4月 斜陽 [著]太宰治 第4回(朝日新聞)
[2009年04月30日(Thu)]
2009(平成21)年04月30日(木)
朝日新聞
asahi.com>エンタメ>BOOK>百年読書会
4月 斜陽 [著]太宰治 第4回
http://book.asahi.com/hyakunen/TKY200904290102.html
[掲載]2009年04月26日
[ナビゲーター]重松 清(作家)
■文学史年表を飛び出す迫力
いま「名作」と呼ばれる作品も、発表当時は当然ながら
「新作」でした。
『斜陽』だって昭和22年の刊行時点では、まだできたての
ホヤホヤ。だからこそ、その時点で作品に接した世代の声には、
圧倒的な臨場感があります。
〈再読して、特権階級の滅亡に拍手喝采した出版当時の読後感を
鮮明に思いだした〉(愛知県・前田豊子さん・82)
〈『斜陽』を初めて読んだ時に衝撃を受けた。地主だった
我が家は農地解放で土地を失い、家を顧みることの少なかった
父と、体の弱い母と幼い弟妹たちとで、残った田を夢中で耕して
いた頃だった。自分に重ね合わせていたのかもしれない〉
(神奈川県・伊沢希子さん・80)
今回の投稿の最年長は、97歳の福岡県・佐々木ふささん。
太宰 治とまさに同世代――自殺した直治についての
〈私どもとしても全く無縁な苦しみではなかった。
如何(いか)に生くべきか、の苦悩を超えて私たちは生きた。
直治も本当は生きたかったに違いない〉
という言葉は、太宰自身へのメッセージにもなりそうです。
〈50歳、60歳、70歳の太宰さんの作品を読んでみたかった
なァ〉と40代すら迎えずに逝った作家を惜しむ千葉県の
藤井恒子さん(54)に応えるかのように、
福岡県の元良文さん(67)は、
〈97歳の日野原重明さんは太宰とほぼ同時代人だが、
文体には隔世の感がする。太宰がいまも生きていたなら、
どんな文体で書いていただろうか〉。
そう考えると、「太宰治・生誕百年」が文学史の年表を飛び出して、
グッとこっちに迫ってくるから面白い。
一方、うんと若い世代からの投稿もうれしく読ませてもらい
ました。12歳のちゅちゅ! さん(神奈川県)は
〈がんばって読みましたが……どこが名作なの? って
カンジでした〉
と正直に打ち明けながらも、
〈大人になったら理解できる……かな〉
と最後に書き添えてくれました。
いまはわからないことだらけだという15歳の熊木葉子さん
(新潟県)も
〈いつか『斜陽』にリベンジして、いろんなことを感じ取りたい
です〉
と、頼もしい再読宣言を。がんばって。ぜひ。
最後にこんな投稿をご紹介します。中国から来日して大学で
非常勤講師をしているトウ捷さん(40)が、北京大学在学中に
『斜陽』を読んだのは1989年――自由化を要求する若者たち
が軍に鎮圧された天安門事件の直後のこと。
〈命の危険を感じながらデモやハンストをしていた者としては、
愛する人の子供を産むことが「闘争」だというかず子の戦いは、
あまりにもちっぽけで無力だと思った。
だが、徐々に、明日を生きるためにはこのちっぽけな戦いしか
ないと悟った。
価値観の崩壊から立ち直るには、新たな価値を見つけるしかない。
その新たな価値となるものは、ありふれた自然と平凡な日々。
私はかず子のつぶやきを何度も読み返したのだ〉
いかがでしょう。さらにもう1回読み返してみたくなったひと、
多いんじゃないかな?
◇
太宰 治著。1947年刊。没落貴族の戦後を描く。
投稿は住所、氏名、年齢、職業、電話番号を書いて、
〒104・8011朝日新聞文化グループ「百年読書会係」へ。
ファクス(03・5541・8611)や
メール(dokusho@asahi.com)でも。
投稿は掲載時に短くすることもあります。
ペンネームの方も本名をお書きください。
■5月の本は深沢七郎著「楢山節考」です。
感想を400字以内でお寄せください。5月18日締め切り。

太宰治全集<9>
著 者:太宰 治
出版社:筑摩書房
価 格:¥ 1,050
朝日新聞
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4月 斜陽 [著]太宰治 第4回
http://book.asahi.com/hyakunen/TKY200904290102.html
[掲載]2009年04月26日
[ナビゲーター]重松 清(作家)
■文学史年表を飛び出す迫力
いま「名作」と呼ばれる作品も、発表当時は当然ながら
「新作」でした。
『斜陽』だって昭和22年の刊行時点では、まだできたての
ホヤホヤ。だからこそ、その時点で作品に接した世代の声には、
圧倒的な臨場感があります。
〈再読して、特権階級の滅亡に拍手喝采した出版当時の読後感を
鮮明に思いだした〉(愛知県・前田豊子さん・82)
〈『斜陽』を初めて読んだ時に衝撃を受けた。地主だった
我が家は農地解放で土地を失い、家を顧みることの少なかった
父と、体の弱い母と幼い弟妹たちとで、残った田を夢中で耕して
いた頃だった。自分に重ね合わせていたのかもしれない〉
(神奈川県・伊沢希子さん・80)
今回の投稿の最年長は、97歳の福岡県・佐々木ふささん。
太宰 治とまさに同世代――自殺した直治についての
〈私どもとしても全く無縁な苦しみではなかった。
如何(いか)に生くべきか、の苦悩を超えて私たちは生きた。
直治も本当は生きたかったに違いない〉
という言葉は、太宰自身へのメッセージにもなりそうです。
〈50歳、60歳、70歳の太宰さんの作品を読んでみたかった
なァ〉と40代すら迎えずに逝った作家を惜しむ千葉県の
藤井恒子さん(54)に応えるかのように、
福岡県の元良文さん(67)は、
〈97歳の日野原重明さんは太宰とほぼ同時代人だが、
文体には隔世の感がする。太宰がいまも生きていたなら、
どんな文体で書いていただろうか〉。
そう考えると、「太宰治・生誕百年」が文学史の年表を飛び出して、
グッとこっちに迫ってくるから面白い。
一方、うんと若い世代からの投稿もうれしく読ませてもらい
ました。12歳のちゅちゅ! さん(神奈川県)は
〈がんばって読みましたが……どこが名作なの? って
カンジでした〉
と正直に打ち明けながらも、
〈大人になったら理解できる……かな〉
と最後に書き添えてくれました。
いまはわからないことだらけだという15歳の熊木葉子さん
(新潟県)も
〈いつか『斜陽』にリベンジして、いろんなことを感じ取りたい
です〉
と、頼もしい再読宣言を。がんばって。ぜひ。
最後にこんな投稿をご紹介します。中国から来日して大学で
非常勤講師をしているトウ捷さん(40)が、北京大学在学中に
『斜陽』を読んだのは1989年――自由化を要求する若者たち
が軍に鎮圧された天安門事件の直後のこと。
〈命の危険を感じながらデモやハンストをしていた者としては、
愛する人の子供を産むことが「闘争」だというかず子の戦いは、
あまりにもちっぽけで無力だと思った。
だが、徐々に、明日を生きるためにはこのちっぽけな戦いしか
ないと悟った。
価値観の崩壊から立ち直るには、新たな価値を見つけるしかない。
その新たな価値となるものは、ありふれた自然と平凡な日々。
私はかず子のつぶやきを何度も読み返したのだ〉
いかがでしょう。さらにもう1回読み返してみたくなったひと、
多いんじゃないかな?
◇
太宰 治著。1947年刊。没落貴族の戦後を描く。
投稿は住所、氏名、年齢、職業、電話番号を書いて、
〒104・8011朝日新聞文化グループ「百年読書会係」へ。
ファクス(03・5541・8611)や
メール(dokusho@asahi.com)でも。
投稿は掲載時に短くすることもあります。
ペンネームの方も本名をお書きください。
■5月の本は深沢七郎著「楢山節考」です。
感想を400字以内でお寄せください。5月18日締め切り。

太宰治全集<9>
著 者:太宰 治
出版社:筑摩書房
価 格:¥ 1,050






