ストレスからの自殺者急増の背景に“うつ”(週刊ダイヤモンド071130)
[2007年11月30日(Fri)]
2007(平成19)年11月30日
ダイヤモンド・オンライン
ホーム>暮らし・オフ>不健康ビジネスマンに効くクスリ
週刊ダイヤモンド編集部
不健康ビジネスマンに効くクスリ
【第3章】
ストレスからの自殺者急増の背景に“うつ”
http://diamond.jp/feature/medicine_dw/10003/
http://diamond.jp/feature/medicine_dw/10003/?page=2
http://diamond.jp/feature/medicine_dw/10003/?page=3
「私は反省している。これまで『うつは心の風邪』とうたって
きたが、そんな生やさしいものではない。死に至る病だ」
こう語るのは、複数の大手企業の産業医を務める
京都文教大学臨床心理学科教授、神田東クリニック院長の
島悟医師である。
出所:厚生労働省「2005年人口動態統計」
実際、表を見てもらいたい。働き盛りである20〜50代の死因の上位は
自殺である。自殺者は1988年以降、8年間連続して3万人以上で推移。
その自殺者の4割が30〜50代の男性で、大半がうつなどの精神疾患を
患った経験者だ。
うつの患者も増える傾向にある。厚生労働省などのデータによると、
1999年に比べ、外来患者は約2倍にまで増えている。
うつが増える背景は何か。島医師は
「過重労働によるうつは、むしろ大手企業に限っては減少傾向にある。
それよりも、企業の恆I択と集中揩ノ伴う大幅な組織改善やM&Aなどの
職場環境の急激な変化がある」
と指摘する。
近年の雇用形態や人事評価システムなどの変更も大きい。派遣社員は
もとより、派遣社員と仕事ぶりを比較される正社員もプレッシャーを
感じる。人事評価される側だけでなく、評価する管理職側にも大きな
ストレス。パート社員の管理を任された若手社員がうつになる事例も
少なくない。
年齢的には、男性が30代後半〜40代前半、女性が20代後半〜30代前半
に多く、やはり、最大のストレス要因は人間関係である。
そもそも、うつは朝に状態が悪いが、夜には元気になる、という
日内変動を繰り返す。治療を受けている場合でも、よくなったり、
悪くなったりを繰り返しながら、徐々に回復する病気だ。
このため、単なる「サボリ」と見なされることも多く、自らもうつに
気がつかない事例も少なくない。たとえば、睡眠障害の患者の3割以上が
うつを併発しているという報告もあり、睡眠薬を服用していても症状が
改善しない場合は要注意である。
もっとも、最近はうつへの認知度や理解も向上している。
●
ストレスからの自殺者急増の背景に“うつ”
治療も進歩した。SSRIのように副作用が少なく、使いやすい薬も
生まれたからだ。
しかし、島医師の危機感は消えない。
「職場でのストレスは上がる一方だが、コミュニケーションなど
家庭や職場のケア機能は低下しつつある」
からだ。
患者自身の問題もある。患者の約7割が職場復帰可能といわれている
反面、約半数が慢性化する傾向にある。つまり、最終的には、患者自身
が仕事のやり方や物事の考え方など、ライフスタイルを変えなくては
根本的な治療にはならない。その点でいえば、“心の生活習慣病”でも
あるのだ。
「うつの治療にクスリは不可欠」
北島潤一郎 ・北島クリニック院長に聞く
うつの発見方法にはいくつかあるが、私が初期症状として重視するのは
次の2点。
第1は睡眠状況が悪いこと。不眠や中途覚醒、早朝覚醒が多く、
目覚めと同時に心配事が頭に浮かんだりしないか。
第2は感情のコントロールができなくなっていること。
黙り込んだり、シクシク泣いたり、あるいはキレたりする現象が
表れていないか。
この2点は、周囲や家族が本人より先に気づくこともあるので
注意してほしい。
「うつは心の風邪」などといわれるが甘いと言わざるをえない。
確かに風邪のように、誰でもなる可能性がある病気だが、
「うつは心の骨折」だ。
「心の捻挫」程度だった早期に治療を開始すれば早期に回復するケース
もあるが、「骨折」では負荷をはずして(仕事を休んで)、数ヵ月の時間
をかけて治さないといけない。
私の医院では、患者の3分の1に休職が必要だった。休職期間は
平均5ヵ月程度。うつを甘く見る人は
「無理しないように仕事量を半分に減らして」
などと言うが、現実的には不可能な要求で休職しないと負荷ははずれず
治療は難しい。
SSRIなど最新のポピュラーなうつのクスリは、簡単に表現すると
「無理をしなくなる」
クスリだ。
「朝に服用して昼には気分が楽になる」
クスリ、
「もっと頑張る」
クスリもあるが、副作用が出たり、背中を押し過ぎて負荷をかけ過ぎる
可能性などがあるので、ケース・バイ・ケースで処方されている。
●
出所:WPA/PTD Educational Program on Disorders,1991
SSRIは
「過剰な心配をしなくなる」
効果があるので、パニック障害や強迫性障害、社会不安障害などにも有効だ。
具体的な症状としては、人前に出られない、何度も何度も手を洗ってしまう、
極度なあがり症などだ。社会問題と化している引きこもりも、じつは
「外に出られない」
などの病気にかかっている可能性もある。これらの症状は適切な治療と
クスリで回復する可能性がある。
とにかく、これらの症状で悩んでいたり、うつの症状や兆候が表れていたら
気後れせずに精神科医に相談してみてほしい。
早期に診断を受け適切な治療を図ることが大切だからだ。
最近は「メンタルクリニック」などと掲げて敷居を低くしている医院もある。
まずはかかりつけの医師や産業医に相談してもらってもいいが、うつを見逃す
こともあるので、なるべく専門医の診断を受けてほしい。
うつの場合、しっかり問診してくれる医師、
「職場に戻す」
「うつは治る」
との意識で復職までのプログラムを作ってくれる医師がいいだろう。
患者は
「いつ頃から、どういう症状が出たか」、
そして現在の症状、仕事の状況を包み隠さず医師へ伝えてほしい。
うつの治療にクスリは不可欠だ。症状改善のために、酒や怪しげな民間療法
に依存するのは危険だ。サイコセラピーも補助にはなるが、それだけでは
治らない。
「クスリに頼りたくない」
などと訴えられることも少なくないが、医師が指示したとおり休養し、
クスリを服用してほしい。
(談)
週刊ダイヤモンド編集部
2007年11月30日
ダイヤモンド・オンライン
ホーム>暮らし・オフ>不健康ビジネスマンに効くクスリ
週刊ダイヤモンド編集部
不健康ビジネスマンに効くクスリ
【第3章】
ストレスからの自殺者急増の背景に“うつ”
http://diamond.jp/feature/medicine_dw/10003/
http://diamond.jp/feature/medicine_dw/10003/?page=2
http://diamond.jp/feature/medicine_dw/10003/?page=3
「私は反省している。これまで『うつは心の風邪』とうたって
きたが、そんな生やさしいものではない。死に至る病だ」
こう語るのは、複数の大手企業の産業医を務める
京都文教大学臨床心理学科教授、神田東クリニック院長の
島悟医師である。
出所:厚生労働省「2005年人口動態統計」
実際、表を見てもらいたい。働き盛りである20〜50代の死因の上位は
自殺である。自殺者は1988年以降、8年間連続して3万人以上で推移。
その自殺者の4割が30〜50代の男性で、大半がうつなどの精神疾患を
患った経験者だ。
うつの患者も増える傾向にある。厚生労働省などのデータによると、
1999年に比べ、外来患者は約2倍にまで増えている。
うつが増える背景は何か。島医師は
「過重労働によるうつは、むしろ大手企業に限っては減少傾向にある。
それよりも、企業の恆I択と集中揩ノ伴う大幅な組織改善やM&Aなどの
職場環境の急激な変化がある」
と指摘する。
近年の雇用形態や人事評価システムなどの変更も大きい。派遣社員は
もとより、派遣社員と仕事ぶりを比較される正社員もプレッシャーを
感じる。人事評価される側だけでなく、評価する管理職側にも大きな
ストレス。パート社員の管理を任された若手社員がうつになる事例も
少なくない。
年齢的には、男性が30代後半〜40代前半、女性が20代後半〜30代前半
に多く、やはり、最大のストレス要因は人間関係である。
そもそも、うつは朝に状態が悪いが、夜には元気になる、という
日内変動を繰り返す。治療を受けている場合でも、よくなったり、
悪くなったりを繰り返しながら、徐々に回復する病気だ。
このため、単なる「サボリ」と見なされることも多く、自らもうつに
気がつかない事例も少なくない。たとえば、睡眠障害の患者の3割以上が
うつを併発しているという報告もあり、睡眠薬を服用していても症状が
改善しない場合は要注意である。
もっとも、最近はうつへの認知度や理解も向上している。
●
ストレスからの自殺者急増の背景に“うつ”
治療も進歩した。SSRIのように副作用が少なく、使いやすい薬も
生まれたからだ。
しかし、島医師の危機感は消えない。
「職場でのストレスは上がる一方だが、コミュニケーションなど
家庭や職場のケア機能は低下しつつある」
からだ。
患者自身の問題もある。患者の約7割が職場復帰可能といわれている
反面、約半数が慢性化する傾向にある。つまり、最終的には、患者自身
が仕事のやり方や物事の考え方など、ライフスタイルを変えなくては
根本的な治療にはならない。その点でいえば、“心の生活習慣病”でも
あるのだ。
「うつの治療にクスリは不可欠」
北島潤一郎 ・北島クリニック院長に聞く
うつの発見方法にはいくつかあるが、私が初期症状として重視するのは
次の2点。
第1は睡眠状況が悪いこと。不眠や中途覚醒、早朝覚醒が多く、
目覚めと同時に心配事が頭に浮かんだりしないか。
第2は感情のコントロールができなくなっていること。
黙り込んだり、シクシク泣いたり、あるいはキレたりする現象が
表れていないか。
この2点は、周囲や家族が本人より先に気づくこともあるので
注意してほしい。
「うつは心の風邪」などといわれるが甘いと言わざるをえない。
確かに風邪のように、誰でもなる可能性がある病気だが、
「うつは心の骨折」だ。
「心の捻挫」程度だった早期に治療を開始すれば早期に回復するケース
もあるが、「骨折」では負荷をはずして(仕事を休んで)、数ヵ月の時間
をかけて治さないといけない。
私の医院では、患者の3分の1に休職が必要だった。休職期間は
平均5ヵ月程度。うつを甘く見る人は
「無理しないように仕事量を半分に減らして」
などと言うが、現実的には不可能な要求で休職しないと負荷ははずれず
治療は難しい。
SSRIなど最新のポピュラーなうつのクスリは、簡単に表現すると
「無理をしなくなる」
クスリだ。
「朝に服用して昼には気分が楽になる」
クスリ、
「もっと頑張る」
クスリもあるが、副作用が出たり、背中を押し過ぎて負荷をかけ過ぎる
可能性などがあるので、ケース・バイ・ケースで処方されている。
●
出所:WPA/PTD Educational Program on Disorders,1991
SSRIは
「過剰な心配をしなくなる」
効果があるので、パニック障害や強迫性障害、社会不安障害などにも有効だ。
具体的な症状としては、人前に出られない、何度も何度も手を洗ってしまう、
極度なあがり症などだ。社会問題と化している引きこもりも、じつは
「外に出られない」
などの病気にかかっている可能性もある。これらの症状は適切な治療と
クスリで回復する可能性がある。
とにかく、これらの症状で悩んでいたり、うつの症状や兆候が表れていたら
気後れせずに精神科医に相談してみてほしい。
早期に診断を受け適切な治療を図ることが大切だからだ。
最近は「メンタルクリニック」などと掲げて敷居を低くしている医院もある。
まずはかかりつけの医師や産業医に相談してもらってもいいが、うつを見逃す
こともあるので、なるべく専門医の診断を受けてほしい。
うつの場合、しっかり問診してくれる医師、
「職場に戻す」
「うつは治る」
との意識で復職までのプログラムを作ってくれる医師がいいだろう。
患者は
「いつ頃から、どういう症状が出たか」、
そして現在の症状、仕事の状況を包み隠さず医師へ伝えてほしい。
うつの治療にクスリは不可欠だ。症状改善のために、酒や怪しげな民間療法
に依存するのは危険だ。サイコセラピーも補助にはなるが、それだけでは
治らない。
「クスリに頼りたくない」
などと訴えられることも少なくないが、医師が指示したとおり休養し、
クスリを服用してほしい。
(談)
週刊ダイヤモンド編集部
2007年11月30日