知らず知らずのうちにはめている枠をはずす
[2015年10月23日(Fri)]
障害のある方が企業に就職するまで全面的にサポートしている特定非営利法人くるくるの安城センター(愛知県安城市)で、軽度の知的・発達障害のある中学3年生〜高校3年生15名がドリームマップワークショップを受講しました。
ドリマ先生としてこのワークショップに携わったのは、愛知県の田中健さん、大崎玲子さん、三輪裕子さん、そして、三重県の毛利謙仁さんです。
(写真右から 田中さん、大崎さん、三輪さん、毛利さん)
ワークショップ開催のきっかけとなったのは、昨年のNPO法人安城まちの学校のイベント。
イベントの一つとして、愛知県のドリマ先生であいちアフタースクールで活動している田中健さんがドリームマップのワークショップを行いました。
『くるくる』のセンター長さんはこのイベントのチラシを手に取られました。
のっていた『ドリームマップ』が気になり、あいちアフタースクールのHPとドリマ協会のHPをご覧になり、 「是非施設の子どもたちにやってもらいたい。」とご相談があったのです。
『くるくる』さんが普段の活動の中で問題に感じてこられたことは二点。
一つ目は、施設に通ってきている子ども達が自分で自分の将来を決めることがなかなかできていないこと。「どんな職業につきたい」と聞いても、子ども達の答えは、「わからない」「学校の先生がここにしなさいと言ったから」という意見が多いのです。
二つ目は、自分の意見がなく就職した子は、早い段階での離職率が高いこと。
子ども達が自分自身で将来の夢を描き、自分で夢に向かって努力することができれば、仕事も長続きし、本人も仕事が楽しいものになるのでは、と期待されてのご依頼でした。
ドリームマップは就労支援移行事業所、特別支援学校などでも採用され、『特別支援教育充実のための キャリア教育ガイドブック(国立特別支援教育総合研究所 編著)』にも、キャリア教育の事例の一つとして紹介されるなど、障害のある方々にも活用していただいていますが、田中さんは障害を持った方と接することがほとんどなかったため、授業を行なうにあたり、気がかりがありました。
「子ども達がどこまで理解してもらえるかの見当が全くつかず、どこまで伝えるべきか迷いました。また、ドリマ先生は何人いれば十分なのか、などのサポート体制や、実際に子ども達とどうコミュニケーションをとればいいかわからず、不安を感じました。」
不安はあっても、「力になりたい」
これは田中さんが決めていたこと。
事務局に相談し、共感するドリマ先生の協力も得て、まずは、事前にスタッフさんとの打ち合わせを密にすることにしました。
打ち合わせでわかったことは、スタッフさんたちにも心配があるということでした。
「子どもたちは「今ここですべきこと」の判断はできても、「10年後の未来」については想像することが難しい子ども達がはたしてドリームマップで夢を描くことができるのだろうか?と心配されていました。また、個性あふれる子ども達が6時間以上集中して取り組むことができるかどうかも懸念されていました。ただ、子どもたちはその特性から、自己肯定感や自己承認の気持ちが低く、自分はなにをやってもうまくできないと思いこんでいる子が多いため、もし夢を描くことができなかったとしても、「自分は自分でいいんだ」と思ってもらえたらうれしい、という思いも持っていらっしゃいました。」
次に行ったのは、子ども達の普段の活動にボランティアとして参加すること。
一緒に過ごすことで、子ども達の様子を知り、同時に自分たちのことを子ども達に知ってもらうことで、子ども達の不安を解消しようと、田中さんと大崎さんの二人のドリマ先生が3回、活動に参加されました。
「この活動の中で、スタッフさんが子ども達に対して行なっている声かけや伝え方の工夫もドリームマップのワークショップに活かすことができ、有効でした。」
事前の準備は着々と進みました。
「ワークブックの素材シートをあらかじめ切ってもらったり、写真や切り抜きも事前に持ってきてもらい、スタッフさんに確認していただくと共に、当日もパソコン5台を使って、写真をプリントアウトできる体制を整えていただきました。参加者の性格や特性をスタッフさんがメモにして教えてくださったのも参考になりました。」
ワークショップは10時〜17時。
子どもたちは、「コツコツ真面目にきちんと仕事をこなせる工場で製造する人」
「お客様を笑顔にするヴェルサウォーク(ショッピングモール)の店員」
「ジャンプなどに掲載される漫画家」
「みんなに喜んでもらえるシェフ」
など具体的な夢をワクワクと描きました。
スタッフさんから保護者の方にもお声かけいただき、4名の方が発表に同席されました。
子ども達が理解しやすいように、期待通りの学びを得られるように、田中さんたちは様々な工夫を重ねました。
「当日の説明時には、子ども達への指示を常にひとつずつにし、わかりやすく、シンプルに、を心がけました。自己承認と自己肯定感を軸に授業を進め、大きな付箋を用意し、応援メッセージを書き入れていただくようにしました。プロジェクターにメッセージを文字として映し、音楽と共に流しました。事前の見学を通じ、聞いてピンと来なくても、見てわかりやすいこともある、という特性を知ったので、子ども達に応援の気持ちがしっかり伝わるように準備しました。」
田中さんは当日をこう振り返ります。
「私の事前の不安は何だったのかと思うほど、子どもたちはすごい力を持っていました。どうしても学校や社会の中で知らず知らずのうちに障害という枠に収まってしまう子どもたち、知らず知らずのうちに枠にはめてしまっている大人がいるのかなぁと思いました。子どもたちが枠にはまらないように導いてあげる、「すごい力を持っているんだよ」ということを伝えて行こうと思いました。
1967年にこだわっていた男の子がいました。彼は、計算がすごく早いんです。私の生年月日を言うと一瞬で覚えて私の年齢を即座に言ってくれました。計算が苦手な私はすごいなぁと感心しました。私はもともと人間の持っている能力は全て同じ、平等だと思っています。人と比べれば苦手なことうまくできないこともあるかもしれない。でもその分誰にも負けない優れた一面がある。だから人と比べずに自分のいいところを見て伸ばして欲しいそう思っています。(ドリマの考え方ですね)今回で確信しました。このことを今後もたくさんの人に伝えていこうと思いました。
今回のドリマ授業は事前の打ち合わせから当日のフォロー、たくさんのアドバイスをくれ、最後まで笑顔で協力してくれた大崎さん。遠くから来てくれて、初対面なのに私の隣で私が忘れていることをさりげなくフォローしてくれた毛利さん。いつも私の夢を応援し、素敵な出会いを提供してくれ、当日も笑顔で見守ってくれ素敵な写真をいっぱいとってくれた三輪さん。夢はみんなの応援があって実現できる。加速する。代表理事の秋田稲美さんの言っていたことを実感しています。夢は一人では叶わない。皆さんのおかげです。」
今後の障害のある方向けのワークショップの開催に役立てるようにと、今回のワークショップを通じての学びなどを、大崎さんがまとめてくださいました。
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★子どもたちの行動や反応(良かったこと、対応に困ったこと)
・ある男の子はキャッチフレーズに1967年とだけ書いてあり、何度聞いても1967年、1967年と繰り返すだけでなぜなのかを聞き出すことができませんでした。ですが施設のスタッフがヘルプしてくださり、理由を聞き出してそれならこう書きましょうとアドバイスしてくれました。ドリマ先生だから引き出せたこと、対応を知り尽くした施設のスタッフだから引き出せたこと。どちらが欠けてもうまくいかなかったと思います。(田中さん)
・発達障がいのAくん。施設に通所してまだ1か月。貧乏揺すりや時折テーブルを叩く様子がありました。最初は「落ち着きのある人になる」を夢に描いていましたが、作業の進行や声かけで「ゲームの技術をあげてゲームを作る」という夢を追加してくれました。その後も時折貧乏揺すりやけん玉で遊び始める様子がありましたが、声かけに席に着くことができました。ドリームマップ作製中は貧乏揺すりがピタと収まり集中して行えました。時折、ドリマ先生の名前を呼んで質問する場面もありました。発表では堂々と発言ができました。「商品を並べたい」を夢に描いたBさん。最初は表情が硬く声を小さかったです。夢も漠然とした表現でしたが作業を進めると「食品をきれいにならべたい」「お客さんにきれいと言われたい」と話してくれました。ドリームマップの作成では、写真選びに時間がかかりましたが、その過程で「お父さんに車を買ってあげたい」「お父さんにプレゼントをあげたい。パンツとか靴下をあげたら喜んでくれたよ。」と笑顔でドリマ先生に話すようになりました。(毛利さん)
・子どもたちは素直で、好きなことをワークブックに書くことも、いいところ探しもできていました。自分のいいところがなかなか書けない子にはスタッフさんからいいところを教えてもらえるようスタッフさんにお願いしました。 なりきりインタビューも特に困ることはなく、インタビューし合っていました。 ドリマ作成では声を掛けない方がいいくらい集中して作業していました。 スタッフさんが、前日までに資料や切抜きの事前準備を子どもたちにしてくださっていましたし、当日もパソコンを5台使って資料を出すお手伝いをしてくださいました。素材シートも切ってありました。 スタッフさんが5名、ドリマ先生が4名いたので、なにをしたらいいか困っている子にすぐに対応ができました。 こちらが対応に困ったことはありませんでした。(大崎)
☆子どもたちの変化
・最初はこれでいいの?こういう書き方でいいの?と自分の書いていること、やっていることを気にしていました。最後は自分たちがやりたいように、自分の思うがままに自由に作っていました。自分のイメージを自由に表現する楽しさが芽生えたのだと思います。 開催前に3回訪問し、普段の活動を確認しました。途中で集中力が切れてしまう子が何名かいました。ですがドリームマップの日は普段の活動時間よりも長い時間でしたが、最後まで集中していました。集中して話を聞く姿、ドリームマップを作成する姿は全く障害を持っているとは感じられませんでした。(田中さん)
・授業前は夢のある子は2〜3人だったのですが、ドリマ作成にはいると好きなものや好きなことに囲まれているからか、子どもたちの目が生き生きとしてきました。発表ができないかもしれない、とスタッフさんが懸念されていた子も堂々と発表していました。(大崎)
☆施設の先生方の変化・感想
・「想像以上に子どもたちが生き生きと積極的に活動に参加していて驚いた」「みんなの真剣に話を聞く姿に驚いた。(普段はあまり見られない)」 「言語化できないだけで、どの人も自分の夢を心の中に持っている事が分かった」「3年間見てきた子たちが自分の夢を自分で語っている姿に感動した」「みんなのことがさらに知る事ができてよかった」「欠席していたメンバーにもやってもらいたい」「夢を持つことに障害の有無は関係ないと思った」(田中さん)
・ドリームマップに理解がある先生が多く、それぞれの子どもたちのフォローをしていただき進行が捗りました。感想では子どもたちが堂々と夢を語る様子をみたある先生が感極まって泣き出してしまう場面がありました。日ごろから子どもたちに真摯に向き合う姿勢がみられ、施設全体がとてもよい雰囲気でした。(毛利さん)
・1人のスタッフさんのご意見です。 「授業前まで不安でした。なかなか自分を表現しない子や意見を求めても”別に”という答えばかりの子もいたので、最後までできるか心配でした。でも、授業が始まると好きなことをどんどん書いていてびっくりしました。全員が発表できるとは思いませんでした。普段は私たちが子どもたちに制限をかけて接していたのかもしれません。子どもたちの可能性や力に驚きました。」(大崎)
☆感想・特に印象に残ったこと
・施設の担当者の方が直前まで「夢がない子がほとんどです。本当に大丈夫でしょうか。」と心配していました。それを聞いて私は「大丈夫です。私たちが引き出します!!」と言いましたが、正直不安いっぱいでした。当日ドリームマップの下書きの時には心配は何だったんだという状態で、あっという間に自分の夢を書いていたのが印象に残っています。ある女の子は「夢?わからないな?」と悩んでいましたが、「将来やってみたい仕事はあるかな?」の問いに「図書館で働きたい」と嬉しそうに言ってくれました。夢と将来の職業が繋がらなかったようです。施設の担当者が言語にして書く、話すということが苦手とおっしゃっていましたが、確かにそうだなぁと思いました。言葉にするのが苦手でもみんな自分の中にはしっかりと自分の夢を持っているんだと思って安心しました。(田中さん)
・中学生から高校生と難しい年頃。ましてや障がいを抱えている子どもたちなので正直不安でした。しかし、実際行ってみると皆さん素直でキラキラしていました。感受性がいいのでしょうね。その反面、事前の情報のように自己肯定感が低い印象も受けました。作業が進むにつれて少しずつ自己開示し笑顔が増えてきた子どもたちが印象的でした。
発達障がいのCくん。「1967年生まれの42歳!」と数字にこだわりをもっていました。こだわっていることを否定せず受容し作業を進めました。そのうち「お笑い芸人になりたい」と夢を描くようになりました。作業後半からは挙手して発言することが多くなりました。感想では「(僕は)がんばりました!」と発言しうれしそう。自己肯定感が低い分、他者から認めてもらいたいという気持ちの一面がうがえました。ドリームマップの作製ではアイテム数にこだわりをもっていましたが、楽しそうに貼り続けたことが印象的でした。(毛利さん)
・10時から17時までの長い時間、誰一人として逃げ出すことなく、楽しそうに考え、自分の言葉で表現し、最後、発表も全員がすることができました。健さんが付箋を用意してくれて、子どもたちに友達への応援メッセージを書いてもらいましたが、「あの子にも書きたい」「この子にも書きたい」と応援がとまりませんでした。(大崎)
☆事前準備・当日・事後に関するGood&Better
・ドリームマップ普及協会事務局の三輪さんが当日たくさん写真を撮ってくれ、施設の担当者の方にも写真の確認をして頂きました。その写真を掲示して子どもたちに見てもらうそうです。大変喜んでいらっしゃいました。(田中さん)
・事前準備には田中さんと大崎さんが深く関わっていただきました。事前に施設の子どもたちと信頼関係を築き、先生方との情報共有も密にし、念密な打ち合わせ計画をされたことで、当日はとてもスムーズな進行でした。わたしはフェイスブックを通して情報を共有させていただき、それほど緊張することなくスっとその場に入ることができました。板書ツールを用意させていただき、進行に合わせて貼っていきました。田中さんの提案でプロジェクターを使ってメッセージを流す場面では涙する子どももいました。視覚や聴覚に訴える進行は効果的だったと思います。田中さん、大崎さんとは当日初めてお会いしましたが、不思議なもので息がぴったり合いました。回を重ねるうちにさらに子どもたちの夢を引き出すことができるのではないかなぁと思いました。今回は初めて県外のドリマ先生とのセッションで学ぶこともたくさんありました。交流も深めることによって自分の世界が広がっていくような楽しみを感じました。(毛利さん)
・現地に何度も足を運んでいたので、施設やその雰囲気、スタッフさんや子どもたちの顔がほとんど分かったので、緊張することなく臨めました。 健さん&もーさん(初対面)の息ぴったりの進行は見ていて安心でした。私は健さんの進行で抜けた分をフォローさせてもらいました。そのフォローを喜んで受け入れてくださり、ありがたかったです。 三輪ちゃんがいい顔ショットをいくつも撮ってくださいました。 スタッフさんの気遣い(ドリマ先生への昼食準備、子どもたちの資料集め、子どもたちへの声掛け)がありがたかったです。 ドリマ終了後、スタッフさんとのお話の中できっと今後も取り入れてくださるだろう予感がしました。(大崎)
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これらの報告も参考にしながら、障害のあるなしに関わらず、どんな方にも、自分自身で将来の夢を描き、夢に向かって主体的に歩みを進め、自分らしさを味わうために、ドリームマップを活用していただければと願っています。
ドリームマップワークショップの開催に興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
http://www.dream-map.info/contact.html
ドリマ先生としてこのワークショップに携わったのは、愛知県の田中健さん、大崎玲子さん、三輪裕子さん、そして、三重県の毛利謙仁さんです。
(写真右から 田中さん、大崎さん、三輪さん、毛利さん)
ワークショップ開催のきっかけとなったのは、昨年のNPO法人安城まちの学校のイベント。
イベントの一つとして、愛知県のドリマ先生であいちアフタースクールで活動している田中健さんがドリームマップのワークショップを行いました。
『くるくる』のセンター長さんはこのイベントのチラシを手に取られました。
のっていた『ドリームマップ』が気になり、あいちアフタースクールのHPとドリマ協会のHPをご覧になり、 「是非施設の子どもたちにやってもらいたい。」とご相談があったのです。
『くるくる』さんが普段の活動の中で問題に感じてこられたことは二点。
一つ目は、施設に通ってきている子ども達が自分で自分の将来を決めることがなかなかできていないこと。「どんな職業につきたい」と聞いても、子ども達の答えは、「わからない」「学校の先生がここにしなさいと言ったから」という意見が多いのです。
二つ目は、自分の意見がなく就職した子は、早い段階での離職率が高いこと。
子ども達が自分自身で将来の夢を描き、自分で夢に向かって努力することができれば、仕事も長続きし、本人も仕事が楽しいものになるのでは、と期待されてのご依頼でした。
ドリームマップは就労支援移行事業所、特別支援学校などでも採用され、『特別支援教育充実のための キャリア教育ガイドブック(国立特別支援教育総合研究所 編著)』にも、キャリア教育の事例の一つとして紹介されるなど、障害のある方々にも活用していただいていますが、田中さんは障害を持った方と接することがほとんどなかったため、授業を行なうにあたり、気がかりがありました。
「子ども達がどこまで理解してもらえるかの見当が全くつかず、どこまで伝えるべきか迷いました。また、ドリマ先生は何人いれば十分なのか、などのサポート体制や、実際に子ども達とどうコミュニケーションをとればいいかわからず、不安を感じました。」
不安はあっても、「力になりたい」
これは田中さんが決めていたこと。
事務局に相談し、共感するドリマ先生の協力も得て、まずは、事前にスタッフさんとの打ち合わせを密にすることにしました。
打ち合わせでわかったことは、スタッフさんたちにも心配があるということでした。
「子どもたちは「今ここですべきこと」の判断はできても、「10年後の未来」については想像することが難しい子ども達がはたしてドリームマップで夢を描くことができるのだろうか?と心配されていました。また、個性あふれる子ども達が6時間以上集中して取り組むことができるかどうかも懸念されていました。ただ、子どもたちはその特性から、自己肯定感や自己承認の気持ちが低く、自分はなにをやってもうまくできないと思いこんでいる子が多いため、もし夢を描くことができなかったとしても、「自分は自分でいいんだ」と思ってもらえたらうれしい、という思いも持っていらっしゃいました。」
次に行ったのは、子ども達の普段の活動にボランティアとして参加すること。
一緒に過ごすことで、子ども達の様子を知り、同時に自分たちのことを子ども達に知ってもらうことで、子ども達の不安を解消しようと、田中さんと大崎さんの二人のドリマ先生が3回、活動に参加されました。
「この活動の中で、スタッフさんが子ども達に対して行なっている声かけや伝え方の工夫もドリームマップのワークショップに活かすことができ、有効でした。」
事前の準備は着々と進みました。
「ワークブックの素材シートをあらかじめ切ってもらったり、写真や切り抜きも事前に持ってきてもらい、スタッフさんに確認していただくと共に、当日もパソコン5台を使って、写真をプリントアウトできる体制を整えていただきました。参加者の性格や特性をスタッフさんがメモにして教えてくださったのも参考になりました。」
ワークショップは10時〜17時。
子どもたちは、「コツコツ真面目にきちんと仕事をこなせる工場で製造する人」
「お客様を笑顔にするヴェルサウォーク(ショッピングモール)の店員」
「ジャンプなどに掲載される漫画家」
「みんなに喜んでもらえるシェフ」
など具体的な夢をワクワクと描きました。
スタッフさんから保護者の方にもお声かけいただき、4名の方が発表に同席されました。
子ども達が理解しやすいように、期待通りの学びを得られるように、田中さんたちは様々な工夫を重ねました。
「当日の説明時には、子ども達への指示を常にひとつずつにし、わかりやすく、シンプルに、を心がけました。自己承認と自己肯定感を軸に授業を進め、大きな付箋を用意し、応援メッセージを書き入れていただくようにしました。プロジェクターにメッセージを文字として映し、音楽と共に流しました。事前の見学を通じ、聞いてピンと来なくても、見てわかりやすいこともある、という特性を知ったので、子ども達に応援の気持ちがしっかり伝わるように準備しました。」
田中さんは当日をこう振り返ります。
「私の事前の不安は何だったのかと思うほど、子どもたちはすごい力を持っていました。どうしても学校や社会の中で知らず知らずのうちに障害という枠に収まってしまう子どもたち、知らず知らずのうちに枠にはめてしまっている大人がいるのかなぁと思いました。子どもたちが枠にはまらないように導いてあげる、「すごい力を持っているんだよ」ということを伝えて行こうと思いました。
1967年にこだわっていた男の子がいました。彼は、計算がすごく早いんです。私の生年月日を言うと一瞬で覚えて私の年齢を即座に言ってくれました。計算が苦手な私はすごいなぁと感心しました。私はもともと人間の持っている能力は全て同じ、平等だと思っています。人と比べれば苦手なことうまくできないこともあるかもしれない。でもその分誰にも負けない優れた一面がある。だから人と比べずに自分のいいところを見て伸ばして欲しいそう思っています。(ドリマの考え方ですね)今回で確信しました。このことを今後もたくさんの人に伝えていこうと思いました。
今回のドリマ授業は事前の打ち合わせから当日のフォロー、たくさんのアドバイスをくれ、最後まで笑顔で協力してくれた大崎さん。遠くから来てくれて、初対面なのに私の隣で私が忘れていることをさりげなくフォローしてくれた毛利さん。いつも私の夢を応援し、素敵な出会いを提供してくれ、当日も笑顔で見守ってくれ素敵な写真をいっぱいとってくれた三輪さん。夢はみんなの応援があって実現できる。加速する。代表理事の秋田稲美さんの言っていたことを実感しています。夢は一人では叶わない。皆さんのおかげです。」
今後の障害のある方向けのワークショップの開催に役立てるようにと、今回のワークショップを通じての学びなどを、大崎さんがまとめてくださいました。
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★子どもたちの行動や反応(良かったこと、対応に困ったこと)
・ある男の子はキャッチフレーズに1967年とだけ書いてあり、何度聞いても1967年、1967年と繰り返すだけでなぜなのかを聞き出すことができませんでした。ですが施設のスタッフがヘルプしてくださり、理由を聞き出してそれならこう書きましょうとアドバイスしてくれました。ドリマ先生だから引き出せたこと、対応を知り尽くした施設のスタッフだから引き出せたこと。どちらが欠けてもうまくいかなかったと思います。(田中さん)
・発達障がいのAくん。施設に通所してまだ1か月。貧乏揺すりや時折テーブルを叩く様子がありました。最初は「落ち着きのある人になる」を夢に描いていましたが、作業の進行や声かけで「ゲームの技術をあげてゲームを作る」という夢を追加してくれました。その後も時折貧乏揺すりやけん玉で遊び始める様子がありましたが、声かけに席に着くことができました。ドリームマップ作製中は貧乏揺すりがピタと収まり集中して行えました。時折、ドリマ先生の名前を呼んで質問する場面もありました。発表では堂々と発言ができました。「商品を並べたい」を夢に描いたBさん。最初は表情が硬く声を小さかったです。夢も漠然とした表現でしたが作業を進めると「食品をきれいにならべたい」「お客さんにきれいと言われたい」と話してくれました。ドリームマップの作成では、写真選びに時間がかかりましたが、その過程で「お父さんに車を買ってあげたい」「お父さんにプレゼントをあげたい。パンツとか靴下をあげたら喜んでくれたよ。」と笑顔でドリマ先生に話すようになりました。(毛利さん)
・子どもたちは素直で、好きなことをワークブックに書くことも、いいところ探しもできていました。自分のいいところがなかなか書けない子にはスタッフさんからいいところを教えてもらえるようスタッフさんにお願いしました。 なりきりインタビューも特に困ることはなく、インタビューし合っていました。 ドリマ作成では声を掛けない方がいいくらい集中して作業していました。 スタッフさんが、前日までに資料や切抜きの事前準備を子どもたちにしてくださっていましたし、当日もパソコンを5台使って資料を出すお手伝いをしてくださいました。素材シートも切ってありました。 スタッフさんが5名、ドリマ先生が4名いたので、なにをしたらいいか困っている子にすぐに対応ができました。 こちらが対応に困ったことはありませんでした。(大崎)
☆子どもたちの変化
・最初はこれでいいの?こういう書き方でいいの?と自分の書いていること、やっていることを気にしていました。最後は自分たちがやりたいように、自分の思うがままに自由に作っていました。自分のイメージを自由に表現する楽しさが芽生えたのだと思います。 開催前に3回訪問し、普段の活動を確認しました。途中で集中力が切れてしまう子が何名かいました。ですがドリームマップの日は普段の活動時間よりも長い時間でしたが、最後まで集中していました。集中して話を聞く姿、ドリームマップを作成する姿は全く障害を持っているとは感じられませんでした。(田中さん)
・授業前は夢のある子は2〜3人だったのですが、ドリマ作成にはいると好きなものや好きなことに囲まれているからか、子どもたちの目が生き生きとしてきました。発表ができないかもしれない、とスタッフさんが懸念されていた子も堂々と発表していました。(大崎)
☆施設の先生方の変化・感想
・「想像以上に子どもたちが生き生きと積極的に活動に参加していて驚いた」「みんなの真剣に話を聞く姿に驚いた。(普段はあまり見られない)」 「言語化できないだけで、どの人も自分の夢を心の中に持っている事が分かった」「3年間見てきた子たちが自分の夢を自分で語っている姿に感動した」「みんなのことがさらに知る事ができてよかった」「欠席していたメンバーにもやってもらいたい」「夢を持つことに障害の有無は関係ないと思った」(田中さん)
・ドリームマップに理解がある先生が多く、それぞれの子どもたちのフォローをしていただき進行が捗りました。感想では子どもたちが堂々と夢を語る様子をみたある先生が感極まって泣き出してしまう場面がありました。日ごろから子どもたちに真摯に向き合う姿勢がみられ、施設全体がとてもよい雰囲気でした。(毛利さん)
・1人のスタッフさんのご意見です。 「授業前まで不安でした。なかなか自分を表現しない子や意見を求めても”別に”という答えばかりの子もいたので、最後までできるか心配でした。でも、授業が始まると好きなことをどんどん書いていてびっくりしました。全員が発表できるとは思いませんでした。普段は私たちが子どもたちに制限をかけて接していたのかもしれません。子どもたちの可能性や力に驚きました。」(大崎)
☆感想・特に印象に残ったこと
・施設の担当者の方が直前まで「夢がない子がほとんどです。本当に大丈夫でしょうか。」と心配していました。それを聞いて私は「大丈夫です。私たちが引き出します!!」と言いましたが、正直不安いっぱいでした。当日ドリームマップの下書きの時には心配は何だったんだという状態で、あっという間に自分の夢を書いていたのが印象に残っています。ある女の子は「夢?わからないな?」と悩んでいましたが、「将来やってみたい仕事はあるかな?」の問いに「図書館で働きたい」と嬉しそうに言ってくれました。夢と将来の職業が繋がらなかったようです。施設の担当者が言語にして書く、話すということが苦手とおっしゃっていましたが、確かにそうだなぁと思いました。言葉にするのが苦手でもみんな自分の中にはしっかりと自分の夢を持っているんだと思って安心しました。(田中さん)
・中学生から高校生と難しい年頃。ましてや障がいを抱えている子どもたちなので正直不安でした。しかし、実際行ってみると皆さん素直でキラキラしていました。感受性がいいのでしょうね。その反面、事前の情報のように自己肯定感が低い印象も受けました。作業が進むにつれて少しずつ自己開示し笑顔が増えてきた子どもたちが印象的でした。
発達障がいのCくん。「1967年生まれの42歳!」と数字にこだわりをもっていました。こだわっていることを否定せず受容し作業を進めました。そのうち「お笑い芸人になりたい」と夢を描くようになりました。作業後半からは挙手して発言することが多くなりました。感想では「(僕は)がんばりました!」と発言しうれしそう。自己肯定感が低い分、他者から認めてもらいたいという気持ちの一面がうがえました。ドリームマップの作製ではアイテム数にこだわりをもっていましたが、楽しそうに貼り続けたことが印象的でした。(毛利さん)
・10時から17時までの長い時間、誰一人として逃げ出すことなく、楽しそうに考え、自分の言葉で表現し、最後、発表も全員がすることができました。健さんが付箋を用意してくれて、子どもたちに友達への応援メッセージを書いてもらいましたが、「あの子にも書きたい」「この子にも書きたい」と応援がとまりませんでした。(大崎)
☆事前準備・当日・事後に関するGood&Better
・ドリームマップ普及協会事務局の三輪さんが当日たくさん写真を撮ってくれ、施設の担当者の方にも写真の確認をして頂きました。その写真を掲示して子どもたちに見てもらうそうです。大変喜んでいらっしゃいました。(田中さん)
・事前準備には田中さんと大崎さんが深く関わっていただきました。事前に施設の子どもたちと信頼関係を築き、先生方との情報共有も密にし、念密な打ち合わせ計画をされたことで、当日はとてもスムーズな進行でした。わたしはフェイスブックを通して情報を共有させていただき、それほど緊張することなくスっとその場に入ることができました。板書ツールを用意させていただき、進行に合わせて貼っていきました。田中さんの提案でプロジェクターを使ってメッセージを流す場面では涙する子どももいました。視覚や聴覚に訴える進行は効果的だったと思います。田中さん、大崎さんとは当日初めてお会いしましたが、不思議なもので息がぴったり合いました。回を重ねるうちにさらに子どもたちの夢を引き出すことができるのではないかなぁと思いました。今回は初めて県外のドリマ先生とのセッションで学ぶこともたくさんありました。交流も深めることによって自分の世界が広がっていくような楽しみを感じました。(毛利さん)
・現地に何度も足を運んでいたので、施設やその雰囲気、スタッフさんや子どもたちの顔がほとんど分かったので、緊張することなく臨めました。 健さん&もーさん(初対面)の息ぴったりの進行は見ていて安心でした。私は健さんの進行で抜けた分をフォローさせてもらいました。そのフォローを喜んで受け入れてくださり、ありがたかったです。 三輪ちゃんがいい顔ショットをいくつも撮ってくださいました。 スタッフさんの気遣い(ドリマ先生への昼食準備、子どもたちの資料集め、子どもたちへの声掛け)がありがたかったです。 ドリマ終了後、スタッフさんとのお話の中できっと今後も取り入れてくださるだろう予感がしました。(大崎)
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これらの報告も参考にしながら、障害のあるなしに関わらず、どんな方にも、自分自身で将来の夢を描き、夢に向かって主体的に歩みを進め、自分らしさを味わうために、ドリームマップを活用していただければと願っています。
ドリームマップワークショップの開催に興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
http://www.dream-map.info/contact.html