これからのネット取引を考える ＥＣネットワーク

どうも、相談担当です。

第四話の続き

外見で人を判断してはいけませんが、わたしは念のため、事務方から男性職員を呼んできて「記録係」という名目で同席させました。

担当者は、彼の顔をまっすぐ見つめながら、あくまで物静かな口調で話し始めました。

「わたしは幸い、今回のあなたの契約を契約当初から知っていますが、今回はその解約をご希望ということですが、その理由は改めて何なのでしょうか」
「・・・」
「こちらではですね、特にあなたに不当な契約をさせたとは思っていないんですよ」
「・・・」
「当時、彼女から聞くところによると、あなたは喜んで契約してくれていたと言っていましたよ、特に無理に契約させたという感じでもなかったようですし」
「・・・」
「クーリングオフも設けていますし、それを過ぎて彼女がいなくなったからって解約といわれても、それでは話になりませんよね、大人なんですから、もっと契約に責任を持たないと」
「・・・」

担当者はこの間、ずっと彼を見つめ、彼は下を向いたまま微動だにしません。
ダメだこりゃー、会話が成立していません。
本来、当事者間で話し合う時には、最初から首を出すことは避けるのですが、さすがにわたしが入らないとマズそうな気配です。とりあえず、担当者の視線を彼ではなくこちらに向けてもらい、彼を精神的に開放しないとなりません。

「すみません、わたしが彼から聞いた話ですと、そもそもその担当の女性が彼を電話で呼び出したときは、会員権の販売目的であることを聞いていないということですし、そうであったら行かなかったということですよ、先ず、販売目的隠匿はマズいですよね」
「しかもCDの売買契約になっているようですが、彼はCDはただでもらえると聞いていて、CDを買う契約になるなんて一言の説明が無かったということですし、会員権自体も、すごく得だと説明をされていたようですが、実際それほど得なのかどうかかなり疑問みたいですし」
「契約に責任を持てとおっしゃいますが、それは双方納得の上で問題性のない契約であればごもっともですが、今回、そちらの勧誘方法自体にも問題性があるように思われますので、彼に契約に責任を持てというのであれば、そちらも同じなのではないでしょうか」

ああ、わたししゃべり過ぎかも・・。

「・・問題あると思います・・」

彼が下を向いたまま、はじめて口を開きました。本当に小さな声で振り絞るように。ただ、彼が発した言葉はそれのみでした。その後も、最後までわたしが担当者と話をしていました。

「とりあえず会社に持ち帰って検討します、後ほど回答いたしますので、では今日はこれで」

担当者は金時計を見ながら席を立ちました。外見と違って、とりあえず（わたしとは）マトモな話が出来てよかったよかった・・。
彼を見ると、まだフリーズしたままです。

「あとは向こうの結果を待ちましょう」
「はい・・」

その後、事業者の担当者から、検討した結果ということで、わたしのところに連絡がありました。

次週に続く　（すみません、書ききれませんでしたです）