2011(平成23)年03月22日(火)
毎日新聞
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東日本大震災:
ショック口にせぬ子どもたち 長期的支援を
http://mainichi.jp/select/today/news/20110323k0000m040019000c.html
多くの被災者が不安な毎日を送る避難所で、
子どもの笑顔は大人の心をなごませてくれる。
だが、子どもは大人と同じようには被災を理解できず、
時間がたってから影響が出てくることがある。
専門家は長期的な支援の必要性を指摘する。
「おばあちゃーん!」
水しぶきが見えたかと思うと、
祖母の小さな体が一瞬で水の壁に巻き込まれた。
岩手県陸前高田市の小学3年、村上怜(りょう)君(9)は、
一緒に逃げた祖父 久さん(73)と祖母 卓子さん(66)
が行方不明だ。
離れ離れになり、急な坂道を駆け上がり、
1人で避難所にたどりついた。
「あんただけでも早く行け。」
最後に聞いた卓子さんの声が耳に残る。
●
色鉛筆や落書き帳を買ってもらった。
畑仕事ではニンジンを一緒に引き抜いた−−。
いつもは明るい怜君も、
夜になると祖父母を思い出し涙をこぼす。
「さびしい。」
沈んだ表情で独り言のように繰り返す。
父の卓司さん(41)は
「津波の記憶をずっと引きずると思う。」
と心を痛める。
岩手県大船渡市の避難所で生活する30代の女性は夫を失った。
母親を助けようと海沿いの自宅に戻り、波にのまれた。
8歳の息子と5歳の娘は無事だった。
消防隊員から連絡を受けたのは地震の2日後だった。
遺体安置所で夫と対面した。
「ママァ。どうして泣いているの?」
「おうちなくなっちゃたから。」
娘に問われて涙をぬぐい、うそをついた。
でも、子どもは気づいている。
「お利口にしないとお父さんにしかられるよ。」
お決まりのしかり文句に娘は答える。
「だってどこにもいないもん。」
女性がそばを離れると
「お母さんどこ行くの?」
と、足にしがみつくようになった。
「お父さん大丈夫?」。
しつこく尋ねた小学2年生の息子も父の話題に触れなくなり、
大人の会話から、父親と会えないことに気づきだした。
「分かっていても口にしない。
子どもなのに親を気遣ってる。」
と女性はいう。
歓声を上げて鬼ごっこやボール遊びをする2人の姿を見て、
祖母は不安そうに話す。
「今はみんなで暮らしているけれど、
ポツポツと避難所から人が離れていった時、
あの子らはどうなるのか。」
●
常磐大学大学院の諸沢英道教授(被害者学)は
「物事を頭で理解し、その苦しみを言葉にできる
大人と異なり、子どもの被害は顕在化しにくい。
だが、時間を経てから深刻さを増す。
成長段階に応じた息の長い支援が必要。」
と話す。
【山口 知、川名壮志】
毎日新聞 2011年03月22日(火)18時03分
(更新: 2011年03月22日(火)20時12分)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2011(平成23年03月20日(日)
MSN産経ニュース
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【東日本大震災】
子供のストレス障害に注意 「大人が安心させてあげて」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110320/dst11032022120102-n1.htm
東日本大震災から10日が経過し、
被災地の避難所や病院では、発熱や嘔吐(おうと)といった
体調不良を訴える子供が増えているが、
大震災による「急性ストレス障害」の可能性が高い
と指摘する声もある。
見えない心の傷を負った子供たちにどう接すればいいのか。
●
「恐怖体験やショック、環境の変化から
急性ストレス障害になるのは当たり前だ。
周囲の大人が『大丈夫だよ。』と言って
安心させてあげることが大切。」
こども心身医療研究所(大阪市)の冨田和巳所長はこう指摘する。
冨田所長によると、急性ストレス障害では、
頭痛や嘔吐、下痢、発熱といった風邪と似た症状が表れるため、
「小児科を受診して
風邪薬や解熱剤を処方されるケースもある。」
という。
ゼロ歳児でも、母親や周囲の大人の不安定な精神状態を
鋭敏に感じ取り、床に頭を打ち付けたり、髪の毛が抜けたり
するなど、ストレス障害の症状が出ることもある。
冨田所長は
「親や先生などがしっかりした姿をみせることが
予防、改善への一番いい方法。」
と訴え、一方で、今後の課題として
「多くの震災孤児を誰がケアするのか。」
を挙げる。
●
平成7年の阪神大震災で、ボランティアとして活動した
「菅原クリニック」(京都市)の菅原圭悟院長は
「校庭で笑顔で遊ぶ子供たちとか、
子供は被災地でも元気だというのは幻想だ。」
と訴える。
阪神大震災では大人や子供を問わず、
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の被災者が多く現れ、
「PTSD元年」とも呼ばれた。
PTSDは急性ストレス障害後に発展することがあり、
ふとしたきっかけで恐怖体験がよみがえり、
不安感に襲われたり、不眠、物忘れなどの症状が表れる。
菅原院長は
「児童は身体症状に不安が隠れてしまう。
でも児童を診ることのできる精神科医が
どれだけ現地にいるか。」
と危惧する。
●
阪神大震災後は「心のケア」が叫ばれ、
恐怖体験を聞き出す、吐き出すということが効果的だとされる。
しかし、菅原院長は
「PTSDの人は想起することを嫌うし、
悪化する恐れがある。」
と指摘した上で、
「子供に対しても見守りつつ、
要望があれば支援してあげるのがいい。」
と提言している。
MSN産経ニュース 2011年03月20日(日)22時10分
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2011(平成 23)年03月17日(木)
東京新聞
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【暮らし】
繰り返される震災の映像 子どもの心に影響も
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2011031702000044.html
テレビから繰り返し流される津波や原発事故の映像。
重要な情報だが、大人が漫然と見続けると、
一緒にいる子どもの心に深刻な影響を与えかねない。
(生活部震災取材班)
「ジョージ(アニメ『おさるのジョージ』の主人公)
がいい!」
地震発生から数日後の真夜中。
埼玉県三郷市の主婦(36)は、
自宅で就寝中の長男(2つ)が突然、
大声で泣きだしたことに驚いた。
主婦は地震発生時から、テレビのニュース番組を見続けていた。
長男はアニメのDVDを見たがったが、
自宅が河川に挟まれた地域にあり、余震の影響が心配だった。
思えば、主婦がテレビを見ているとき、
長男は画面に背を向け、頭や顔を手で覆って、
主婦にまとわり付くようになっていた。
真夜中の出来事で、主婦は
「心を痛めているんだ。」
と気づいた。
ただ、いざというとき、2人の子どもを連れて逃げるのは自分。
「ニュースを見ないではいられない。」
と悩む。
●
地震が起きたとき、東京都港区の主婦(34)は、
次男(5つ)と幼稚園から帰宅する途中だった。
トイレを借りようと入ったコンビニは混乱し、
落ち着いて用を足せなかった。
その後、次男はテレビで地震のニュースを見るたびに
トイレに行きたがる。外出前などは、普段より頻繁に
トイレに駆け込むようになった。
主婦は
「かわいそうなのでアニメ映画のDVDを見せているが、
揺れると気になって、
ニュース番組にチャンネルを戻してしまう。」
と話す。
東京都内の男性会社員(43)の長男(8つ)には、
地震発生2日後から、指しゃぶりや母親にまとわりつく姿が
見られた。抱きしめると落ち着いたという。
●
子どもの心に何が起きているのか。
兵庫県立大看護学部長の片田範子さん(小児看護学)は
「現地の映像と自分が体験する余震、親の表情、
家庭内の話題などの情報を自分なりに統合し、
自分の身にも何かが起こるのではないかと不安に襲われる。」
と説明する。
言語聴覚士で、早稲田大客員教授の
湯汲英史さん(発達心理学)も
「子ども自身が揺れを体験しているので、
テレビの向こう側の出来事と思えない。
被災地との距離が分からず、すぐ近くで起こっていると
感じる子もいる。」
と指摘する。
不安やストレスのサインが現れやすいのは、
(1)睡眠(2)食欲(3)表情。
年齢別では、乳児の場合、
▽夜泣き
▽寝付きが悪い
▽少しの音で驚く、泣く
▽表情が乏しくなる
−などが起こる。
幼児以上は、
▽赤ちゃん返り(指しゃぶり、おねしょ)
▽食欲低下
▽落ち着きがない
▽無表情
▽チック
▽自傷(爪かみ、髪を抜く)
▽震災ごっこ
▽暴力的な遊び
−など。
●
では、どう対処すればいいのか。
子どもが幼い場合について、片田さんは
「テレビの視聴は控え、ごく普通に生活することで
『大丈夫だよ。』と伝えてあげて。」
と話す。
不安から親のそばを離れない場合はたくさん抱き締めることだ。
湯汲さんも
「毎日同じ環境で過ごすことが、
子どもの情緒の安定や脳の成長に必要。」
とし、必要な情報の入手については
「子どもが寝た後にテレビを見るなど工夫を。」
と提案する。
小学生になると、地震や津波、原発の爆発などに
疑問を持っていることも多い。
片田さんは
「親は説明を避けがちだが、
事実を事実として教えることも必要。
疑問に丁寧に答え、一緒にメカニズムを調べることで
不安を受け止めてあげてほしい。」
と助言する。
東京新聞 2011年03月17日(木)