にせラブストーリー(第四話)
[2008年06月25日(Wed)]
どうも、相談担当です。
シリーズ化してしまったので、別のストーリーをまた・・。
彼は20歳代半ば、グルメとはおおよそ無縁のわたしでも店名を聞いたことのある中華料理店の調理担当ということでした。短く刈り上げた頭が印象的です。
話をしてみると非常にシャイなタイプです。接客担当でなくて良かった。
「もう半年以上前の話なんですが、ある日、携帯に女性から電話がかかってきたんです」
「何て言ってかかってきたんですか?」
「最初は、なんだか分からなくて、何かのキャンペーンやっているって話でしたけど、ただしばらくは雑談みたいな話していました、そのうち、私たち気が合うねって、自分の知っているお店に遊びに来て欲しい、って言われて、そこは実際は事務所みたいなところでしたが・・」
彼は常に下を向いて話をします。
でも、その担当の女性の話をする時だけは、なぜか笑みがこぼれています。
「そこで、その女性に、電化製品とか旅行とか好き?って聞かれて、まあ、はいって答えたら、その買い物とかが一生安くできる会員権を、今、キャンペーン期間だから、今、会員になれば今後ものすごく得するんだよ、って言われました」
「どう得するんですか?」
「10万円かかる旅行が20%引きで行けるから、年に2回行ったら4万円も得するし、電化製品も10万円の商品が20%引きで買えるから、そこでも2万円得するわけだから、それが一生続くことを考えたら、今後ものすごく得するんだよって、なんだかそんな気がしてきました」
彼は、その一生モノという会員権を、100万円近い金額で契約したということです。100万円得するには、いくらその会員権で買い物をすればよいのでしょうか。20%割引だったとして500万円です。それで初めてトントンです。
しかも彼が見せてくれた、その会員権で利用できる店のリストには、20%割引は最高値であって、大方の割引率は10%前後です。それなら、約1000万円分、その会員権で買い物しないとトントンになりません。
しかも、その店リストに名の通った店名はほとんど確認できませんでした。電化製品なんて、大手家電量販店にいけば、もっと安く売っているような気もします。
「金額が高いと思わなかったのですか?断ろうとか?帰りたいとか?」
「でも、彼女が熱心に勧めるし、なんだか断れなくなって・・、それまでは、いろいろ楽しい話をしてきたもんですから・・、後から男性も出てきて、毎月2万ぐらいのローンで支払えるよ、毎月それぐらい得するんだから同じジャン、って熱心に説明されると、やっぱ、そんな気がしてきちゃって」
「ところでローンの契約書は、商品名が英会話教材のCDとなっていますけど、そのことは知っていましたか?」
「あ、CDはあくまでプレゼントだって言っていました、契約はあくまで会員権だって、それに私はパソコンなんて持っていませんから」
「そこで、どうして今回は解約したいと思ったんですか?」
「・・しばらく彼女と電話でやり取りできていたんです・・楽しかったです・・でも少し前から全然電話に出てくれなくなって、なんだか、もしかしたら騙されたのかな、って思うようになりました」
なんだかパンチがある契約解除や取り消しの理由が見つからないかも・・。
ただ、契約に問題性が大いにありなので、本人より事業者とローンを組んだ信販会社に、書面で契約解除の意思表示をしてもらいます。
事業者に電話すると、
「書面は見ました、もう当時の担当者はここにはいないんですがね、なのでこちらで確認のしようがありません、だから本人に確認したい部分がいくつかあります、良ければそちらに伺いますので、直接本人に話をさせてもらえませんか」と言ってきました。
彼に伝えると、女性が既にいなくなっていることについて、一瞬、がっかりした顔をしました。
「あぁー、もういないんですかぁ・・」
さらに、
「私、その業者とうまく話せるかどうか、自信が無いです・・」
と、すっかり弱気です。
「大丈夫ですよ、わたしも一緒にいますから、あなたが思っていることをそのまま言えば良いのです」
日程調整して、彼と事業者とわたしで話し合いの場を持ちました。
事業者より10分ほど早く来るよう伝えておいた彼は、かなり緊張しています。
「大丈夫ですから、手紙に書いた内容を、あなたが疑問に思っていることを、そのまま言えばいいんですから、リラックスしてくださいね」
事業者の担当者が来ました。
応接室に座った担当者のいでたちは、黒地にグレーのピンストライプの入ったダブルのスーツに、同じく黒の、今度は光沢のあるシャツ、それに黄色の唐草模様の入ったネクタイにとんがった靴、金一色の時計に色の入ったメガネをかけ、髪は全てオールバックでした。
担当者は、その色メガネ越しに彼を一瞥しました。
彼は・・、ヤバイ、私の横で、思いっきりフリーズしています。
こんな状況で、うまく話し合いが進められるのでしょうか?
次週に続く。
シリーズ化してしまったので、別のストーリーをまた・・。
彼は20歳代半ば、グルメとはおおよそ無縁のわたしでも店名を聞いたことのある中華料理店の調理担当ということでした。短く刈り上げた頭が印象的です。
話をしてみると非常にシャイなタイプです。接客担当でなくて良かった。
「もう半年以上前の話なんですが、ある日、携帯に女性から電話がかかってきたんです」
「何て言ってかかってきたんですか?」
「最初は、なんだか分からなくて、何かのキャンペーンやっているって話でしたけど、ただしばらくは雑談みたいな話していました、そのうち、私たち気が合うねって、自分の知っているお店に遊びに来て欲しい、って言われて、そこは実際は事務所みたいなところでしたが・・」
彼は常に下を向いて話をします。
でも、その担当の女性の話をする時だけは、なぜか笑みがこぼれています。
「そこで、その女性に、電化製品とか旅行とか好き?って聞かれて、まあ、はいって答えたら、その買い物とかが一生安くできる会員権を、今、キャンペーン期間だから、今、会員になれば今後ものすごく得するんだよ、って言われました」
「どう得するんですか?」
「10万円かかる旅行が20%引きで行けるから、年に2回行ったら4万円も得するし、電化製品も10万円の商品が20%引きで買えるから、そこでも2万円得するわけだから、それが一生続くことを考えたら、今後ものすごく得するんだよって、なんだかそんな気がしてきました」
彼は、その一生モノという会員権を、100万円近い金額で契約したということです。100万円得するには、いくらその会員権で買い物をすればよいのでしょうか。20%割引だったとして500万円です。それで初めてトントンです。
しかも彼が見せてくれた、その会員権で利用できる店のリストには、20%割引は最高値であって、大方の割引率は10%前後です。それなら、約1000万円分、その会員権で買い物しないとトントンになりません。
しかも、その店リストに名の通った店名はほとんど確認できませんでした。電化製品なんて、大手家電量販店にいけば、もっと安く売っているような気もします。
「金額が高いと思わなかったのですか?断ろうとか?帰りたいとか?」
「でも、彼女が熱心に勧めるし、なんだか断れなくなって・・、それまでは、いろいろ楽しい話をしてきたもんですから・・、後から男性も出てきて、毎月2万ぐらいのローンで支払えるよ、毎月それぐらい得するんだから同じジャン、って熱心に説明されると、やっぱ、そんな気がしてきちゃって」
「ところでローンの契約書は、商品名が英会話教材のCDとなっていますけど、そのことは知っていましたか?」
「あ、CDはあくまでプレゼントだって言っていました、契約はあくまで会員権だって、それに私はパソコンなんて持っていませんから」
「そこで、どうして今回は解約したいと思ったんですか?」
「・・しばらく彼女と電話でやり取りできていたんです・・楽しかったです・・でも少し前から全然電話に出てくれなくなって、なんだか、もしかしたら騙されたのかな、って思うようになりました」
なんだかパンチがある契約解除や取り消しの理由が見つからないかも・・。
ただ、契約に問題性が大いにありなので、本人より事業者とローンを組んだ信販会社に、書面で契約解除の意思表示をしてもらいます。
事業者に電話すると、
「書面は見ました、もう当時の担当者はここにはいないんですがね、なのでこちらで確認のしようがありません、だから本人に確認したい部分がいくつかあります、良ければそちらに伺いますので、直接本人に話をさせてもらえませんか」と言ってきました。
彼に伝えると、女性が既にいなくなっていることについて、一瞬、がっかりした顔をしました。
「あぁー、もういないんですかぁ・・」
さらに、
「私、その業者とうまく話せるかどうか、自信が無いです・・」
と、すっかり弱気です。
「大丈夫ですよ、わたしも一緒にいますから、あなたが思っていることをそのまま言えば良いのです」
日程調整して、彼と事業者とわたしで話し合いの場を持ちました。
事業者より10分ほど早く来るよう伝えておいた彼は、かなり緊張しています。
「大丈夫ですから、手紙に書いた内容を、あなたが疑問に思っていることを、そのまま言えばいいんですから、リラックスしてくださいね」
事業者の担当者が来ました。
応接室に座った担当者のいでたちは、黒地にグレーのピンストライプの入ったダブルのスーツに、同じく黒の、今度は光沢のあるシャツ、それに黄色の唐草模様の入ったネクタイにとんがった靴、金一色の時計に色の入ったメガネをかけ、髪は全てオールバックでした。
担当者は、その色メガネ越しに彼を一瞥しました。
彼は・・、ヤバイ、私の横で、思いっきりフリーズしています。
こんな状況で、うまく話し合いが進められるのでしょうか?
次週に続く。
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