2008(平成20)年11月28日(金)
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「本気で使う言葉」の大切さ 映画「青い鳥」
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/081128/tnr0811282025014-n1.htm
【シネクラブ】「青い鳥」(中西健二監督)11月29日公開
(提供写真)
国のトップが軽口をたたいて非難され、撤回した先から
同じような暴言を繰り返す。
誰かを傷つける言葉も冗談だという言い訳に隠れ、
本気で反論すれば空気を読まない奴(やつ)だと嫌われる。
言葉が軽んじられる時代。
本気が誰にも届かない鬱憤(うっぷん)が暴発した事件が
相次ぎ起こっている。
重松 清(しげまつ・きよし)の同名短編が原作の映画から
響いてくるのは、本気を込めて言葉を使い、そんな本気を
感じて答える大切さだ。
いじめを苦にして野口という生徒が自殺未遂を引き起こした。
野口は転校。いじめていた生徒は反省し、教師はそれで収めて
学校は平穏を取り戻す。
ところが休職した担任の代わりに来た教師の村内は、
「忘れるのは卑怯(ひきょう)」
だと言い、野口の机を教室に戻させ
「おはよう」
と毎日あいさつする。
事件を忘れたがっている生徒には罰にしか思えない言動。
学校も動揺を招くと村内を非難するが、村内は引かない。
その場しのぎの反省に本気はない。
本気で言葉を使えない者に本気の叫びは聞こえず、
同じ悲劇が繰り返される。
反発していた生徒たちが本気の言葉を取り戻し、
本当の関係を築いていこうとする。
吃音(きつおん)で、つっかえながらひとつひとつの言葉を
発する村内から、言葉の重みがくっきりと浮かぶ。
難役を演じたのは阿部寛(あべ・ひろし、44)。
心底まで村内先生になりきり、物まねにならない自然さで
心に響く言葉を聞かせてくれる。
後悔に苦しむ生徒の園部に本郷奏多(ほんごう・かなた、18)。
今年47歳の中西健二(なかにし・けんじ)監督デビュー作。
11月29日、東京・新宿武蔵野館などで公開。
(谷口隆一/SANKEI EXPRESS)
2008.11.28 20:25
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2008(平成20)年11月28日(金)
読売新聞
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「青い鳥」 (バンダイビジュアルほか)
教育通じ日本を問う
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/review/20081128et01.htm
日本社会が抱える様々な問題について考える時、
教育の重要性を痛感することが多い。
重松清の短編が原作のこの映画は、今の学校、
さらに日本社会に足りないもの、余分なものの存在に、
思い至らせてくれる。
東ヶ丘中2年1組では、前学期に同じ組の野口君が
いじめが原因で自殺を図った。一命はとりとめたが大問題になり、
担任の先生はダウン。
でも、新学期の朝、誰もそのことに触れない。野口君は転校した。
残った者は反省文を書いた。あとはやり直せばいい。
学校側も生徒もそう思っていた。
が、臨時教師としてやってきた村内先生(阿部寛=写真)は、
極度の吃音で自己紹介をした後、いきなり言う。
「忘れるなんて、ひきょうだな」
生徒たちはりつ然とする。スクリーンの外にいるこちらもドキリとする。
都合の悪いことを隠蔽して生きる行為は、現実社会でも当たり前に
行われているから。
でも、村内先生は、なかったことにしないことの大切さを本気で教える。
悲しいかな、孤立してしまうのだが。
日本全体への問題提起ともとれる鋭い内容だが、
助監督としての経験を重ね、今作でデビューした中西健二監督は、
独特の構図や照明など巧みな映像構成で、観客の気持ちをすっと引きつける。
静かに力強く。俳優たちも魅力的に映っている。
1時間45分。新宿武蔵野館など。
(恩田泰子)
(2008年11月28日 読売新聞)
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2008(平成20)年11月28日(金)
毎日新聞
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本郷奏多:「相手の気持ちを考えて行動することが大切だと思った」
映画「青い鳥」に出演
http://mainichi.jp/enta/geinou/graph/200811/28_2/
役について真摯(しんし)に語った本郷奏多さん
人気の作家・重松清さんの連作短編集の表題作を映画化した
「青い鳥」が11月29日から全国で公開される。
いじめによる生徒の自殺未遂に揺れた中学校を舞台に、
新学期に赴任してきた臨時教師と中学生の心の交流を描いた。
中西健二監督は本作で長編デビュー。先生を演じるのは、
映画にドラマに引っ張りだこの阿部寛さん。
生徒に真剣に向き合おうとする教師を熱演している。
映画やテレビで活躍中の本郷奏多さんが
いじめに加担してしまったことを悔やむ繊細な生徒を好演した。
本郷さんは
「音楽をあまり使っていないのに、引き込まれる
深いストーリーの映画。この作品に出て、人の気持ちを
考えて行動することの大切さを学びました」
と語る。
(文・写真/上村恭子)
◇いじめ問題について深く考えなくてはならなかった
映画は、臨時教師が学校にやって来るところから始まる。
いじめによる生徒の自殺未遂事件で揺れた2年1組に
赴任したのが村内先生だった。
生徒たちは村内先生のあいさつに驚く。言葉がつっかえるのだ。
村内先生は吃音(きつおん)だった。
生徒は笑ったが、やがて先生が小さな声で事件について言った。
「忘れるなんて、ひきょうだな」
で教室はシーンと静まり返る。
村内先生は、いじめによって転校した野口の机といすを教室に戻す。
そして毎朝、誰も座っていない席に向かって
「野口君、おはよう」
と呼びかけるのだった。村内先生は
「上手にしゃべれませんが、でも、本気でしゃべります」
と真摯(しんし)に語る。
その村内先生を静かに見つめる生徒がいる。
本郷さんが演じる生徒・園部真一だ。
園部はいじめ事件によって深く傷ついた生徒。
本郷さんは、実年齢より低い14歳の少年の多感さを、
繊細に演じ切っている。
「これまで心に闇がある役柄が多かったので、
役の難しさは感じませんでしたが、いじめ問題を深く
考えなくてはならないところが難しかったところです」。
そう語る本郷さんに、中西監督は
「素直に感じたままに」
と声をかけたという。
いじめ問題にかかわった経験がなかったという本郷さん。
「原作を読んで、台本を読んで、現場のやりとり
の中で役を作っていきました」。
役の園部はいじめに加担したつもりはなかった。
だが、野口の自殺未遂事件が起きて、遺書に自分の名前が
書かれてあるのではないかと不安でいっぱいになる。
「役を通して、いじめているつもりはないのに、
人を傷つけてしまうことがあるってことに気付きました。
相手の気持ちを考えて行動することが大切なんだって
思いました」
◇ 役に入り込む阿部寛さんからも刺激
映画は、村内先生と2年1組の生徒の間にある緊張感を、
ピリピリとした空気とともに描き出している。
村内先生は生徒と心で通じ合おうとする。
だが、反省文も書き
「もう事件は終わった」
と思っている生徒にとっては、忘れようとしている事件を
蒸し返すイヤな相手だ。
村内先生を演じる阿部寛さんとは、撮影中に1回も
話をしなかったという。
「阿部さんが意識をして生徒役とは距離を置かれていたんです。
阿部さんはカメラが回っていないところでも、リアルに
役に入り込んでいた。役者として刺激を受けました。
撮影後に話したら、とても気さくな方で、今度はもっと
仲がいい役をやってみたいと思いました」
その阿部さんと教室で1対1でやりとりするシーンが素晴らしい。
園部が村内先生に思いをぶつけるシーンなのだが、
緊張感たっぷりの激しいシーンとなっている。
「あのシーンは撮るまでは気持ちが重かったです。
1日中ずっと同じシーンを撮っていたので、
泣く場面も自然に涙が出てきましたね。
集中してやり切りました」
◇ 14歳のころ役作りの楽しさを知りました
自身の14歳のころは、
「人生のターニングポイントだった」
と話す。
「テニスの王子様」で天才テニスプレーヤーの主人公を
演じたことが大きかったようだ。
「大きな仕事をいただけるようになったころです。
すごくいい時期で、たくさんのことを吸収していったころ。
『テニスの王子様』で1〜2か月間、毎日テニスを練習して、
1日10時間撮影しました。毎朝ランニングもして、部活みたいで
青春してましたね。初めて役作りの楽しさを知りました」
デビューは映画「リターナー」。人気のシリーズの2本目
「NANA2」、イタリア・カナダ合作の「シルク」
とさまざまな映画に出演してきた。
「映画はCMも入らないし、お金を払って見るもの。
伝えたいことが一番伝わると思います。
映画の仕事にやりがいを感じます」
と語る。この冬は、出演した作品がもう2本公開される。
カリスマ的人気作家の乙一さんの小説の映画化「GOTH」。
こちらでは、優等生と猟奇趣味という二面性を持つ少年を
妖しい魅力で演じている。また、「K−20 怪人二十面相・伝」
では少年探偵・小林を演じている。
現在、高校3年生。
「高校に入って、いろんな作品に出て学んで成長できたと思います。
残りの高校生活は、とにかくいっぱい遊びたい。高校の友達と
高校生のうちに遊びたい」
とも。
「これまでいろんな役を通して、自分とは違ういろんな考え方を
知ることができました。俳優という仕事は、いろいろなところに
行けるし、毎回、新しい発見があります。どんな役でもできる人に
なりたいです」
では、今回の発見は何だったのだろうか?
「社会に出ていく上では、人と関わらなくてはならないから、
人の痛みを分かる人間にならなくてはならないと思いました。
でも、伝わらないことって、常にあると思うし、
他人は自分ではないので、本当の意味で人の気持ちを
思いやることって難しいことなのかもしれません。
この映画は中学生・高校生に一番見てもらいたいと思います。
見た人の心の持ちようが少しでも変わったらいいなと思います」
<本郷奏多さんのプロフィル>
1990年、宮城県生まれ。02年、映画「リターナー」で
俳優デビュー。「HINOKIO」(05)「テニスの王子様」(06)
で主演。「NANA2」(06)、「シルク」(08)がある。
今後は、主演作品「GOTH」が12月下旬に、
佐藤嗣麻子監督の「K−20 怪人二十面相・伝」
が12月20日から公開される。
テレビドラマの出演は「あいくるしい」(05)、
「嫌われ松子の一生」(06)、「ヒミツの花園」(07)、
「生徒諸君!」(07)、「探偵学園Q」(07)、
「医龍 Team Medical Dragon2」(07)、
「正義の味方」(08)などがある。
2008年11月28日(金)