2009(平成21)年06月30日(火)
swissinfo.ch
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自殺ほう助 政府と民意の格差
http://www.swissinfo.ch/jpn/society/detail.html?siteSect=601&sid=10890625&cKey=1246260566000&ty=st
自殺する人を助けることは道徳的か? (Keystone)
連邦議会で取り上げられている自殺ほう助問題。
政府は全面禁止を推し進める意向だが、自殺ほう助組織
エクジット(Exit)の前広報担当者アンドレアス・ブルム氏は、
政府は民意を無視しているとの意見だ。
ブルム氏にスイスインフォが聞いた。
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swissinfo.ch:
自殺をほう助することに多くの人が疑問を持っています。
道徳的に見て、責任ある行為でしょうか?
ブルム:
自分の死を決める権利は人権です。
自分で決断するという権利の1つであり、人間の尊厳です。
人間は、この世に生れてきたいかどうかは問われはしません。
神、もしくはどこからから与えられた贈り物として
私たちは命を受け取らなければなりません。
贈り物である限り、それを返上することもあるわけです。
唯一、自分が、自分の人生の意味がもはやなくなったということ
を決める権利があるのだと私は固く確信しています。
それがその人にとっての最大の尊厳の表現だからです。
自分の存在について自分で決める。それが重要なのです。
よって、主観的に希望のない状態にある人を助けることは、
道徳的に受け入れられるばかりでなく、推奨すべきことなのです。
これは、キリスト教の隣人愛にも則することです。
swissinfo.ch:
スイス政府内でもこの問題については大きく意見が分かれて
います。なぜだと思いますか。
ブルム:
意見が対立していることは、あまり驚くことではないのですが、
論理的ではありません。
自殺ほう助については、私は「ほう助」という言葉をあえて
使いますが、スイスには過去60年間、非常に寛容な規定が
ありました。
現在の状況で、非常に私の神経に触るのは、政府が国民の命の
根源にかかわる問題を避けて政治を行っていることにあります。
国民の3/4が自分の死を決める自由と自殺ほう助をはっきりと
支持しています。
一方で、原理主義者が、とくにカトリック教会からの動きです
が、全体の動きにブレーキを掛け、人間に害を与えています。
マスコミが騒ぐことで国民は非常に惑わされるのです。
こうした態度をとる政府は無責任です。
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swissinfo.ch:
内閣の議会に提出する法案は2つあり、
1つは「エクジット」や「ディグニタス(ignitas)」という
自殺ほう助機関を全面的に禁止する法案ですが。
ブルム:
この法案は馬鹿げた法案です。
多くの国民に尊厳を持って安らかに死ぬことを根本的に可能に
したこれまでの自由な政策から、大きく後退することになります。
現行法の内容が根源から問われる理由が理解できません。
とはいえ、議会が自殺ほう助機関の禁止を決定することはない
と確信しています。
自殺ほう助の法律の枠組みが必要と訴える
アンドレアス・ブルム氏(ZVG)
swissinfo.ch:
もう1つの提案は、こうした機関を法の枠組み内に置くと
いうものですが。
ブルム:
わたしは法の枠組み内に置くという意見を最初に提唱した1人
です。そうすることで悪用が避けられます。
利益を追求するような自殺ほう助機関は禁止すべきです。
そのほかにも意味のある規制はあります。
自殺ほう助機関は道徳的にも法的にも微妙なグレーゾーンにあり
ます。より多くの自由が許されれば、負う責任も重くなります。
自殺ほう助が人間の死を商売にした途端に、
その信用は全く失われてしまいます。
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swissinfo.ch:
自殺ほう助機関のディグニタスは、国外からスイスに自殺を
望む人を呼び込む「自殺ほう助旅行」で話題になりました。
これについて、どう思いますか?
ブルム:
非常に微妙で複雑な問題です。抽象的なレベルでは、自殺ほう助
を支持する人にとってそれがスイス人なのか、スイス人ではない
のかといったことは問題ではありません。
ほかの言葉で言えば、自殺ほう助に賛成なら、
国籍で区別はしないということです。
しかし、これは問題の表面的な部分であり、
その裏には、多くの細かい問題があります。
問題は実際にどうするかということです。
具体的には、わたしたちエクジットもディグニタスと同様、
外国人に尊厳ある死の選択の可能性を提供するのか。
そして、数多くの問い合わせの洪水にあうのか。
そして、その仕事の多さに圧倒されるのかということです。
わたしが特に心配する別の問題もあります。
自殺ほう助を受けるためにスイスに来る人とは、どういった人
なのかということです。
答えは明らかに、金銭的に余裕のある人でしょう。
持つ者と持たざる者という2つの階級が生まれることは
道徳的観点から避けなければなりません。
小国スイスが世界的な問題を解決することはできません。
解決のためには、スイスのような自由思想に基づく制度と法律
を他国が見習うことです。法の根本を現実に合わせることです。
クリスティアン・ララーブ、swissinfo.ch
( ドイツ語からの翻訳 佐藤夕美 )
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投 票
スイスでは「自殺ほう助団体」についての法規制の動きがあります。
あなたが、死に至る病にかかり、非常に苦しんでいるとしたら
自殺ほう助を受け、苦しみから解放されたい
自殺ほう助は受けず、苦しくとも最後まで生きたい
わからない
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過半数が支持
スイスフランス語圏の新聞が4月に行ったアンケートによると、
アンケートに答えた人の3/4が自殺ほう助に賛成すると答えた。
56.5%の人が、自分が死に至る病気になった場合、
自殺ほう助を頼む可能性があると答えた。
「自殺ほう助旅行」に ついては
賛成と反対がそれぞれ45%だった。
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アンドレアス・ブルム氏 略歴
今年71歳。大学では史学と哲学を専攻。
1967年からスイスラジオ放送局で編集を担当し、
1979年に編集長を引退した。
社会民主党員(SP/PS) で、ベルンの州議会議員も
務め、連邦国民議会の議員でもあった。
ラジオ局を引退してから2007年まで、自殺ほう助機関
「エクジット」の役員を務め、広報を担当した。
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関連サイト
連邦政府の自殺ほう助に対する意見 エクジット(Exit )
ディグニタス(Dignitas )
swissinfo.ch 2009年06月30日 15時25分