旅行業者
・旅行者、宿泊施設運営者、観光業者の全ての産業について勉強している。
・情報発信を業者向け、ユーザー向けに分けてしてほしい。
・滞在を促す情報の強化が必要。
・現在は合掌造りを見にくるだけのテーマパーク化が問題、通過型を誘引している。
10時40分〜11時コメンテーターの小林氏から秋神温泉での集客についての取り組みをお話頂き、白川郷で取り組みべき活動についてアドバイスをお願い致しました。また質疑応答の時間を最後に数分取りました。
・先人の知恵とロマンを大切にする。
・山村文化や遺産の素晴らしさに誇りを持ち、それを学ぶ。
・話のきっかけは自分で作り出し、お客様に喜んでもらう。
・民宿では「だんな」「主人」と呼ばれるが、その関係は望ましくない。
・山中の一軒屋で集客に成功した「氷点下の森」。マイナスの雪をプラスへ。
以上の内容を分科会報告会(全体会)にて発表致しました。囲炉裏が珍しくて集まったと云う訳ではなく、民宿をはじめとした宿泊施設の役割の重要性を認識して参加されたばかりで熱の入った意見交換がなされたと思います。
荻町の民宿の皆さんは、昔のようにゆっくりとした時間の流れの中で長期滞在される方とお話を楽しむことを望んでおられます。完全にツアー会社による薄利多売式のマスツーリズムから、客単価が高く地域文化・景観保護、環境保全の意識が一般的に高いといわれるエコツーリストの集客にこれから取り組んで頂きたいと思います。この分科会で話合われた内容が白川村の観光対策に少しでも持続可能性を考え、民意を反映する機会になったことと期待しています。(ま

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関連リンク:・
全国エコツーリズム大会in白川郷・
岐阜県白川村・
秋神温泉旅館・
氷点下の森・
神田家・
分科会報告書PDF(全国エコツーリズム大会in白川郷実行委員会まとめ)