ODRの国際シンポジウムをなんと日本で!
[2018年08月20日(Mon)]
一橋大学法学研究科グローバル・ロー研究センターの主催です。
「AI・ビッグデータ時代の紛争ガバナンス - Online Dispute Resolution -」
9月21日(金)13:00-17:00、一橋講堂で開催されます。私もパネルディスカッションに参加させていただきます。
私は1998〜2000年頃、経産省(当時は通産省)でEコマースの消費者政策を担当していました。この分野で最も重要なのは「行動規範(自主規制)とADR」という思いは、その頃からずっと変わりません。法律は技術の進歩に追いつかない。のみならず、各国単位の法規制は、国境を越える取引には実効性がない。だから事後的な紛争解決を手厚くして情報を蓄積し、自主的な行動規範や共通ルール整備にフィードバックさせる仕組みが重要。という問題意識です。
少額取引なのでもちろん裁判は現実的ではないし、距離も離れているので当然オンラインで紛争解決手続きを進めることになる。つまりOnline Dispute Resolution(ODR)が必須。
経産省の委託事業として実施された3年間の実証実験を経て、2006年、相談&ADRの独立機関としてECネットワークを設立しました。実際には、業務の99%が相談です。消費者から申立て可能なADRの相手方が会員に限定されているという制度設計上の問題もありますが、外部から委託で受けている業務を含めても、ADR/ODRの実績は非常に少ないです。上記シンポジウムのパネルディスカッションでは、日本人の「相談好き」=やや他力本願的な体質が、自律的な紛争解決手段であるADRの普及を妨げているかも?といった話もさせていただこうと思っています。
シンポジウムには、eBay/PaypalでODRシステムを一から開発し、その後も独立してODRビジネスを推進しているコリン・ルールさんも参加されます。コリンさんのこの本は、私にとってODRの教科書でした。ECネットワーク設立にあたり、メール等でもいろいろ教えていただきましたが、私自身はお会いするのは初めてで、ちょっと緊張します。
アメリカからはもうお一方、Dispute System Design(DSD)を専門とする、スタンフォード大学のジャネット・マルティネス先生も登壇されます。「デザイン」とは「問題解決のアプローチ」のことだそうです。まずニーズの把握からという考え方はとても納得できます。
(参考)一橋大学法学研究科 渡邊真由先生のプレゼン資料(2018/07/27, 日本ADR協会)
さてEコマースの分野では、2005年頃から、越境取引のトラブルが目立ってきました。日本ではまず相談体制の整備が必要と考え、ECネットワークとしてはODRの提案は封印し、EUの制度(ECC-Net)をモデルに、苦情処理国際連携の構想(ICA-Net)を作りました。経産省のバックアップのもと、2007年頃から様々な場で提案してきた結果、2009年に設立された消費者庁がこの提案を一部取り入れて、2011年に越境消費者センター(CCJ)を開設しました。この構想を策定した検討会の座長として、また海外向けスポークスマンとして、終始議論を牽引してくださった早川吉尚教授も上記シンポジウムに登壇されます。ODRに関連する様々な国際的ルール整備の状況などのお話が聞けると思います。
消費者庁の実証実験という位置付けだったCCJは、2015年に国民生活センターに移管され、越境取引でトラブルに遭った消費者が安心して相談できる先が確保されました。この延長線上にODRが実現すると更に良いと思います。他方、それとは異なるODRニーズも浮上しています。
C2C取引です。かつてはインターネット・オークション、今はフリマアプリとシェアリングエコノミーに広がり、市場規模は拡大の一途を辿っています。2016年のOECDレポートでは、これらをまとめてPeer Platform Marketと呼んでいます。peer to peer(P2P)のファイル交換という言葉もあるように、peerは「同等の者」という意味ですね。
プラットフォーム関連では、競争法的な観点を含め様々な論点がありますが、利用者保護や信頼性確保という文脈では、ODRは有効な選択肢の一つとされています。情報量・交渉力の格差を前提とする消費者保護の考え方は、「同等の者」間には馴染まないという背景があるのだと思います。パネルディスカッションでは、そんな議論も出てくるかも知れません。
このほか、海外で実用化されているODRの紹介、紛争解決システムへのAIの活用、B2Bの視点など、興味深い内容が予定されています。参加無料です。同時通訳も用意されていますので、奮ってご参加ください。申込みフォームはこちらです。
(本ブログでの関連記事)
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オンラインで紛争解決(Online Dispute Resolution)
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「AI・ビッグデータ時代の紛争ガバナンス - Online Dispute Resolution -」
9月21日(金)13:00-17:00、一橋講堂で開催されます。私もパネルディスカッションに参加させていただきます。
私は1998〜2000年頃、経産省(当時は通産省)でEコマースの消費者政策を担当していました。この分野で最も重要なのは「行動規範(自主規制)とADR」という思いは、その頃からずっと変わりません。法律は技術の進歩に追いつかない。のみならず、各国単位の法規制は、国境を越える取引には実効性がない。だから事後的な紛争解決を手厚くして情報を蓄積し、自主的な行動規範や共通ルール整備にフィードバックさせる仕組みが重要。という問題意識です。
少額取引なのでもちろん裁判は現実的ではないし、距離も離れているので当然オンラインで紛争解決手続きを進めることになる。つまりOnline Dispute Resolution(ODR)が必須。
経産省の委託事業として実施された3年間の実証実験を経て、2006年、相談&ADRの独立機関としてECネットワークを設立しました。実際には、業務の99%が相談です。消費者から申立て可能なADRの相手方が会員に限定されているという制度設計上の問題もありますが、外部から委託で受けている業務を含めても、ADR/ODRの実績は非常に少ないです。上記シンポジウムのパネルディスカッションでは、日本人の「相談好き」=やや他力本願的な体質が、自律的な紛争解決手段であるADRの普及を妨げているかも?といった話もさせていただこうと思っています。
シンポジウムには、eBay/PaypalでODRシステムを一から開発し、その後も独立してODRビジネスを推進しているコリン・ルールさんも参加されます。コリンさんのこの本は、私にとってODRの教科書でした。ECネットワーク設立にあたり、メール等でもいろいろ教えていただきましたが、私自身はお会いするのは初めてで、ちょっと緊張します。
アメリカからはもうお一方、Dispute System Design(DSD)を専門とする、スタンフォード大学のジャネット・マルティネス先生も登壇されます。「デザイン」とは「問題解決のアプローチ」のことだそうです。まずニーズの把握からという考え方はとても納得できます。
(参考)一橋大学法学研究科 渡邊真由先生のプレゼン資料(2018/07/27, 日本ADR協会)
さてEコマースの分野では、2005年頃から、越境取引のトラブルが目立ってきました。日本ではまず相談体制の整備が必要と考え、ECネットワークとしてはODRの提案は封印し、EUの制度(ECC-Net)をモデルに、苦情処理国際連携の構想(ICA-Net)を作りました。経産省のバックアップのもと、2007年頃から様々な場で提案してきた結果、2009年に設立された消費者庁がこの提案を一部取り入れて、2011年に越境消費者センター(CCJ)を開設しました。この構想を策定した検討会の座長として、また海外向けスポークスマンとして、終始議論を牽引してくださった早川吉尚教授も上記シンポジウムに登壇されます。ODRに関連する様々な国際的ルール整備の状況などのお話が聞けると思います。
消費者庁の実証実験という位置付けだったCCJは、2015年に国民生活センターに移管され、越境取引でトラブルに遭った消費者が安心して相談できる先が確保されました。この延長線上にODRが実現すると更に良いと思います。他方、それとは異なるODRニーズも浮上しています。
C2C取引です。かつてはインターネット・オークション、今はフリマアプリとシェアリングエコノミーに広がり、市場規模は拡大の一途を辿っています。2016年のOECDレポートでは、これらをまとめてPeer Platform Marketと呼んでいます。peer to peer(P2P)のファイル交換という言葉もあるように、peerは「同等の者」という意味ですね。
プラットフォーム関連では、競争法的な観点を含め様々な論点がありますが、利用者保護や信頼性確保という文脈では、ODRは有効な選択肢の一つとされています。情報量・交渉力の格差を前提とする消費者保護の考え方は、「同等の者」間には馴染まないという背景があるのだと思います。パネルディスカッションでは、そんな議論も出てくるかも知れません。
このほか、海外で実用化されているODRの紹介、紛争解決システムへのAIの活用、B2Bの視点など、興味深い内容が予定されています。参加無料です。同時通訳も用意されていますので、奮ってご参加ください。申込みフォームはこちらです。
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