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フツーの消費者がヘンだと思う消費者契約法 [2017年09月13日(Wed)]
2016年改正の第二弾として、昨年11月から消費者委員会消費者契約法専門調査会において消費者契約法の見直しが検討され、8月に報告書が公表されました。

今回規定しようとする内容に関しパブリック・コメントが募集されています。沢田は見直しに反対する立場から、個人として以下の意見を提出しました。

消費者問題は、もっと多面的に、俯瞰的に、データに基づいて検討すべきなのに、大事な視点がごっそり抜け落ちて「消費者契約法改正ありき」の議論になっていた、というのが私の反対理由です。

意見の理由(詳細)

消費者契約の望ましいあり方を検討するにあたり必要と思われる視点は次の通り。

1) 「情報通信技術の発達」により消費者取引に生じた変化
 消費者契約法専門調査会(以下「専門調査会」)報告書「はじめに」では、法見直しの趣旨(専門調査会設置の背景)として、「情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点」が挙げられている。しかし、社会経済状況にどのような変化が見られ、それが消費者取引にどのような影響を与えているかの分析は全くされていない。
 「高齢者の増加」「成年年齢引き下げ」=「高齢者や若年層をターゲットとする悪質事業者の横行」とのみ捉えるのは、あまりにも表層的・一面的であると考える。

 私見では、ここ十数年の社会経済状況の変化として最も大きいのは、情報通信技術の発達を背景とする「国際化の進展」であると考える。消費者取引にも確実に国際化の波が押し寄せている中で、国内法である消費者契約法上の消費者の権利を拡大したとしても、海外事業者が相手方の取引において、当該消費者の権利を実現させる現実的な紛争解決手段が存在しなければ意味がない。
 法の適用に関する通則法により、消費者は、海外事業者との取引においても自国の消費者保護法の強行規定の適用を主張できることとなったが、現実には、訴訟を起こさない限り、相対交渉の過程でこの主張が通ることはほとんどない。

2) グローバル・スタンダードへの目配り
 また、日本は情報化先進国の一つとして、消費者関連法のハーモナイゼーションを目指し、国際的に議論をリードしていくべき立場である。国内だけで通用する独自の価値観に基づく法制ではなく、法律以外の施策を含め、海外事業者にも容易に理解できる普遍的・合理的な制度を提案していく必要がある。
 この点、専門調査会では、ごく限られた国の契約条項規制の紹介にとどまり、国際的な視点、日本の消費者契約法の規律がグローバル・スタンダードとなり得るか、という観点での議論が全くされていなかったのは残念である。

3) 「普通の消費者」のあるべき姿
  消費者被害を起こさないために最も重要なのは、相手が海外事業者であれ国内事業者であれ、勧誘を受けても「意に沿わない契約はしない」という決断と明確な意思表示ができる消費者、また、契約内容を事前にちゃんと読んで理解し、違約金が高過ぎるなど納得できない条項があれば契約しないという判断ができる消費者を、一人でも多く育てることである。

 この点、今回提案されている第4条第3項への規定の追加は、「事業者の言葉を鵜呑みにする騙されやすい消費者」「契約する気はないとはっきり言えない気の弱い消費者」を救済するものとなっている。
 平均的・一般的な消費者、すなわち「普通の」消費者は、このような勧誘を受けても契約はしない(それでも契約する場合は自己責任)と思われるところ、あらゆる消費者取引に適用される一般法である消費者契約法に救済規定を設けることは、普通の消費者の自己責任の意識を著しく阻害する。自分の判断や行動に責任を持つことのできる普通の消費者に対して、消費者はその程度の意識・存在で良いのだという「誤ったメッセージ」を与えてしまうことを強く懸念する。

 また、不当条項規制の無制限な拡大は、自らに不利な点も含めて契約条項を理解し、価格その他の兼ね合いも考慮した上で、提示された条件に同意して契約している普通の消費者の意向を無視するものである。
 納得して契約したのであれば「消費者といえども一方的な取消しはできない」という原則を明確に打ち出すべきである。次代を担う消費者が自らを守るために最も重要なメッセージは、「安易な契約をしない」ということである。事業者から提供される情報を活用し、自らも情報を収集した上で、契約内容について十分に理解して意思表示することのできる消費者の育成にこそ力を入れるべきと考える。

4) 取消権以外の被害救済策
 平均的・一般的な消費者には自己責任を問うべき事案であっても、現実には、様々な事情で合理的な判断をできない消費者が一定程度存在し、被害に遭いやすい状況にあることは否定できない。しかしこれは消費者側の特別な事情であるから、そのような特性を持つ消費者が一部に存在することを理由として一般的な権利を設けるという方向は適切ではない。消費者側の事情に着目した、特例的な救済措置を検討すべきである。

 例えば、消費生活センターの手に余るケースであっても、弁護士が介入することにより、民法の公序良俗や暴利行為などを主張して法的に争うことが可能な場合があると思われる。しかし消費者にとって弁護士費用の負担は重い。そこで、「当該消費者は契約時に判断能力が不足していた」ことを何らかの形で認定した上で自治体が弁護士費用を補助するなど、民事法律扶助のような制度を創設することが考えられる。事業者の悪質な行為については、現行法を最大限に活用して「消費者がきちんと戦える」環境を整備することが重要である。

 また、国際取引の紛争に関しては、どちらの当事者にとっても訴訟という解決策は現実的ではない。このため海外では、消費者救済策の一環として、低コストで迅速に紛争解決に導くオンラインADRの仕組みを政府主導で導入するケースが増えている。日本においても、このような手続き面での環境整備を検討すべきである。

5) 事業者への行為規制
 他方、専門調査会においては、前回改正及び今回提案の内容にとどまらず、「消費者が合理的判断をできない事情を利用して契約を締結させる」類型について手当が必要という意見が繰り返し述べられてきた。
 消費者の特殊事情に「つけ込んで」契約させる行為は確かに許されるべきではない。しかし事業者にそのような行為を「やめさせる」ためには、何をしてはいけないか(どんな行為が「つけ込む」に当たるか)を具体的に定義し、まず(条例ではなく)法で明確に禁止し、違反に対しては厳正に法執行を行うべきである。
 事業者が「つけ込んだ」ことを消費者がどのように証明するかの見通しもなく取消権のみを付与することは「消費者契約法改正ありき」の議論に他ならず、判断力の不足した消費者を悪質事業者から保護するにあたり、真に有効な施策を検討する姿勢とは言えない。

6) 「消費者・事業者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」などデータによる検証
 「情報通信技術の発達」は、従来の「消費者」概念にも大きな変化をもたらしている。インターネット・オークションやフリマ・アプリ、シェアリング・ビジネスなどを通じて、消費者が財・サービスの供給者側に立つことが容易になった現在、「事業者」「消費者」という二元的な捉え方、及び「事業者と消費者の構造的な格差」という消費者契約法の大前提がそのまま当てはまる場面は、限定されてきている。

 PIO-NET等に集約される相談事例は、日々締結され問題なく履行される膨大な量の消費者取引のうち、ほんの一部に過ぎない。消費者取引がどのように変化し、現在どのような状況にあるのか、全体を俯瞰できるデータをもとに、真の課題はどこにあるのかを議論すべきである。
Posted by 沢田 登志子 at 14:59 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
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